表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

抜け殻の勇者、鳥籠のザイル

よろしくおねがいしまうs。

 タカヒロ様の部屋から追い出された私達は、お兄様の意気消沈している姿を隣で見ながらゆっくり歩き、一旦お兄様の部屋で休むことにしました。お兄様はタカヒロ様に追い出されたショックからか口から魂が出てきそうな勢いで凹んでます。お兄様にはいつもの凛々しくかっこいい姿でいてほしい。いえ、今の姿も私にとっては変わらず大好きなお兄様なんですけどね。

 でも、このまま何も手につかない状態でい続けるとなると世話をする人が必要になります。食事を用意したりお風呂を沸かすのはメイド達が行うにしても、食べさせる人が必要ですしお風呂だって着替えさせたり洗うのにも人が必要になります。そんな事はいくらメイドでもさせるわけにはいきません。これは身内が行うべきことだと思います。ですが、お父様やお母様にはそんな時間あるわけないです。あ、あら、消去法で私しかできる人がいないではありませんか。しょ、しょうがありませんよね。私がお兄様にあ~んしてあげて、お兄様のふ、ふくを、ぬが


「はいはい嬢ちゃん。そろそろ現実に戻ってくれねえか。今、誰にも見せちゃいけないような表情になっていたぞ」


 良いところでリンク様の声が聞こえてきてしまい、脱衣所から現実世界に戻ってきてしまいました。

 おしい!あと少しだったのに・・・


「さて、このまま何もしないと本当にタカヒロとの縁が切れそうなんで出てきたばかりだが謝りに行ってくるわ。二人は現実から逃げているリアスを呼び戻してくれ。そんで、タカヒロのことは俺に任せて三人でこれからのことを話し合っててくれ」


 そう言って、リンク様は部屋から出て行ってしまいました。

 リンク様に言われるまでもなく今のお兄様を放ってはおけませんが、どうやれば元に戻るのでしょうか。お兄様がこうなった原因を取り除けば戻るでしょうか。とするとタカヒロ様を亡き者とする?いやいや、それではお兄様は余計に戻ってこないかもしれません。それでは、お兄様が嫉妬しているサファイアさんを亡き者にする?そうすると私たちがタカヒロさんに亡き者にされてしまいます。あら?何もしていないのに手詰まりになってしまいました。

 他にお兄様を元気づける何かがないかお兄様の手を握りながら考えていると、ユリウス様が思いもしない事を発し始めました。


「いや~それにしてもタカヒロって面白いね。まさか希少種のメイドと『ラブラブ生活をしたい!』とか(のたま)ってんだもん。さすが異世界人だね。リンクみたいな例も確かに存在するけど、あそこまでいってるのは見たことないな~。異世界人が全員ああなのか、それもとタカヒロだけがああなのかわからないけど、俺たちにしてみたら正気の沙汰とは思えないよ。さっきの言葉を聞きながら疑問に思っていたんだけど、タカヒロってホントに人間?人間だとしても狂ってないかな~あれ」

「ユ、ユリウス様?この部屋にはタカヒロ様がいませんが、そうやってしゃべっていると、タカヒロ様がいるときに口を滑らせるかもしれませんので、言葉にするのはやめた方が・・・」

「え~でも、妹さんだって少しも思わなかった?タカヒロはこの世界の生まれじゃなくてもさ、タカヒロの世界でも特殊な存在ってのはいると思うんだよね。そっちではどうだったから知らないけどさ、こっちでは大半の地域で迫害を受けている存在だよ?俺はその場にいなかったけど、希少種に関して国王様とかが説明したんでしょ?だよね。それなのにあんな風になるだなんて、おかしくない?」


 ユリウス様がサファイアさん、というかタカヒロ様に関して喋っていると所々でお兄様の手がピクピク動いていました。


「さっきリンクが『タカヒロとの縁が切れそう』って言ってたじゃん?俺からしたらそんな変人との縁なんて切りたくてしょうがないよ。まあ迷宮ではタカヒロのおかげで助かったけど、それとこれは違うっしょ。リンクが成功したら仕方ないから機嫌を損なわないように仲良くやるけど、俺としては失敗してくれた方がうれしいかもなー。そうなるとタカヒロだけでなくあのメイドとも接することがなくなるんだし」


