16.クレア
私の名前はクレア、グラン公爵家の長女である。
私の居場所はどこにもない。
5歳の時にジョブが分かった時から両親は私のことなど見向きもしない。
勉強と礼儀作法は学ばせて貰えた、家の恥にならないようにだ、礼儀作法を学ぶことになった時に言われた事を今でも覚えている。
「ただでさえ錬金術師などというポーションを作るしか能のない我が家の恥なのだから、これ以上グラン公爵家の家紋に泥を塗らぬように礼儀作法ぐらいは覚えろ。 」
すごく悲しかったのを覚えている。
今はあまり悲しいも苦しいも辛いもない。
もし両親が私のことを虐待していたら家から逃げ出せたかもしれないが、虐待はしない。
食事は出る、家庭教師も雇っている、普段着やドレスも公爵令嬢としては地味すぎるが与えられている。
侍女はいない、メイドも多少は手伝いをしてくれることもあるが、基本無視。
酷いところでは使用人たちからも嫌がらせをされたりするらしいのだから、虐げられないだけ恵まれてる。
大丈夫、私はまだ恵まれてる、もっと酷い、辛い人は沢山いる。
そう思って何とか心を守っていた、本当に守れていたのかは分からないが、そんなある日家から手紙が届いた。
去年は一度も家に帰らなかったが、何も言われなかったのに。
その時点で嫌な予感はしたのだ、さらにいえば迎えが随分と豪華だった。
家の体面を保つためのものというより、私が逃げれないようにする檻のように感じた。
家に着いてからも妙なことは続く、風呂に入れられ、全身を磨かれ髪を整えられた。
準備されていたドレスも妙に豪華なものだった。
そこで聞かされた言葉にはさすがに言葉が出なかった。
「お前にはライゼン帝国の第4皇子に嫁いでもらう。」
ライゼン帝国は我が国と隣合っており、定期的に攻め込んで来るため小競り合いが耐えない。
男尊女卑の色が極めて強く、さらには非戦闘ジョブの立場は極めて低い。
私が嫁いだところでまともな扱いなどされない、きっと子供だけ産まされその後は良くて幽閉生活、悪ければ表向きは病に伏せっているとして適当に処分されるだけだ。
両国の関係改善だとかあれこれ言ってきたが、改善などされることはないのが目に見えている。
下手すれば非戦闘ジョブの娘を送ってきたことに怒り、今まで以上の規模で攻め込んで来かねない。
いや、それを狙っている?確かにグラン公爵家はライゼン帝国との国境に近い、もし状況が悪くなればグラン公爵家は救援を出すだろう。
多分その時にアルフォンスを向かわせるのだろう、そうすれば多少は評価が上がるかもしれない。
あまりに浅い考えだが、弟妹に甘く、弟妹が関わるとバカになる父ならば有り得るかもしれないと思ってしまった。
私が冷遇されているのはみな知っている、だからいつも1人だった。
だけど最近は後輩ができた、普通に話しかけてくれて、名前を呼んでくれる。
初めてひとりじゃないと思えた。
一緒にいたのはほんの数日、それでも私の心の大事な場所にいる。
背が結構高くて、目つきもちょっと悪い、パッと見はちょっと怖いけど、気が使えるし、実は結構優しい人。
( あぁ、私ユーリくんのことが好きだったんだなぁ)
一目惚れでもないのにこんな数日で人って好きになるんだなぁ、なんてよく分からないことを考えていると、家令が父に手紙を渡す。
少し慌てているようにも見えた。
父がその手紙を読み終え、驚くことを口にした。
「お前に婚約の話しが来た、相手はコート辺境伯の次男、さらには王家の推薦状まである。
しかも3日後にここに来ると書いてある。」
小さな声で、なんで今だとか忌々しいだの呟いていたが、私はそれどころではなかった。
もっとクレア先輩との関わりとか、ユーリと関係が進むところとか、色々書いてから進めたかったけど、クレア先輩早く救いたくなっちゃってこんな感じになりました。




