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第18話 僕達の実力

 ゲームの世界にやってきた求司、マドリガル、安奈は、現地で出会ったブレッザにテレポートをかけてもらい、とある町の近くに降り立った。

 そこには一人で仲間を助けに行こうとしている男性がいた。

 彼は町の人から「無謀です!」、「やられに行くようなものです!」と言われながら、それでも制止を振り切ろうとしていた。

「あの人は…。もしかして…。」

 マドリガルがじっと目を凝らすと、そこにいたのはルウだった。

「ルウさん!」

 彼女が大声で声をかけると、彼がはっとして振り返った。

「えっ?その声は?」

「そうよ。あたしよ。」

「本当に?本当にマドリガルなのか?」

 彼の視線の先には、確かに本人がいた。

「君、戻ってきてくれたんだね。」

「ええ、そうよ。今までごめんなさい。さんざん迷惑をかけてしまって。」

 マドリガルは深々と頭を下げて謝ると、助っ人として来てくれた2人を紹介した。

「初めまして。求司です。この度、彼女の要請を受けて、仲間に加わることになりました。」

「蕨安奈こと、アンです。きっと役に立ってみせるから、よろしくね。」

 彼らは胸を張って自己紹介をした。

「僕はルウです。本当に来てくれるんですか?」

求司「はい。喜んで参加させていただきます。」

「相手は強敵です。危険ですよ。」

安奈「大丈夫。私達はそれ以上に強いから。」

 2人は丈二のおかげで攻略レベルを大きく上回る実力をつけてもらったため、自信満々だった。

「そういうわけよ。あたしも強くなったし、きっと役に立つわ。」

「分かった。彼らに加えてマドリガルもそこまで言うのなら、一緒に頑張ろう。」

 ルウは最初こそ戸惑っていたものの、3人の説得を受けて迷いを吹っ切り、一緒に乗り込んでいくことにした。

「それじゃ、ブレッザ。あんたは一足先に戻っていてくれる?」

「えっ?お姉ちゃん、どうして?」

「ここから先の敵は強いって聞いているから。」

「でも、僕…、役に立ちたいのに…。」

「大丈夫。もう十分役に立っているわ。だから心配しないで。」

「う、うん…。じゃあ、これを持っていって。」

 ブレッザは戸惑いながらもなんとか同意をすると、自身が持っていた煙玉をいくつか手渡してくれた。

「お姉ちゃん、気を付けてね。きっとみんなで無事に帰ってきてね。」

「ええ。きっと仲間達を助け出して、村に戻ってくるからね。」

「きっとだよ。約束だよ。」

「うん。分かったわ。」

 マドリガルとブレッザはお互いの手を差し出して指切りをした。

 そして彼はテレポートを使ってその場から移動をしていった。

「さあ、行こう。みんな。」

 ルウが声をかけると、他の3人は「オーーッ!」と言いながら気合を入れた。


 彼らが城に向かって歩いていくと、その途中には魔鬼王の手下である影忍者と黒騎士が番犬を連れて姿を現した。

「これは強そうだな。どうやって戦えばいいんだ。」

 ルウにとっては初対面の相手だけに、彼は戦い方に迷ってしまった。

 すると求司が影忍者との勝負を申し出た。

「本当に大丈夫なのか?」

「うん。僕はこの世界ではプロ野球選手なんだ。やってやる!」

 ルウの心配をよそに、求司は気合いを入れて答えた。

 戦闘になると影忍者は手裏剣を投げつけてきた。

(どうだ。近づけまい!)

 相手がニヤリとしたその瞬間、求司は持っていた金属バットで打ち返した。

「カキーーン!」

 手裏剣は斜め上に舞い上がり、ホームラン性の放物線を描いて地面に落ちた。

「な、何?お主、そんなことが出来るのか?」

「ああ。その程度の変化球を打ち返すくらい、わけないぞ!」

「お、おのれ!」

 あせった影忍者は、今度は拾った石をわしづかみにして投げつけてきたが、求司はバントをして一塁側に転がした。

 思わぬ展開に彼は焦り、慌てて短剣を取り出した。

 すると今度は求司が事前にマドリガルから手渡されていた煙玉を取り出し、相手に向かって投げつけた。

 それは見事に命中し、ダメージを与えると同時に相手の体は煙に包まれた。

「ゴホッ!ゴホッ!」

 影忍者はせき込みながら煙を抜け出し、何とか目を開けようとしたがそこには求司がおり、持っていたバットで短剣を弾き飛ばされてしまった。

「降参しろ。そうすればこれ以上の攻撃は加えない。」

「は、はい…。分かりました…。」

 まだ目がショボショボしている影忍者は、これ以上戦っても勝ち目はないと判断し、いさぎよく降伏した。

「すごーい!求司、やるじゃない!」

「いやあ、緊張したけれど、勝てて良かったよ。」

 マドリガルの満面の笑みに対し、求司も同じく満面の笑みで返した。


 次は安奈が番犬と勝負することになった。

 番犬といってもその姿はまるで猛獣のような姿であったため、手強い相手なのは明確だった。

 まともに戦えばかなりのダメージを受けると読んだ安奈は、戦闘開始になるとほうきにまたがって空中に舞い上がった。

 これでは相手の物理攻撃が届かないため、彼女はダメージを受けない状況になった。

(ここからどうやって攻撃をするんだ?)

