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第17話 ゲームの世界へ

 ゲームはマドリガルがいないまま進んでいき、マドリガルの弟であるブレッザを含めた6人のキャラクター達は、いよいよこの世界にたくさんの刺客を放ち、混乱へと陥れた敵キャラである「魔鬼王(まきおう)」に勝負を挑みに行くことになった。

 これまでルウ達はマドリガルよりもさらにステータスの低いブレッザを我慢しながら起用していたが、さすがにここからは厳しいという理由で、一度マイザーの村に行くことを提案した。

「それって僕じゃ役に立てないというわけでしょうか?」

 ブレッザはこれまで何度か足を引っ張ってきたため、覚悟はしていたものの、それでも悔しさをあらわにした。

「すまない。でも、これも君のことを思っての決断なんだ。」

「これから挑む敵はかなりの強敵と聞いているしな。」

「それにお前はよ…。」

 ルウとアリアが配慮をする一方、バンビーノは本音を言いそうになって慌てて口を閉じた。

「じゃあ、僕はやっぱり…。ということは、お姉ちゃんもこのような理由で?」

 ブレッザはふと嫌な予感を感じ取り、みんなに問いかけた。

「そ、それは…。」

「えっと…。」

 カノンとカブキがあたふたとしていると、彼はその雰囲気で真相を感じ取った。

「分かりました。お姉ちゃんが同じ理由でそうなったのなら、僕もここを出ていくことにします。」

 ブレッザは手をわなわなと震わせながらパーティー離脱を決意した。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「私達はそんなことを言ったわけじゃ。」

「いいです。今までお世話になりました。」

 カブキとカノンをはじめ、5人は止めようとしたが、ブレッザはそれを振り切るように彼らから距離を取った。

 そしてテレポートを唱え、お礼もさよならも言わないまま離脱してしまった。

「仕方ねえ。これで気を使わなくて済んだと考えようぜ。」

「そんな言い方しなくたっていいじゃないか!」

「やはり心の中ではそう思っていたのか!」

 バンビーノの発言に対し、ルウとアリアは怒り心頭だった。

「す、すまねえ。でもよ…。」

「でもじゃありません!」

 カノンは以前こそマドリガルを役立たずと考えていたものの、それを反省して改心していたため、なおさらくってかかった。

 それを受けて、さすがのバンビーノも何も言えなくなってしまった。

 そして結局、これから5人で打倒魔鬼王に向けて動き出していくことになった。


 アジトに乗り込んでいくと、そこには呪いで操られた人間達が出現した。

 相手は敵意むき出しだったが、さすがに倒してしまうわけにはいかないため、アリアが彼らの持っている強力な武器を叩き落とすことにした。

 そしてルウとバンビーノが峰打ちやキックで攻撃をし、カブキが呪い解きのおまじないをして戦闘を終了させた。

 戦闘後はカノンが治療を施して傷を治した。

「すまない…。君達には迷惑をかけてしまった…。」

「大丈夫です。無事でよかったです。」

 彼は決して相手を責めることなく、優しくねぎらいの言葉をかけた。

 ルウ達はその後、何人もの人間達を改心させた後、徒歩で戻ろうとしたが、道中で魔鬼王の直属であるモンスターに出くわしてしまった。

 そんな中でルウ達はモンスターとの戦闘に挑んでいった。

 しかし、せっかく助けた人達を守りながらの戦いはいつも以上に厳しいものだった。

 まず、相手は全体的に守備力が高く、ルウとバンビーノの攻撃力をもってしてもすぐには決着をつけられなかった。

 さらに、カブキの特技も半分以下の確率でしか効かず、アリアが武器を叩き落とそうとしてもかわされてしまった。

(何だ?この敵、強過ぎるぞ。どうやったら勝てるんだ。)

(しかも相手は助けた人達もお構いなしで攻撃してきやがる。)