 最後の方は笑いながら話し続けているユリウス様。お父様たちもそうですが、この世界では今のユリウス様の様な意見の方が多数を占めています。


 サファイアさんは私が生まれる前からお城で働いていると聞いています。私もお兄様と同じようにサファイアさんが殴られているのを見たことがありましたが、そのことをお母様に伝えると『そういう遊びをしているのですよ。メイドだけの遊びらしいので入らないようにね』と言われ当時の私はお母様の言うことに納得していました。お母様たちだけでなくメイド達や騎士たちもサファイアさんを見ると『嫌なものを見た』という目をしていました。ですが私は、仕事をしているサファイアさんを見ていても皆のように負の感情が芽生えることはありませんでした。私だけなのかなとリンク様とお兄様に聞いてみると『俺たちもそんな風に思ったことはないよ。でも、俺たちの考えはみんなとはちょっと違うから内緒だよ』と嬉しいことと悲しいことを言われ、この話はそこだけの話しで終わってしまいました。

 タカヒロ様が来てからサファイアさんと関わる機会が増えたことにより仲良くなりました。だからでしょうか。何でこんないい子を疎ましく思う人がいるんだろうと逆に思ってしまいます。


 ユリウス様の言葉を聞いて私自身がサファイアさんのことを考えていると、いつ戻ってきたのかお兄様の手が動き出し、開いていた手をぐっと握りしめたと思ったら、お兄様がユリウス様に言葉を投げつけてきました。


「ユリウス。私のために言ってくれているのならありがたい。が、タカヒロのことを悪く言うのは止してくれ。確かにこの世界の一般的思考としては希少種に対してはユリウスの意見の方が大半を占めるだろう。リンクやミラみたいに普通に接する人もいるけど、希少種と積極的に仲良くしようとするタカヒロは確かに稀だ。そんなタカヒロに対し、その好意は一時の迷いだ!錯覚だ!希少種と一緒にいては不幸になる!と言ってしまった。私自信としては希少種に対しての偏見は持っていなかったのに『タカヒロが』希少種を好きだということを知ってしまったことで身の内にない言葉を浴びせてしまった。私の言葉で目が覚めたタカヒロが希少種よりも私の方に目を向けてくれるかもしれないという願望をぶつけたことでタカヒロを傷つけてしまった。わかってるさ。私の言動は好きな相手を取られてしまうという嫉妬によることだってことくらい」


 まあ、すでに取られてしまっているんだがな、と半笑いでお兄様は言葉をつづけていく。


「私だってなぜ男のタカヒロにこの感情が芽生えているのかわからない。ただ、絶体絶命の状況で助けてもらったんだ。だって、あんなこと普通に過ごしていたら起こることじゃないだろ。その時のタカヒロを後ろから見ていて『かっこいい』と思ってしまったんだ。憧れではなく好意を持ったんだ。一緒に騒いだり笑ったり、たまにケンカをする様な友人の関係ではなく、ただ傍にいたい、同じ時を過ごしていたい、誰に認められなくても、二人だけの秘密でもいいから恋人として付き合っていきたいと・・・」


 心の底で思っていることを吐き出すお兄様を真剣な表情でみているユリウス様。え、もしかしてユリウス様もお兄様のことを!と思いましたがそんなことはなく、徐々に優しい表情に変わっていきました。


「だけど、タカヒロが好きなのは、私ではなくメイドだった。しかも希少種の。男性を好きになってしまったということだけでも困りものなのに、ライバルが希少種と知り、もうわけが分からなくなってしまい、さっきも言ったが思ってもいないことをタカヒロに言ってしまった。後悔してももう遅すぎた。そんな私を見限ったのかどうなのわからないが、私を見てもタカヒロが私だと判別することが出来なくなってしまっている様だし、自身の呪いを解く気力もなくなってしまった。ははっ」


 ああ、現実に戻ってきてくれたけど、またもや意気消沈の状態のお兄様。ここは、私がお兄様を元気づけてやらなくては!!