 ルウが疑問に思っていると安奈は杖を取り出し、「くらえーーっ!」と叫びながらフレイマーの魔法を唱えた。

 番犬はある程度耐性を持っていたため、思ったほどのダメージにはならなかったが、それでも一方的に相手から攻撃されてしまったため、なす術がない状況になってしまった。

 結局様子を見ていた黒騎士がとうとうストップをかけたため、勝負は安奈の勝利となった。

「どう?私はこの世界では正真正銘の空を飛ぶ魔女なのよ!」

 安奈はぶっつけ本番の戦闘に勝利したことで、空を飛んだまま大喜びだった。

「アン!かっこいいっ!」

「お見事ーっ!」

 マドリガルと求司は拍手をしながら彼女をたたえた。


 3戦目はマドリガル対黒騎士だった。

 相手は回復や魔法こそ使わないものの、圧倒的なHPと攻撃力、そして守備力を誇るため、ルウが覚えているマドリガルでは分が悪そうな感じだった。

(彼女はしばらく離れていただけに、本当に大丈夫なのか?もしもの時は僕が助けるつもりだが…。)

 彼がハラハラしている中で、いよいよ勝負が始まった。

 するとマドリガルは即座に自分にシールドをかけ、その甲斐あって受けたダメージは大幅に軽減された。

(さあ、今まで戦力になれなかった分を取り返すわ!)

 彼女は次のターンで最強の単体攻撃魔法であるフレイメストを使い、一気に大ダメージを与えた。

(何だ!?以前の彼女とは大違いじゃないか!)

 ルウはあまりの彼女の変貌ぶりにただただ驚くしかなかった。

 その後もマドリガルは強力な魔法をぶっ放し、終始圧倒したまま黒騎士を降参させてしまった。

「すごーーい!大活躍じゃない!」

「おめでとう!これで胸を張れるね!」

「アン、求司。ありがとう。役に立ててうれしいわ。」

 そこには以前のみじめなマドリガルの面影はなく、まるで別人のように生まれ変わった姿があった。

「僕達から離れている間、一体何をしていたんだ?どうやったらそんなに強くなれるんだ?」

「そうねえ…。別の世界で修業をして強くなったってところかしらねえ…。」

(まあ、本当は丈二さんの配慮で大幅に強くしてもらったんだけれど、そんなことは言えるわけがないから、とりあえずこういう理由にしておくわ。)

 未だに驚きを隠せないルウに対し、彼女は少し照れながら言葉を使い分けていた。


 その後、4人は城の入口で門番として立ちはだかっていた複数の相手と戦闘になった。

 すると求司は強肩ぶりを発揮して煙玉や石ころを投げつけ、マドリガルはシールドをはって相手の攻撃を防いだ。

 安奈は再度ほうきで空を飛び、タイミングを見計らってフレイマーやハイボム、ルウは3回攻撃や攻撃力1.5倍の強化手段で戦った。

 相手はかなり強いため、多少時間はかかったものの、それでも4人は無事に戦闘に勝利した。

(この3人、バンビーノやアリア達よりも強いんじゃないのか?これならものすごい戦力になるな。)

 ルウは接近戦でしか戦えないこともあって一番ダメージを受けてしまったため、他の3人の姿がまぶしくてたまらなかった。

 そして入口の扉をマドリガルのハイパーボムでこじ開けると、安奈は空を飛んだまま、他の3人は走って内部に入っていった。


 城内は敵が強い上に侵入者対策のせいか、迷路のような構造になっており、しかも落とし穴やワナの宝箱が仕掛けられていた。

 しかもゲーム内ではその情報がわずかしか聞けないため、初見ではクリアが難しいところだった。

 だが、すでにプレイ経験のある求司は正解ルートやギミックを覚えていたため、道案内は彼が担当することになった。

「ここは右に曲がって。」

「この通路の左側には落とし穴があるはずだ。」

「これはワナの宝箱だ。開けちゃダメだよ。」

 彼は持っている知識を総動員しながら4人で進んでいった。

 その途中では最強クラスの敵と遭遇したため、求司は相手の飛び道具をピッチャー返しという形で打ち返してダメージを与え、さらに彼は相手をうまく落とし穴に誘導して、あっさりと終了させた。