 ルウとバンビーノは段々動揺を隠せなくなってきた。

 それは他の3人も同じで、決定打がないだけにどうすればいいのか迷っていた。


 一方、現実世界の丈二は、画面越しに彼らの様子を見ていた。

(実はこの場面、マドリガルのテレポートでこの場所を脱出し、瞬時に彼らの家族のもとに戻る予定だったんだ。それにこの敵、実はマドリガルの魔法が弱点なんだ。もしここに彼女がいれば…。)

 彼はこの状態を打開するべく、何とか彼女に復帰をお願い出来ないものか考えた。

 しかし、このような状況を招いた原因は、自分がさんざんマドリガルを冷遇していたことだったため、彼女が自分の頼みを承諾してくれるとは考えにくかった。

 丈二が焦っていると、助け出された人達がモンスターの攻撃の巻き添えにあって気絶してしまった。

(まずい。まずいぞ。しかも彼らが人質になってしまった。一体どうすればいいんだ…。)

 丈二はその後も画面を見続けたが、とうとう耐えられなくなり、顔をそむけてしまった。

(こうなったら、あの手を使うしかない…。)

 覚悟を決めた彼はゲームの画面を閉じ、求司と安奈にメッセージを送ることにした。


 翌日。丈二の部屋には、野球のユニフォームを着ている求司と、ゲームの世界からやってきた時の服装をしているマドリガル、そしてハロウィンの仮装で魔女を演じた時の服を着ている安奈がやってきた。

 それに加えて、求司と安奈はそれぞれ金属バットとほうき、そしていくつかのアイテムを持っていた。

「みんな、協力してくれて本当にありがとう。」

 丈二は心の底から3人に感謝した。

「まあ、昨日の段階では僕自身、かなり迷ったけれどね。」

「あたしは何をいまさらとさえ思ったわ。」

 マドリガルはゲームの世界に行って、パーティーに復帰してほしいという要請を受けた時、一度は拒否する姿勢を見せていた。

 しかし、これまでよりもHPなどを始めとする全ステータスが大幅に強化され、しかもフレイメストとハイパーボム(立ち位置的にそれぞれメラゾーマとイオナズン)の魔法が使える状態になれるということを受けて、少しずつ気持ちに変化が見られるようになった。

 さらに求司と安奈はゲームの世界に行けば、相当高いレベルになれる上に現実世界でかなえられなかったことが現実になるということを受けて、3人はついに承諾をしてくれた。

「とにかく、私は魔女になってほうきで空を飛べるようになるから、何だか楽しみだわ。」

「僕も、一度プロ野球選手の体つきになってみたかったんだ。」

(あたしが元の世界に戻ったところで、どうなるのかしら。弟のブレッザやルウさんに会えたら、彼らは喜んでくれるかしら…。ましてバンビーノとカノンが再びあたしを冷たく扱ってきたら…。)

 安奈と求司はやる気をみなぎらせている一方、彼女は不安を隠せずにいた。

 しかし2人の表情を見て自分も気持ちを引き締めることにした。

「それじゃあ、ジョー。僕達をゲームの世界に送ってくれないか?」

「分かった。では、これを渡すよ。」

「これは何?」

「これを使えばもう一方の世界にテレポート出来るんだ。そして帰る時にもう一度使えばこの世界に戻って来られるよ。」

「どうもありがとう。」

 求司は早速宝玉のようなアイテムを受け取った。

「それじゃみんな。ゲームのロードが終了したら画面に手を当ててくれ。」

「OKよ、お兄ちゃん。」

 安奈は元気よく返事をすると、真っ先に再開後のゲームの画面に手を当てた。

 そして求司とマドリガルも続いて手を当てた。

「では、キュージ。そのアイテムを使ってくれないか?」

「分かった。」

 彼はそれを持った右手を高くかかげた。

 するとマドリガルのが使うテレポートの魔法同様の効果が発動し、宝玉が光り出した。

 そして3人の体はまばゆい光に包まれていった。

 その後、光がおさまると、彼らの姿は跡形もなくなっていた。

(頼んだぞ。きっとこの状況を変えてくれ。そしてマドリガル。直接言えないままだったけれど、今まで冷遇してきて本当にすまなかった。バンビーノ達に罪はない。恨むなら僕を恨んでくれ。)