「お、お兄s」

「な~にバカなこと言ってんだよ、リアスは。確かに、リアスの言葉でタカヒロから絶縁状態に陥らされたけどリンクが言ってたじゃん。『タカヒロと縁が切れそう』って。てことは予想だけどまだ細いながらも繋がってるんじゃないの?俺個人として切れててもいいんだけど、リアスが元気になるなら俺もタカヒロとの縁を繋げる手助けをしてやるよ」

「ユリウス・・・」

「それに、一度の失敗がなんだよ。まだタカヒロとリアスは出会って間もないんだからぶつかり合うのは仕方ないんじゃないかな。タカヒロからリアスへの想いがゼロなのかマイナスなのか分からないけどさ、今この瞬間から行動する全てのことでプラスの方向に増やしていけばいいんだよ。どんだけ大変でも、どんなに難しくても一歩ずつ進んでいけばタカヒロが振り向いてくれる。そんな未来を目指していけばいいじゃん」

「ユリウス・・・ありがとう。お前のおかげで前を向けそうだ。これからプラスにしていけば良い、か。そうだな。今の私は底辺でも、ここから這い上がっていけば良いんだ。そしてタカヒロの隣にい続ける努力をすればいいだけの話だったんだな」


 あ、あれ?私のセリフを遮ったユリウス様の言葉でドンドンと元気になっていくお兄様。

いえ、元気になるのは良いのですが、その役目は私がしたいと・・・


「お前のおかげで前に進める原動力が生まれた来たよ。ありがとうユリウス。お礼に私のことを『リアス』と言っても良いと認めてやるよ」

「はは、今頃なんだよ。今まで何回も言ってたけどあれって恥ずかしいから否定していたんだろ?わかってるって」

「うざ!いやいや、私は本当に認めていなかったからな!」


 ユリウス様には言葉を取られ、タカヒロ様にはお兄様の心を取られてしまった・・・orz

 お兄様の恋心に関しては、タカヒロ様とサファイアさんがくっついている状況を見て唸っているお兄様を見れば一目瞭然でしたので仕方ありません。

 まあ嫉妬しているお兄様を見れたのでよかったと思いましょう。


「さて、生きるための活力が出てきたところで、今後について話しておくか」

「だな。でもそんなの初めから決まってることっしょ?迷宮で捕まえたザイルを使ってリアスの呪いを解くアイテムを見つける旅に出るっていう簡単なお仕事」

「簡単ではないと思うがその通りだ。タカヒロには断られてしまったのでいつもの三人にザイルを加えた4人旅になるな。あ、そうするとタカヒロがあのメイドと二人っきりになってしまうのか・・・くっ」

「それは仕方ありませんよお兄様。タカヒロ様の目的はサファイアさんと過ごすことなんですから」

「それにさ、今のリアスはタカヒロと話をすることもできないんだから今は何もできないと諦めるしかないよ。」

「ううぅ・・・確かにそうだが」

「だから、呪いを解き終わった後にでもタカヒロとの距離を短くするよう行動すればいいと思うよ。希望的観測だけど、その時には結構な時間が経っているからタカヒロがリアスを認識できるかもだしさ」


 ユリウス様の未確定な未来予想図を聞いて、再度旅に出る決意をしたお兄様は『あっ』と声を出したと思ったらきょろきょろ周囲を見渡して何かを探していました。

 お兄様の行動がおもしろかったのか、ケラケラ笑いながら『何探してるんだ、リアス』とユリウス様が聞いてみると、聞いたことがあるが意味が理解できない言葉が出てきました。


