彼女との距離
「あっ!?」
「どっ、どうしたの? もう着いた?」
隣で寝ていた先生が、私の驚いた声で起きてしまった。
「いえっ、何でもないです。着いたら起こすので、まだゆっくりしていて下さい」
「あっ、そう」
すると先生は、数秒後には再び眠りについていた。
「ふぅ――」
私は大きく息を吐いたあと、もう1度先程の写真を見てみた。
すると、そこには槇村先生ではなく、私が大好きな笑顔の彼女が写っていた。彼女に黙って写真を撮っているのを見つかり、彼女の手で全て消されたはずのものだった。でも、どうやら1枚だけは消し損ねたらしい。しかも、私が1番気に入っている彼女の笑顔の写真――。
それから新幹線の終点駅である東京駅に18時43分に到着した。そこから電車を乗り継いで降車駅に到着すると、時刻は19時を回っていた。
「上城くん、どこかで夕食を食べて行かない?」
「すっ、すいません。帰ってからすることがあるので」
「そうなの?」
「はい」
「残念ね。お酒でも飲みながら夕食でもと思ったのに」
「すいません。また今度誘って下さい」
そうだと思ったのでお断りした。
「じゃあ、私は1人寂しくお酒でも飲みながら焼鳥でもつつこうかしら?」
「尾崎さんでも、お呼びしましょうか?」
「そうね。もし来れそうなら〝鶏まさ〟で飲んでいるって言っといて」
「了解しました」
「それと〝笑顔のかわいい彼女〟にヨロシクね!」
笑顔のかわいい彼女?
何のことだろう?
まさかっ!?
「もしかして、スマホの写真を見たんですか?」
「だって上城くん、新幹線の中でずっと同じ写真を見ているんだもん。気になるじゃないの。ゴメンなさいね!」
先生のニヤついた表情から、冷やかされているのはわかった。
「全然問題ないです」
駅で先生と別れて直ぐに尾崎さんに電話をした。そして焼き鳥を専門にしている居酒屋の〝鶏まさ〟で先生が待っていることを伝えた。
『先輩は行かないんですか?』
『私は用事があるので』
『先輩、ズルくないですか? いつも私ばっかりで。先輩が行かないなら私も行きませんから!』
『そんなこと言わずに、お願いします』
『嫌です。それより、これから私とどこか遊びに行きませんか?』
『何を言ってるんですか? どうして私が尾崎さんと?』
『〝どうして?〟って――。先輩って結構残酷ですよね』
『何のことですか?』
『先輩、私――』
『何ですか?』
『なっ、何でもありません! 行きますよ! 行けばいいんでしょ!』
尾崎さんの声は、どことなく怒っているように感じられた。前々からそうだった。尾崎さんは訳のわからないことで突然腹を立てることがあった。ふてくされたり、口を利いてもらえなかったり、避けられたり、わざと大きな物音をたてられたり、私には理解できない行動をとっていた。多分、私が彼女の勘に障るようなことを言ったのが原因だと思うのだが、ハッキリしたことはわからない。
『よろしっ――』
プ――プ――プ――
話の途中なのに電話を切られてしまった。どうやら私は、また余計なことを言って尾崎さんを怒らせてしまったらしい。