 次の戦闘では男女混合編成の敵と戦うことになったが、マドリガルはハイパーボム、安奈はハイボムを使用した。

「半端ないって!この全体攻撃半端ないって!」

「無耐性だと一気に200近いダメージ受けるんだもん!」

「私達、そんな攻撃耐えられないわ!」

 彼らは泣き言を言いながら退散をしていった。

 それからしばらく進むと今度は安奈と同じくほうきにまたがって空を飛ぶ女性に出くわし、2人はお互いの攻撃をかわしながら空中戦を繰り広げた。

 するとマドリガルはその隙を狙ってスティールの魔法を唱え、相手のMPを奪い取った。

 その結果、女性は空を飛べなくなり、床に降りてしまったため、降参を宣言した。

ルウ「仲間はどこだ?教えてくれ。」

「それは出来ない。私の首が飛んでしまう。」

求司「そうか。口封じされているのか。」

「その通り。魔鬼王様には逆らえないから。」

マドリガル「へえ。あんたも苦労しているようね。」

「そう。家族の生活がかかっているから。」

安奈「それなら、もっといい仕事に就いたら?」

「簡単に就けるのなら苦労はない。その方法があるのであれば教えてほしい。」

 彼女はそう言うと、自分がこれまで経験してきたことを正直に話した。

 女性の名前はエレンで、長い間貧しさの中で生活しており、しかも病気の親を養わないといけないため、働いても働いてもワーキングプアの状態だった。

 そうしているうちに肉体的にも精神的にも疲れ切ってしまい、生きることさえも嫌になってしまった時、彼女の前に現れたのは魔鬼王だった。

 そして彼に生活費を支援してもらい、両親を治療してもらえることになった。

 しかし両親の病気は決して完治したわけではないため、治療を継続しなければならず、もし魔鬼王に逆らえば即座に治療を打ち切られてしまうため、嫌でも従うしかなかった。

 その状況は失業や失恋を経験した求司や、ある日突然バンドを追い出された安奈、そして仲間外れにされて失踪までしたマドリガルよりもつらいものだっただけに、4人はエレンを放っておけなくなった。

 そしてルウは両親を連れて、自分の故郷であるビダの町に住むことを提案した。

「本当にいいのか?」

「はい。あなたは決して悪い人ではないですから、きっとやり直せると思います。」

「…かたじけない…。心から礼を言わせてもらう…。」

 エレンはうつむきながらルウに感謝をした。

 するとその時、通路の向こう側から足音が聞こえてきた。

(ん?一体誰なんだ?)

(黒い服を着ているようね。)

(魔鬼王の追手なのか!?)

(刺客を差し向けたの?)

 ルウ、マドリガル、求司、安奈は思わずはっとして身構え、エレンはとっさに顔を隠してかがみこんだ。

 一方、相手も誰かに出くわしてしまったこともあって、立ち止まり、その場を逃げ出そうとした。

 するとその時顔が見えたこともあって、ルウは驚きながら思わず「アリア?」と声をかけた。

「えっ?もしや!?」

 その声、そしてその顔は確かにアリアだった。

「君、確か捕まっていたはずじゃ?」

「私はこう見えてもくノ一だ。甘く見てもらっては困る。」

 彼女は捕まった後、武器やお金を没収された上で牢屋に入れられてしまったが、隠し持っていたアイテムを駆使して火をおこし、意図的にボヤ騒ぎを起こした。

 そして敵が慌てて様子を見に来ると牢屋越しに弱点攻撃をヒットさせて気絶させ、カギを奪って逃走したところだった。

「そうか。無事でよかった。心配だったから。」

 ルウは離れ離れになってしまった仲間に再会出来て、心の底からほっとした。

「だが、追手が必ず来るはずだ。早くここを離れなければ。とはいえ、ここは仕掛けがいくつもあるからな…。」

「その点は心配しないで。あたしがテレポートを使うから。」

 マドリガルが声をかけると、アリアは彼女がいつの間にか復帰しており、しかも他に仲間を連れていることに驚いていた。

「その者達とはどこで出会ったのだ?」

「詳しいことは後で話すわ。とにかく、今は早くここを離れましょう。」

「分かった。頼む。」

 アリアの要望を受けて、マドリガルは早速その場を後にしていった。


 その後。ルウ達はエレンの両親に出会い、彼らを連れて一旦ビダの町に向かっていった。


今回登場したエレン(Ellen)は、サプライズで登場させたものです。

詳しいことは秘密です。

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