「いや、そういえばザイルがどこにいるのかわからないと思ってな。」

「ザイルだったらタカヒロが全速力で走ってた時に肩に捕まっていたからタカヒロの傍にいるんじゃないかな」

「だが、タカヒロの部屋にいたのなら先程の話し合いの時に口をはさんでもいいと思うんだが」

「それもそうだなー。なあ妹さん、タカヒロが城に帰って来た時に小さい生物がいなかった?」

「小さい生物とは、タカヒロ様と一緒に息を整えていた小さい羽の生えていた子のことですか?」

「そうそうそれそれ!迷宮から連れてきたザイルっていう妖精なんだけどさ、そいつの能力がリアスの呪いを解くアイテムを見つける鍵らしいんだよ」

「それじゃあ・・・!」

「うん、リアスの呪いが解けるのも間もないと思うよ。で、ザイルはどこにいるか知ってる?」

「それでしたら・・・」





 リンクの行動により、勇者に対して接する気持ちが少しは出てきた今日この頃。お互いの今後について話していると、またもはノックの音が聞こえて来た。

 またか!

 俺はサファイアを抱きしめるのに忙しいので無言でいるし、ここは俺の部屋なので返事をすることが出来ないサファイアはどうすれば良いのか分からずきょろきょろしている。

 ということで前回同様溜息を吐きながらリンクが声かけたことで部屋に新たな人物が登場してきた。新たなといっても杖男だったけどね。

 ああ、五月蠅くなりそう。


「し、失礼しま~す。あ、タカヒロの表情が穏やかになってる!!さっすがリンク!俺たちに出来ないことをいつもやってくれてありがとう。ところで、聞きたいことがあるんだけど良い?これを聞かないと先に進めないんだよ、ごめんね」


 「うるせぇ」と負の感情を込めて返事をしたのに気にしていないのか、表情を変えずにリンクの傍まで歩いてきて口を開いた。


「城に向かって全速力ダッシュしてた時にタカヒロに肩にザイルいたっしょ。今どこにいるかわかる?妹さんは『サファイアさんが知ってますよ』って言ってたんだけど」

「そういえばいたな、そんな奴。サファイア知ってる?」

「『ザイル』というのが何を指しているのか分からないんだけど」


 質問するために振り返って俺を見てくるので、俺はそれに耐えきれず、


「ああ!抱きしめているから顔近い、すごい近いからいい匂いがする!やばい、うれしすぎて死ぬ・・・あ、はいごめんなさいちゃんとするから。えっと、ザイルってのは迷宮で見つけた妖精のことで、なんか勇者の呪いを解くために必要な道具を見つける手がかりになるっぽいよ」

「妖精・・・。それってわたし達が知っている妖精で間違いない?小さくて羽が生えていてかわいい感じの」

「手のひらサイズで羽は生えていたけど、可愛くはなかったな。そもそもサファイアよりもかわいい存在なんているの?」


 照れたのかちゃんと対応しなかったのかなんなのか理由は不明だが俺から離れようと身体をわちゃわちゃ動かしていた。離すもんかー!!と、手だけじゃなく足も使ってサファイアをより抱きしめた。

 俺が離す気がないことを理解したのか離れようとするのは諦めたようで静かになった。

 サファイアは天井を見上げ何かを思い出そうとしている様子だが、何かを思い出したのか再び俺の方を向き口を開いた。

 ああ、近い近過ぎて何か出てきそう!いや、耐えるんだ。サファイアの言動を邪魔してはいけない。


「・・・おそらく枕元にいるのがユリウス様が探している『ザイル』という妖精だと思います」

「枕元って誰の?」

「もちろんタカヒロさんのです。タカヒロさんが『俺の部屋に運んでおいてくれ』と頼んでいたので」

「そんなこと言ったかな~俺」

「ええ。その時のタカヒロさんは身体の汚れが気になっていたから、些末なことと判断して忘れているんだと思う」


 サファイアの言葉が正しいと言わんばかりに大きく何度もうなずいた。

 なるほど!あの時は汚れていた所為でサファイアに抱きつけなかったからそのこと以外気にしなかったんだろう。

 サファイアのことを考えていたにも拘らず姫さんの質問に答えていた俺、超気遣い出来る男って感じだ!


 ザイルに用事がある杖男をさっさと部屋から追い出すために枕元にいると言われたザイルを探してみるとサファイアが言っていたように確かにいた。


 なぜか鳥籠の中で汚れた服を着たままぐーすか寝ていたけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