意図は動く、その裏で
あたたかくて黒い場所。苦しくも辛くもなく、怖くも恐ろしくもなく、私は安心しきって揺蕩う。目を閉じていても、なんとなく自分が浮上していくのが分かった。誰かが一緒にいてくれている気がして、心はありがとう、と呟いている。
なんだろう、この感覚は。
なんだろう、この感覚は――――――、段々不安が生まれてくる、これは。
微温湯に浸かってなんていられないのだ。一刻も早く、自分を強くして、彼を探さなければいけないのに。早く権力を手に入れて、他国で彼を探しきれるだけの力を、情報を、方法を、手に入れなければいけないのに。
私は、剣士なのに。
似たような優しさで騙さないで。見透かして甘やかさないで。
頼らせないで。頼りたくない。誰にも頼りたくない。特にあなたには、
絶対に、頼らない。
「―――眠いぃ・・・ペンネパンチョコシート練り一時間放置バージョンが食べたい・・・」
「起床直後から何言ってんだお前」
「・・・おとーさん帰って来てたの・・・?・・・ん、ちが、う?」
思いっきりボケていた頭が徐々に醒めていく。白い天井・・・ではなく何故かしら見覚えのある木の板が視界に入って、私は「ん?」と思わず声を上げる。
さっき、聞こえた、・・・声は、
思いっきり右に首を振ると、予想通りの人物が呆れ顔をして机に向かっていた。
「ラっ」
思わず飛び起き、その拍子にガンッ、と頭をぶつける。
「った!」
「あーあーあー、お前な・・・。まあ目ぇ醒めたろ」
ペンを置いて、こちらに顔を上げる。
「なん・・・なん、私なんで」
まず第一に、多分ここはラルヴァスの部屋だ。思い切りベニヤで区切った右っ側。そして、私は今結構柔らかいベッドの上に起き上がっている。毛布が膝に落ちて、ちゃんと上下制服のままなのは確認できた。できたけど。
「いやなんでも何も、玄関で寝落ちてんだよお前。流石に放置は悪いし、勝手に部屋に入る訳にもいかねぇし、結果そこにつっこんだ。洗濯出したやつ帰ってきて敷いたばっかだから汚くはねーはずだけど」
「・・・・・・それは、ごめん」
そう言われて思い出した。私、昨日の記憶が玄関で止まっている。
「握力強くて手ぇ掴んだまま寝やがって、おかげでこっちはまずそれを引き剥がすのに苦労したわ。とにかく、神とお前の親とスベジク騎士と騎士長とベッカーとリクスに誓って何もして無ぇからそこは安心しろ」
「・・・流石にそこまでは思ってないよ。そんなことしてたらラルヴァス、挽肉だよ」
「ひきにっ・・・、あ、そう・・・覚えとくわ・・・・・・」
「でも、玄関で寝た私も悪いから。今度なんか奢るわ、千リル以内で」
「お、マジか。ちょうどよさげな定食屋見つけたから誘おうと思ってたんだけど、今度よろしく」
「了解。・・・あれ?その袋、」
私はベッドから降りようとして、机に小さな紙袋が置いてあることに気付いた。良く見慣れたシンプルなパッケージには、良く見慣れたロゴが書かれている。
「んあ?ああ、食堂の朝食タイム過ぎてから起きちまって、開いてるの知ってたから買って来たんだ。そういや入ったこと無かったけど、あれってセイラの実家か?」
「うん、そうなるね。・・・! っそれ!」
私は思わず机に噛り付いた。そこには、ラルヴァスが取り出した、「ペンネパンチョコシート練り」・・・商品名「ペンネパン―チョコ―」がある。
「それ!買って来た時いつ!?」
「え、一時間くらい前で、丁度出来立てだって・・・」
「ペンネパンチョコシート練り一時間放置バージョンだ!!」
「・・・・・・あ、そう」
ほかにもいくつかパンがあったが、私の視線はそこにしか行き着かない。
「なんか店主っぽい女の人が、これも買って行きなさいって。よく分からないまま買ったけど、これってセイラの好物か?」
「好物も何も大好物!・・・・・・でもなんで?」