 丈二はこれまでの自分の行いを反省し、心の中で謝罪をした。

 そしてその後は画面を見ながら彼らの活躍を見守ることにした。


 3人がやってきた場所はマイザーの村だった。

「ここにやってきたのね。何だか懐かしい場所だわ。」

 マドリガルにとっては自身の故郷だけに彼女は思わずその景色に見とれてしまった。

 すると、一人の少年が彼らに気づき、「誰!?君達は」と言いながらこちらに歩み寄ってきた。

「えっ?あの、僕達は…。」

「怪しい者じゃないわよ。」

 求司と安奈があたふたとしていると、マドリガル「待って!」と言いながら彼らの前に立ちはだかった。

「えっ?もしかして?」

「そうよ、ブレッザ。あたしよ。マドリガルよ。」

「お姉ちゃん?」

「ええ、そうよ。」

「本当に?本当にお姉ちゃんだよね。」

「本当よ。会えて良かったわ。」

「お姉ちゃん…。お姉ちゃーーん!」

 ブレッザは涙ぐみそうになりながらマドリガルのところにやって来ると、姉の胸元に飛び込んでいった。

「ごめんね。長い間、一人にさせてしまって。」

「そんなのはいいよ。ずっと会いたかったよ。」

「あたしもよ。ブレッザ。」

 2人は心の底から再会を喜び合っていた。


 気持ちが落ち着いた後、マドリガルは弟に求司と安奈を紹介した。

「初めまして。野星求司です。」

「蕨安奈よ。アンって呼んでね。」

「僕はブレッザと言います。お姉ちゃんがお世話になりました。」

 3人は自己紹介をした後、深々とお辞儀をした。

 そして彼らは村の中に入っていき、村人達に会うことにした。

「マドリガル!お帰りなさい。」

「よく無事で帰ってきたわね。」

「彼女を連れてきてくれてありがとう。」

 村人達はマドリガルを連れてきてくれたことを受けて、求司と安奈を喜んで受け入れてくれた。

 そしておいしいものをごちそうしてもらった。

 その後、彼らは丈二から事前に聞いたルウ達がどのような状況になっているのかを説明し、彼らを助けに行こうとしていることを伝えた。

「お姉ちゃん。それじゃあのお兄ちゃん達、そんな目にあっているの?」

「そうよ。話によればルウさんはみんなのおかげで何とか窮地を脱することが出来たけれど、仲間達や一度は助け出された人達が捕まってしまったの。」

「それじゃ、お姉ちゃん達は魔鬼王のところに行って、戦いを挑みに行くの?」

「ええ。彼らを助けに行くわ。」 

「でも、魔鬼王って相当強いんじゃ。」

「大丈夫。求司とアンは強いし、あたしも修行のおかげで強くなれたわ。だから、心配しないで。」

 マドリガルは笑顔で弟を励ました。

(※実際は丈二にステータスを強化してもらいましたが…。)

求司「それで、君のテレポートで僕達を送ってほしいんだ。」

安奈「お願いしてもいい?マドリガルはまだその場所に行ったことが無いから。」

「分かりました。お姉ちゃんがお世話になった人ですし、喜んで引き受けます。」

 ブレッザは彼らの要望を喜んで受け入れてくれた。

「それじゃ、早速お願いするわ。」

「分かったよ。お姉ちゃん。」

 こうして4人は助太刀のためにルウ達のところに向かっていくことになった。

(みんな。あたしが失踪したせいで、迷惑をかけてごめんね。一時はもう会いたくないとまで思ったけれど、やっぱり放ってはおけないわ。きっと助けてあげるから、待っていてね。)

 マドリガルにはもはや以前のような弱さは無く、その表情には強い意志がみなぎっていた。


 名前の由来

 魔鬼王 … ゲーム「忍者龍剣伝」の邪鬼王と、映画「少林サッカー」のデビルチームの漢字表記である魔鬼隊を合わせたものです。


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