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あ~んは最強

よろしくお願いします。

 この部屋にザイルがいたのに何も言ってこなかったのは城に着いてから寝ていたからか。

 ザイルが今までどんな風に過ごしていたか知らないけど、迷宮からはずっと野宿だったから疲れたんだろう。

 よしよし、俺は静かな奴にはとても優しいと巷で評判なんだぞ。

 と、優しい目をザイルに向けた後、思いっきり杖男に向かって投げ飛ばした。


 俺が投げたのが鳥籠に入ったザイルだとは気づかなかったのか、謎の物体が目のままで迫ってきていると即座に気付いた杖男は、戦闘時に使用していた杖を腰についているバッグから取り出し目の前に突き出した。

 俺の位置からだと杖にぶつかっただけに見えるんだが、ぶつかった瞬間杖の周囲が青白く光ったから防御壁でも張ったのだろうか。でもあの取り乱しようだとおそらく自動的に発動する類だと思われる。

 杖男の障壁が発動したことで身体に当たらずキャッチもされなかった鳥籠はそのまま重力によって床に引き寄せられ「ガシャン!」と言う音と「ぐえ!」というダミ声と共に床とぶつかり動きを止めた。


 杖男は自分に迫る危機を対処し終えたからか肩で息をしており、残り二名は俺たちプラス鳥籠を交互に見ていた。

 きょろきょろしているサファイア可愛いな~・・・。


 障壁のおかげでダメージを負わなかったと安堵した杖男が睨みながら俺に向かって怒り始めた。


「ちょ、いきなりなんだよタカヒロ!穏やかになってると思ったらまだキレたままじゃん。なに?まだ何か言いたいことでもあんの?」

「ん?俺が投げた物で誰かがケガするわけないだろ。なに言ってんだ?」


 俺からはもう話す気はないとばかりに杖男から目を外してサファイアに近づき抱きしめる。

 サファイアは俺の行動に反応するのに疲れたのかもう身じろぎもしない。

 抵抗しないのは抱きしめられるからありがたいけど、少しは反応してほしいね。スキンシップ的に。


 俺が説明をする気がないことを察したリンクが杖男に俺の能力のことを説明すると一応納得したようで怒りを鎮めていた。

 おお、そういえば杖男達には言ってなかったか。でも今知ったから問題ないな、うん。


 と話が一段落したところで杖男には帰ってもらおうとしたんだが、床からうめき声が聞こえて来た。

 え、なに。ここの絨毯って生きてるの?怖!!

 っとそんなことはなく、どうやら床に落ちた衝撃でザイルが目を覚ましたようだ。


 あれ?俺が投げた鳥籠にいたんだからダメージなんて食らわないはずだけど。

 ・・・もしかして、杖男にぶつかったとこまでは能力範囲内だから杖男に対してはダメージ無しだけど、その後の重力による落下による衝撃は能力範囲外ってことかな。

 そうすると爆弾があれば俺でも攻撃できんじゃね?相手にぶつかった後で地面に落ちた時に衝撃が起こるなら何か攻撃手段があるかもしれないな。


 そんなことを考えていると、痛みを訴え始めたザイルが五月蠅くなったので杖男に引き取ってもらった。

 杖男がここに来たのはそれが目的なんだから問題ないよね。


「んじゃ、お邪魔虫たちが消えたところでさっきの話に戻るとするか」

「だな。俺たちは予定通りザイルを使って呪いを解くアイテムを見つける旅に出かけるが、タカヒロはどうするんだ?」

「まずは住む家を探さないとな~。サファイア、住宅の資料見してくれる」


 資料が傍にないのはしかたないので取ってきて貰うために仕方なく抱きしめるのを止めると、本棚にあるファイルを一つ取り出して渡してくれた。


「これが宰相様が見つけてくださった住宅の資料だけど、あまり良さそうなのはなかったよ」

「だろうね~。俺のことを毛嫌いしているのに優良物件なんて渡すわけないだろうし。でも、逆に考えればこの資料にない物件は良いところと判断できるわけだ」


 宰相殿が丹精込めて俺の為にダメダメな物件を探してくれたんだから活用しないとね。金に関しては宰相殿よりも貰えるから安い物件を探さなくてもいいんだよね。

 でも、出費を抑えられるなら抑えるのが普通だし、一度資料の家を見に行くのも有りかな。サファイアも見に行ったらしいけど、二人で見にいけば何か気づくかもしれないし。

 良い物件が見つかれば『ありがとうございます宰相殿。貴方が見繕ってくれた資料にとても良い物件がありました。礼儀を知らない自分に対してもこんなに優しくしてくれるなんてなんてできた人なんだ!』と言ってあげようじゃないか。

 俺の言葉を聞いた宰相殿は嬉しすぎて涙を流すかもしれない。


「よし、明日からでも資料の家を訪れてみよう。俺がみたらなにか良いものがあるかもしれないし。ま、サファイアが見てダメだと判断した家たちだ。限りなくゼロに近いだろうけどね」


 俺が『明日から本気出す』と宣言しこれ以上動こうとしないという意思表示として、ファイルを渡してくれたまま立ちっぱなしのサファイアを手招きし、近づいたところで抱きしめながら"ぼふっ"という音を立てながらベッドに寝転んだ。

 この前はサファイアと寝るのは完全否定されたけど、俺に何を言っても無駄だと悟ったのか、リンクは何も言ってこなかった。

 これ幸いとこのままでいようと思います。


 夕飯まではこのままでいる!と言いながらゴロゴロしていると、リンクが「おそらく俺たちは明日の朝から出発することになると思う」とだけ残して部屋から出て行った。

 それはなにか。旅立つ前に挨拶に来いってことを言ってるのか?