ペンネさんはラルヴァスのことを知らない筈だ。何せ私、未だ気まずくて一回も実家に帰っていない。お父さんあたりが話をしたりしているのだろうか。私と同い年くらいの修剣士で庶民感溢れているのは、ラルヴァスくらいしかいないし。ベッカーは貴族ってオーラが元々凄いし、リクスはそうでもないけど私服は上物だから分かる。ラルヴァスはその辺に出回ってる、私にも見慣れた服装だ。
どっちにしろ私繋がりと見抜いて言ったのなら、ペンネさん、恐るべし。
「さぁなぁ・・・。な、パンのラインナップ知ってるなら、解説してくれよ」
「お、言ったな?詳しいよ」
「だろうな。手短に頼む」
私は得意げに、ひとつひとつ解説しながら食べていく。
時刻は午前十時半。慌ただしい前日のことなど、すっかり忘れた休息日が始まった。
「―――予想以上に、凄腕なんだな」
「・・・?なんだそれ」
カイが書類から顔を上げると、コーヒーカップを二つ手に持ったセナが目の前に立っていた。
アルギシア王国の軍事トップである、現王の弟カイ・アルギシア第三皇子。その執務室に入ることのできる人間はあまり多くないが、息子は当然その中に入る。
カイの息子、長男のセナ・アルギシア第一王子は、父のテーブルに淹れたてのコーヒーをとんと置いて、自分は勝手に飲み始める。無論、執務室にはほかに人間がいないので、カイがそれを咎めることは無い。
「昨日起きた誘拐事件の報告書だ。あまり大きな話にはならなかったが、耳に入るくらいはしてるだろ?」
「ああ、アルフェドーラの令嬢の」
噂には、当然なった。しかし、夜とはいえその日のうちに解決したアルフェリア城の軍部の功績になっただけで、大騒ぎというほどにはならなかった。
「それで?予想以上に凄腕っていうのは?」
「お前・・・は、騎士館の練習場の方に顔出してるから知らないのか。騎士長の執務室で会ったこと無いか?セイラ・セル修剣士」
「セイラ・・・、セル、修剣士」
セナは視線を上に向け、首を傾げる。王子として、剣の修練は良く行っているが、それの殆どを騎士達の訓練場を借りて、そして騎士の訓練に混じって行っているため、教官騎士とともに練習する場が別に設けられている見習い剣士に会うことは無い。見習い剣士はだいたい”ナントカカントカ修剣士”と呼ばれるが、その名の把握もまだ出来ていない。
「聞いたことない・・・、けどさ。それって名前からして女、だよな?しかも”セル”って・・・、もしかしてオーヴァ司令官の?」
「ああ。オーヴァの娘だな。今年入った見習いなんだが、数か月にして功績を立てまくってる」
カイは呆れるように言った。まるでどこかの誰かさんたちみたいだ、と。
セイラ・セル及び、その同僚3人が立てた功績は、エネトル家夜会の襲撃を退けたもの、ルナ・アルギシア第一王女とルイ・アルギシア第二王子の毒殺を回避させたこと、カナリア・アルフェドーラを南の海賊フォーマルハウトから救ったこと。また他に、城下外れにある孤児院の職員が行った汚職の摘発も報告されている。そしてその裏側に、組織の調査の前進――――――。
「俺がちょっと仕事回したヤツもあるが、まあ色々やるもんだ」
「流石オーヴァ司令官の娘、って感じなのか」
「・・・・・・」
カイが怪訝そうな顔をしたのを、セナは見過ごさない。
「何か違う、か?」
「・・・セナ。親が強ければ子供も強い、そんな法則が成り立つと思うか?」
書類から顔を上げて、真剣な黒い瞳が、小さく青く輝く。それと全く同じ瞳で視線を受けたセナは、短い沈黙の後、口を開いた。
「必ずしもは成り立たない。けど、そうなる可能性は高いと思う」
「それでも、オーヴァとフィルの強さはもう別次元だ。あいつら剣だけじゃないしな。二人揃えば最強、そんなもん過言どころの話じゃない。・・・そのふたりですら、見習いの時は大人しくしてたものだが」
