家探し!!!
2件目の物件も俺が受け入れることが出来ず、遂にサファイアが抜き出してくれた物件があと一件となってしまった。
それでも俺の喜びが衰えることはない!!
普通、こんな状況なら自分の希望通りのモノがないってことで意気消沈。もしくは、ヤケになっている場合が多いと思う。
けれど今の俺はその真逆。
だってさ、物件が決まらないってことは、まだ物件探しの旅は続くってことじゃん?つまり、サファイアとのデートが続けられるってことだよ。
まあ最後の物件でも俺のセンサーにヒットしなかったら、浴室ありのは仕方ないけど諦めて、風呂無しのを探すしかないけどさ。
それに、浴室を作るのにかかる費用が高いってことは後付けが出来るってことだし。
貰った給料で足りなければ俺が稼ぐしかないけどね。
そんなこんなで三つ目の物件に到着。
普通の一軒家を二つくっつけたぐらいの横幅。2階建てで、正面から見るだけでもたくさんの窓が嵌められており、いくつ部屋があるのだろうか。
裏はどうかなっと歩いてみると裏口と小さな物置小屋があった。
二人で住むには結構広い建物だけど、浴室あり物件の3分の2が既にお断りしているからここに決めようかね~。
でも・・・うん。外観の良いところだけを羅列してみたけどさ。なんか、もう、ね。
この家って、何か出ますよっていう空気がすごい出てるんだけど。
ここって日本じゃないよね。なんで柳が生えてんの?
そんな強く風吹いていないのに2階の窓がバッタンバッタン開いたり閉じたりしてるし。
1件目は庭がきれいに整えられていたのに、雑草におまかせ!って感じで子供ならジャングルにでも迷い込んだという体験ができると言えるほど伸びている。外壁もボロボロ崩れている箇所が多々あり、雑草が伸びすぎている所為か、壁に沿って伸びているものもある。
周りに建っているとイヤ~な建物(墓とか風俗店とか)は存在していない代わりと言っては変だけど、この物件から前後左右の隣家まで3メートルは離れているのは何で?
「・・・ここが最後の物件?」
「うん。資料によると、貴族の一員でお金持ち。メイドや執事をたくさん雇い、無理難題を言わない主人としては優良物件。けれど、主人を殺そうと複数の貴族がやってきて主人だけでなくメイドや執事も一緒に殺された。と記載されてる」
「主人が殺された動機は?」
俺の言葉にぺらぺらと資料をめくっているけど、どうやら書いていないらしく首を横に振っている。
ふむ・・・首を左右にふるふると振る姿ってかわいくね?っと、見続けるとサファイアに何か言われそうなのでこの辺で止めとこう。
「殺された理由は書いてないけど、その代わりに」と言いながら資料のある部分を指さしながら俺の方に向けた。サファイアの細くきれいな指が指している所には『地縛霊がいるので住む場合は、先にお祓いや魔法使いを雇って成仏させたほうがいいです』と書いてあった。
ま た か !!
迷宮ではスピリットモンスター。家探しでは地縛霊ときた。
つか、そんな物件売ってんじゃねえよ。お祓いできる人ってなんだよ。巫女さんでもいるの?
それに魔法使いでも問題ないって、魔法使いは何でも屋ってわけじゃねだろ。それとも実績ありなのか?
本当に幽霊だとしても俺にはノーダメージだろうし、いたら迷宮の時みたいに魔法武器で消滅させれば良いしな。あれ?でも短剣はリンクが持ってるし、俺が持っていても魔力がないから使えないじゃん。
まあ・・・そん時はそん時だ!!
「何か出てきそうだけど、最後の物件だし、一応中まで確認するとしますか」
そう言いながら入り口に向かって歩こうとすると、何かの力が働いた事で後ろに引っ張られた。
おや?と思いながら後ろを向くと、サファイアが俺のジャケットの端をちょこんと掴んでいた。かわいい!!
「ん、どうかしたの?サファイア?」
「えっと、今回は中まで見るの?」
「そうだね。1件目みたいに周囲に建って欲しくない建物があるわけでないし、2件目みたいに目的の物がありえない状態で存在しているわけでもないしね。確かに、外観はあれ?って思うけど、そこは何とかなりそうだしさ。外観が問題なければ中がどうなっているか確認しないと」
「で、でも。こんな見た目の建物なんだから、中だって同じようにボロボロだと思うよ。きっと見ても時間の無駄だと思うから止めとかない?」
1,2件目は俺が入るのを拒否したから中まで見てはいなかったけど、それに関して何も言わなかったサファイアが、この物件に関しては意見を述べている。
しかも、俺の服をつかんでいる手と声が震えており、目も若干潤んでいるような気が。
これらのことから導き出される答え。
つまり、サファイアは、この見るからに幽霊屋敷とばかりの物件に入るのを怖がっている!!