 リンクの思い通りになるのはいかがなものかと思うけど、次に会うのがいつになるかわからないし、思惑に乗ってやろうか。

 と目を瞑りながら思っていたからか、いつの間にやら夢の中に入っていった。




 -----------------------------------




 遠くからサファイアが俺の名前を呼んでいる声が聞こえて来たので、サファイアを待たせてはならぬと深い眠りから覚めるために無理矢理体を起こすとすごく目の前にサファイアの顔があった。

 どうやら真上から俺を呼んでいたらしく俺が急に頭を上げたので互いの額がごっつんこした様だ。

 もうね、位置がずれていたらキスをしているってぐらいの近さだよ。

 

 互いの額がぶつかったら鈍い音と共に痛みが走るのは普通なんだけど、俺だけじゃなくサファイアも痛みを感じてなさそうだから、無意識でも俺の能力が発動しているんだろう。

 いや~良かった良かった。結構な勢いでぶつかったと思うから、普通だったら大声をあげた上で額を抑えながら泣きじゃくるところだったよ。

 痛がってるサファイアを見たくないけど、そんなサファイアもかわいいんだろうなと思ってしまう。


 ベッドに這い上がっていたサファイアは俺が起きたことを知るとベッドから降りて、「夕飯の支度が出来たので呼びに来た」と伝えてきた。

 いつの間に俺の抱きしめ拘束から逃れたのだろうか。俺のサファイアへの想いから寝ていたとしてもがっちり離さなかったと思うんだけど・・・。

 それでも無理矢理引きはがしたってことだろうけど、俺もザイル同様に疲れ切っていたんだろうか。当然と言えば当然かな。知らない世界に来ていきなり旅をしてきたんだし。精神的にも肉体的にも疲れがたまっていたんだろうな。


 城には料理専門のメイドがいるらしいので夕飯もそのメイド達が作ったらしい。

 俺はこれからずっとサファイアの手料理しか食べたくないんだけど・・・。それにこの城って俺にとって結構なアウェー地域だと思うんだよね。そんな場所で信頼できないメイドの料理を食べるなんて怖くね?と思ってしまう。


 サファイアに連れられ食事が用意されているところに座ったけど、気が進まないので動けなかった。

 だってさ、攻撃に関しては無効化できるけど、毒とか体内に入ったらもう止まらないじゃん。毒攻撃として受けるなら無効化できるだろうけど、これって、俺から毒を引き入れるってことになるから無効化しないと思うんだけど。ま、毒が入っていたらって前提があるけどさ。

 そんな俺を見かねたのか、毒なんて入っていないから食べてくれとサファイアが無理矢理夕飯を食べさせた。

 食べさせたなんて言葉が悪かったな。あれだ。男ならだれもが夢見る『好きな子からのあ~ん』だ。

 もうね、サファイアがスプーンを俺の前に差し出した時から気分が上がりまくりだよ。

 毒による(入っていません)混乱なのか、嬉しすぎる状況による混乱なのか、今の俺はサファイアから出される食事を食べ続ける機械となった。見た目としてはあれだ、親鳥から食事をもらう雛だな。

 いや、そんなディープキスだなんて・・・(親鳥から餌をもらうヒナを思い浮かべてください)。


 俺の至福の時(食事)が終わってしまい、この喜ばしい思いを胸に抱きながら眠りにつきたいと思い立ったが吉日!サファイアと一緒に眠ろうと部屋に戻るが、やはりサファイアは俺と同じベッドで寝ることを承諾してくれなかった。

 くそ!二人っきりでもダメなのか。

 俺は再度、サファイアに何もしないことを言葉だけでなく体で表すために縛ってくれと頼んだが、それも断られた。


 サファイアからの妥協案として、寝るまで傍にいるということで渋々頷いた。

 なら、せめて寝るまで頭を撫でてくれとお願いすると、部屋には二人しかいないことはわかっているだろうに周りを確認し、ゆっくり撫でてくれた。

 先程の喜ばしい状況もあり、傍にサファイアがいることで夢の中でも会えないかと思いながら、撫でられるぬくもりを感じながら、ゆっくり沈んでいった。



  -----------------------------------


 小鳥のさえずりが聞こえ、あたたかな太陽の光がカーテンの隙間から漏れ出し、朝食の準備をしているのか、微かに届く良い香りによって俺から睡眠欲が遠ざかっていく。

 まだ眠りたいという様な重い瞼を上げようとする直前、「そういえばサファイアはどうしたんだろうか。俺が寝たのを確認してこの前と同じ部屋で寝たのだろうか」と想像する。


 そんなことを思っていると、なにやら左側から熱い視線が浴びせられているのを感じた。

 もしや、この前一緒に寝たのを思い出して俺がいないと眠りが浅くなってしまったのかもしれない。でも、了承を得て寝るのは恥ずかしいので俺が起きるまでは隣で寝て俺が起きる前に目を覚まし、起きてからは俺の寝顔を凝視するということをしているのに違いない!!

 ・・・なんという妄想力だろうか。さすがにそこまでご都合主義じゃないよ俺もさ。

 サファイアからも愛の告白をしてきているならわかるけど、そんなことは一言も聞いたことないんだし。

 まあ、だれか知らんがさすがにずっと見られるのも鬱陶しいので起きて文句を言おうと腹筋の力を使い上半身を起き上がらせ視線の元凶に顔を向けた。


 するとどういうことでしょう。妄想が現実になったのか、本当にベッドのそばにサファイアが立っていた。

毎回4000文字ぐらいになってしまうんだけど、2000ぐらいで区切れないモノか・・・。

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