カイはさらに眉を潜めながら、空を睨む。
「オーヴァは何も言ってなかったが、セイラ修剣士、何かを焦ってないか・・・?・・・使える人間がいることに越したことはないが、また厄介なもんが・・・」
人を厄介呼ばわりとは失礼な物言いだが、実際人の采配を行うのはカイだ。セナは何も言わず、父親が頭を悩ませる理由を探る。
セイラ・セル。女剣士にして、オーヴァ司令官の娘。短期間で功績を乱立する程のやり手。それが手駒にあったとしたら、どうなるか、だろう。厄介となる理由、それは・・・、
「言うことを聞かない?」
「・・・ま、端的に言えばそういうことだ。昔のオーヴァとフィルだな。あいつらはもう面倒くさかったから、とんでもない階級をさっさと与えてやったけどな。ユージュとの国交再開の立役者になる程おっかない奴らだし」
はぁ、とため息ひとつ、カイは机に書類を置いた。周りにはすでに片づけ終わり、各方面に渡すだけの書類がてんこ盛りになっている。そのひと山に戻すと、今度はセナに顔を向けた。
「この間ハル兄・・・じゃなかった、陛下と兄上とルセミアとで話し合ったんだが。お前たちは、どういう立ち位置に立つべきか、そういう話をしているか?」
その言葉の内容に、セナは持っていたカップをテーブルに戻した。
お前たち、というのはつまり、セナと、ルナ、ルイの双子姉弟の3人のことだ。そして立ち位置というのは、国王のハル、第二皇子のレオ、第三皇子のカイ、そして第一皇女のルセミアの四兄弟がそれぞれ持っている役職のことを指す。国王は国の政治を、第二皇子は国交を、第三皇子は軍事を。本来ならば役職のないはずの第一皇女は、女性の社会進出や教育など、その他の様々を担っている。
それを次に担うのは、セナ達だ。
「・・・父さん、前に言ったよな。年功序列は関係ない、って」
「ああ、勿論だ」
「俺たちの中で、一番政治方面に強いのはルイだ。頭も回るし、知識量も多い。ルナは人付き合いが上手というか、どっちかって言うと人を手玉にとるのが巧い。俺は2人より誇れるのは剣と武力関係かなと。そういう結論が三人の中で出てる。王に立てるならルイだ」
「・・・成程」
頷いて、カイは言葉を続ける。
「言い得ている。三人とも、偏ってばかりでもないが、得意不得意がちゃんと分散してるんだよな・・・、こりゃあれだよな、アルギシア王家の血だよな」
カイの兄弟もまた、得意不得意がかなりに分かれる。
長男ハルは食えない男で、物事を進めることにかけて右に出るものはいない。なにより人が動く人柄をして、なるべくして王になった人間だ。一方次男のレオは軽いお調子者な雰囲気だが、気づいたら情報をぽろぽろ吐き出させられていたりする、相手にしたくない人間。思考が柔軟なこともあって、文化や習慣の違う他国相手に強い。
三男のカイは、まあ言っちゃなんだがあまり頭は強くない。が、剣においては他兄弟に負けたことは無かった。無論武力に秀でているだけではどうしようもないので、補うのにかなりの努力を要したが。
そして、アルギシアでは女性の立場と言うものがあまり高くない、女は一歩引くべきだという根付く思考を思いっきりひっくり返したのが、長女で末の妹のルセミアだ。元々まあまあ活発だったが、フィル・セルという女性剣士に触発されたらしく、派手に一発やりだした。女性の見解から、様々な切り口で改革を起こしだしている。
先頭に立ち引っ張っているのはこの四人だが、さらに言えばカイの伴侶、シトロワ第三皇子妃も数えることができるかもしれない。アルフェリア城で右に出るものはいない治療士、薬剤師だ。そちらの研究方面を指揮していると言っても過言ではない。主にアルフェリア城内だけだが、アルフェリアで技術が進み、それに続いているのがアルヴァ―リア城の研究なのだから、全部を指揮しているとも言えるから、だ。
人によって頂点に立つ仕事を分配するのがアルギシア王家だ。