ん~そうか~。サファイアが怖いなら入り口で待っていてもらおうかな。いろんな表情を見たいけど、悲しい顔は見たくないし。
「それじゃあ、俺だけで見てくるからサファイアはここで待ってて」
名残惜しい。実に名残惜しいけどサファイアの指と掴まれてる服を離していく。
俺がサファイアの手を離さないと考えていたのか、驚いている表情?が見えた。そこまでしても家の中に入りたいのだと気づいたサファイアは俺から離れた手を握ったり開いたり唸ったりしながら俺をチラチラみたりしている。
考えがまとまったのか、「よしっ」と小さな声で呟いたと思ったら決意を込めた目をしながら俺に対してこう言った。
「わ、わたしも行きます!」
*******
幽霊屋敷もどきに入ることを決めたサファイアとともに扉を開けた。けれど、入ろうという気持ちが沸いたが、やはり怖いのか先程同様に後ろから服を掴みながら付いてきた。
そんなかわいらしいサファイアを見たいがために後ろを振り向きたいんだが、怯えている顔を見せたくないのか理由は定かではないけど、サファイアから「振り向かないで」と言われては仕方ない。
振り向きたい気持ちを抑えながら当初の目的を果たすとするか、と庭が荒れていて外壁もボロボロだったことから、浴室を探すまでにどんだけボロっちぃ廊下を歩かないといけないだろうと思いながら屋内に入っていった。
床には所々穴が開いており、穴がなくても腐っている所為で踏み抜いてしまった。壁の隅には大きい蜘蛛の巣が作られていて、よくわからない虫が捕まっている。
2階に置いてあるであろう荷物の重さに床が負けてしまい、頭上から落ちてくるかもしれない。
足が穴にはまった拍子にこけるのは嫌だけど、俺の代わりにサファイアが転ぶ方が嫌なので石橋を叩いて渡る様にゆっくりと歩いていく。
・・・と、そんな風に怖々と時間をかけて探索する気満々だった。だってそうじゃん。見るからに幽霊屋敷と言われる率100%の見た目だったんだから。
けれど現実は思うようにはいかないものだ。いや、この場合は良かったのか。
屋内に入った俺たちの目には、外から入る光以外ないので見えにくいけど、人が住まなくなって数年経った家には見えないほどキレイにされていた。
外壁と違って塗り直しているとでもいうような壁。
床には穴など開いていないフローリング。尚且つ絨毯が敷かれている。
ここからでは判断がつかないが、まったく錆びていないシャンデリアが堂々と設置されているから頭上から物が落ちて来ることはないだろう。
ここは本当に人が住んでいないのか?確かに、外観だけを見ると人が住んでいるようには思えない。
でも、目の前に映るきれいな状態の床や壁はどういうことだろう。
屋内に入ったのに、それ以降一歩も動かない俺に疑問を抱いたのか「なにかいま、・・・ありましたか?」と怯え声でサファイアが聞いてきた。
怖がっているサファイアも、このキレイな屋内を見れば安心するんじゃないかと気楽に考えていた俺は「いや、何もいないし大丈夫そうだよ。ほら」と促した。
『何もいない』に安心したのかはサファイアしかわからないけど、おそるおそる俺の後ろから顔を出したサファイアは屋内のキレイな状態を見て驚きからか「あ、あ、」と口から漏れ出していた。
「ね、外と違ってすごくキレイになってるでしょ。この分だと浴室もキレイだろうし。庭や外壁をキレイにすれば簡単に住めそうだよ」
浴室を見てから判断することになるけど、ここは良いんじゃないかな。
サファイアはどうかな?と思い振り返るとサファイアと目が合った。しかも『怖い!』という気持ちを顔で表しながら「何言ってるんですか!!早く家から出ましょう!!!」と渾身の力で俺を引っ張ろうとしている。
「ど、どうしたの?幽霊なんていないし、とても過ごしやすそうな屋内じゃないか。もしかして、掃除するのが大変とかそういう理由?大丈夫。俺も手伝うし、人手が足りなかったら誰か雇えばいいんだし」
そう俺があっけらかんとしていると、恐怖の値が振り切れたのか。それとも俺の思考能力の低さに驚いているのか先程以上の大声で俺の考えのなさを教えてくれた。
「外がボロボロなのに中がキレイなんて、危ない人や何かから隠れている様な一般人じゃない人が住んでいるに決まっているでしょ!!もしくは、信じたくないけど幽霊が掃除をしているとかね」
・・・なるほど。普通に考えれば想像通りのボロっちぃ屋内なら問題はないのか。誰の手も触ってないで放置されているってことなんだから。
でも、だとすると、掃除している犯人は幽霊ってことになるんだけど。
きれいにしているってことは誰かが掃除しているってこと。犯罪者とかがアジトにしているとしても、使う部屋だけキレイにすればいいんだし。というかそんな奴らはこんな住宅街にアジトなんて作らないだろう。木を隠すには森って言葉があるけどさ。
借金取りに追われている様な人の場合も同様で、入り口まで掃除する意味はないだろう。
情報は全然足りないけど、『危ない人』『隠れてる人』『幽霊』の選択肢なら最後しか選びようがない。
そんな風に、引っ張られながら頭を回転させていた俺の耳に俺でもサファイアでもない、第三者の声が聞こえてきた。
【出ていけ~。出ていけ~】
サファイアにも聞こえたんだろう。聞こえた瞬間「ビクッ」と身体が動いていて驚きすぎたのか、床に座ってしまった。
こんな状況にもかかわらず、不謹慎だけど、サファイアが可愛いことをより一層思い知った。