「ならやっぱり、セナは俺の後釜だな。うん、こちらの意見も相違ない。その方向で進めよう。・・・というわけでセナ、今後のアルギシア軍部の爆弾はもう、分かるな?」
「セイラ・セル修剣士。しかも現在、何が火を着けるかもわからない」
間髪入れずに答えたセナに、カイは頷いた。
「ああ。それを制御するのはお前だ、セナ。まだ権限の継承は先の話だが、軍部にいる人間をよく見ておけよ。見習いの方に足を延ばしてもいい。人に会って性格を見極める、その力を鍛えるんだ」
「はい」
迷いない返事に、カイは笑う。
「セイラ・セルはお前と同い年だが、侮るな。知識量や力量のことじゃないぞ、意志の固さだ」
「―――意志の、固さ」
「セル家を手玉に取ることはまず諦めろ」
「ええ・・・」
一気に不安げな顔になるセナ。けれどもその中に楽し気な瞳が見えて、カイは内心また笑う。
アルギシア王家の血は、なかなか愉快で食えないものだ、と。
「だから、戦っていうのはだいたいご飯が無いから起きるのよ。ご飯が無いから豊かな農地を求めて領地略奪を謀る、だから戦が起きるの。大陸戦争でどの国も立ち上がれなくなったころ、ようやく技術の推進ってものが功を奏し出したわ。上手い農地の作り方を知っている人間がどんどん地位をのし上げて行って・・・。当然だわ、ご飯食べられる方法を持ってるんだもの。人は戦よりも飯を作ることに躍起になったわ。そうしてだんだん国の形が戻ってきて、まぁーた戦が出来るほどの国力を取り戻すところが出てきたのが現在の話。アルギシアは、大陸戦争真っ只中で、ユージェニック・クイントス王国に仕えていた兵士たちがたまたま見つけた土地なんだけど・・・、如何せんそれがまた密偵というか、諜報というか、裏側で活躍する人間だったのよ。賢い彼らはその土地を秘匿して、国を作り上げたわ。それが千年前の話」
「造船の技術は近代になって発達したとは知ってるけど、大陸戦争時にも船はあったんだよね?よく見つからなかったね、アルギシア」
「船って言っても漁をするための漁船で、航海をするための船なんて要らなかったのよ。敵は大陸上にみーんないるんだから。だから技術も上手く進歩しなかったし、新たな土地を求めて無謀な挑戦をしたところもあったけれど、だいたいは海の上でどうなったか、言わなくても分かるわよね、ルイ」
「・・・なるほどね。ということはそのユージュの密偵たちは、偶然?」
「もちろん偶然。今でこそ日が昇りきるころなら日が落ちるまでに着くけれど、当時は帆船どころか手漕ぎ船でしょう・・・?よく食糧尽きなかったと思うわ。特に辿り着いた島は無人島よ?国を興したってことはつまり子孫を残したってことで、子孫を残したってことはその密偵やら諜報やらに女の人もいたわけでしょ」
「ふぅーん・・・。で、ルナ、そう長々とアルギシアの歴史を話して、その先は?」
「その先?もちろん、歴史の中で輝かしく活躍した密偵の女性の話がしたいの」
「だろうね・・・」
それは、中の良い双子兄妹の話にしては、なかなかに可笑しい話題だった。
アルギシア王家、第一王女ルナと第二王子ルイは、手元に紅茶と少しの菓子を用意して、ふたりに用意された執務室で思いっきり寛いでいた。寛いでいる時に話す内容かどうかはともかく、賢才に生まれたらしいふたりは何食わぬ顔で答える。
「というかさ、その辺の話はかいつまんで読んだよ?アルギシアの歴史くらいは把握しとかないと困るし。今や学校でも習う話だよ、貴族じゃなくったって知ってる」
「あら、ここまで詳しくは習わないわよ。ルイだって尋ねたじゃない。細かいあたりは歴史書では全く分からないわ。何冊か照らし合わせて資料を確認して、さらに先生に聞いて、把握したの。特に大陸戦争は大陸では大きく関わるところだし、レオ叔父様もよく把握しておくようにと仰ったもの。アルギシアの産業物は独自発達が多いから、外国相手によく売れるのよ。だからこそ選抜は重要だし、その中には技術とか形にならないものも入ってくるから、って」
「・・・さっすが、次期国交担当」
「それを言わせたらあなたはどうなの、次期国王サマ」
「・・・やっぱそうなるかな」
「言ってたじゃない、セナお兄様も。この王家に意味を成さない年功序列は存在しない。能力に見合ったものをとりたてるのが最善であって、武を王にするのは平和主義のアルギシアではあるべきではないって。決してセナお兄様を踏みにじる選択ではないと思うの。たとえ周りがそう思っても、私たちに亀裂が入ることはまずないわ。私、セナお兄様大好きよ。ルイだってそうでしょう?」
「・・・まあねぇ」
言葉を濁したのは、ルイがセナを好んでいないからではない。第一王子であり兄であるセナをこの双子姉弟が慕っているのは誰の目から見ても明らかだった。寧ろ慕う兄を越して王座に就く、その可能性が出て来たことに、ルイは引け目を感じているのだった。
「セナお兄様、ここのところ剣術が本当にお上手になってるのよ。元々上手なのはもちろんだけれど」
「・・・ねぇ、そういえばルナ、またセリアさんに会いたいとか言ってなかったっけ」
「ああ、そうなの。そうなんだけれど・・・」
セリアは、話によるとフェルドカーティ家の傍家も傍家の令嬢だという。傍家というのは、傍系にある家のことで、「そばや」ではなく「ぼうけ」と呼ぶ、アルギシアでよくある言い方だ。と、そのセリアは、女性で令嬢ながらにして剣の才があるのだという。一度ルナとルイも顔を合わせたことがあるが、ルイの方は特に良い印象は無かった。気に食わなかったという意味ではなく、一言でいえばおっかない、恐ろしい印象を受けたからだ。
それでもルナは彼女を気に入っているという。
「誕生会の時はベッカーお兄様の一声でお呼び出来たのだけれど、あまり社交の場に顔を出されない方で、他に伝手が無いのよ。誰も知らないと言うし、お父様にお願いしてもいい返事がないわ」
「そのベッカー兄さんは?」
「お仕事がお忙しいみたいだし、声が掛けられないわ。リクセンディア様も同じく」
「・・・他には無いか。僕たちの伝手じゃ厳しいね」
「そう・・・。でも私、そろそろセリアさんではなく、もうひとりのお方に会いたいと思っているの」
「ああ、今年見習い剣士で入ったっていう女性剣士?」
「そうよ!なんでも、オーヴァ修剣士の娘さんで、セナお兄様と同い年なんですって。剣士としてお会いしたいのも勿論だけれど・・・、ねぇルイ」
「だいたい察するけどさルナ。セナ兄って、あんまり女性と関わろうとしないじゃん。ちょっと無理があると思うなぁ・・・」
「でも、ふたりとも剣という共通点があるわ。同い年だし、親は知り合い。いいと思わないかしら?」
「・・・」
また暴走の種が・・・という心の声が漏れそうになって、ルイは留める。
女とはどうしてこういう話題が好きなのか。ルイ達の母、シトロワもまた、よくこんな話をする。一方ではなんやらわけの分からない難しい話をするのに、これはこれ、あれはあれ、・・・なんだろうか。
「身分差くらいどーにでもなるとして、出会う理由がいるわよね・・・。そうだわ!セイラさんを、私の護衛に迎えるのはどう?そうしたらお兄様とも頻繁に会えるわ!」
「ルナ、流石に話を勝手に進めすぎ」
「そうと決まればお父様にお願いするほか無いわ!行くわよ、ルイ!」
「ちょっちょっ、ちょっと待ってルナ、待ってってば――――――」
王宮内で、そんな話が勃発しているとも知らず、
「ああ・・・至福。ペンネさん最高、お祖母ちゃん最高!」
「なんでパンにきなこが合うんだよ・・・信じらんねぇけど・・・美味ぇ・・・」
とうの本人は、稀に見る笑顔でパンを頬張っているのであった。




