大場政夫VSベニー・ロドリゲス「絵」
試合の一時間前ベニー・ロドリゲスはアンフェタミン(通称ベニー)を服用していた。【減量苦でふらふらのベニー・ロドリゲスが、プライドを守るために自ら錠剤を飲み込む】という悲劇がそこにはあった。ヤクで強くなったベニー・ロドリゲスの瞳に映るものは果たして光か闇か神のみぞ知る。そして試合が始まる。
「レディーファイ!」
レフェリーの大声と共に日本大学講堂(日大講堂)で試合が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第1R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第1R開始のゴングが鳴り響くと、日大講堂の熱気は一気に沸騰点に達した。リングに立つのは、東洋の魔神と畏怖される大場政夫だ。そして、その対極に立つ男、ベニー・ロドリゲス。アンフェタミンが彼の瞳を不自然に輝かせ、通常の彼とは別人のような威圧感を放っていた。大場はベニーの異常なオーラを鋭く感知し、軽く顎をくいった。
「お前、何を飲んだ?」
ベニーは答えない。ただ、獣のような低い唸り声を上げるだけだった。その瞳には、もはや人間の理性という光はなく、薬物によって燃え上がる闇の炎だけが揺らめいていた。第1Rの序盤、ベニーは信じられないスピードで大場に襲いかかる。彼のジャブは毒蛇のように素早く、大場の防御網を執拗に苛む。普段なら大場が軽く捌くような攻撃も、今日のベニーは角度が違い、スピードが違う。観客席からは「ベニーの調子がおかしい!」という声が上がり始める。
しかし、中盤になるとアンフェタミンの副作用が顔を出し始める。ベニーの動きに無駄が増え、呼吸が乱れる。大場はプロの勘でこの一瞬の隙を逃さない。見事なカウンターの右ストレートがベニーのこめかみを直撃する。ベニーはぐらつくも、ロープに捕まって何度も立ち上がる。その姿に観客は拍手を送るが、彼の瞳に宿る光はますます深淵の闇に近づいていた。第1R終了のゴングが鳴った。ベニーはコーナーに戻る際、足を引きずるように自分の席に向かう。彼のトレーナーであるDick氏は顔を真っ青にしている。「ベニー、大丈夫か!無理するな!」と声をかけるが、ベニーは虚ろな瞳で天井を見つめるだけで、言葉を返さなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第2R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第2Rに入ると、ベニーの状態はさらに悪化。アンフェタミンの効果が薄れ始め、疲労が急激に襲ってくる。彼のパンチは力を失い、動きも鈍くなる。大場はここでとどめを刺すべく、華麗なフットワークを活かした猛攻撃を開始する。
「これで終わりだ!」
大場の必殺の左フックがベニーの顎を鋭く刈る。ベニーは音を立ててキャンバスに倒れ込む。レフェリーがカウントを始める。「1...2...3...」観客席からはベニーの名前を呼ぶ声と共に、大場コールが響き渡る。「7...8...」ベニーはなんとロープをよじ登り、よろめきながらも立ち上がる。その姿に会場はどよめく。
しかし、彼の瞳からはすでに光が失われ、ただ虚無な闇が広がっているだけだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第3R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第3R、ベニーはもはや戦う意識を失いかけていた。彼の動きは反射的で、思考が追いついていない。大場は一瞬、優しさと憐れみの入り混じった目でベニーを見つめる。「もうやめよう、ベニー。君はもう戦うべきじゃない」と心の中で思う。
しかし、ベニーには聞こえない。彼はただ、リングの中央で立ち続ける。その姿に大場はためらうが、日本の誇りとして試合を続行することを決意する。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第4R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第4R、ベニーに奇跡が起こる。彼の瞳に再び狂気の光が宿り、動きも鋭さを取り戻す。観客は驚き、大場も困惑する。「何が起きているんだ?」大場はベニーの変貌に理解を示せない。実は、ベニーの体がアンフェタミンに適応し始めていたのだ。彼の脳は薬物の影響下で新しい戦闘スタイルを編み出し、体もそれに対応していた。ベニーのパンチは再び鋭さを増し、大場を追い詰める。ベニーはラッシュパンチを繰り出し大場はリング端に追い詰められた瞬間に第4R終了のゴングが鳴り救われた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第5R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第5R、ベニーは完全に支配的になる。彼の動きはまるでダンスのように優雅で、パンチは正確無比。大場はただ防御するしかなかった。観客はベニーの奇跡的な復活に興奮し、会場は熱狂に包まれる。さりとて、ベニーのコーナーでは山田氏が不安げに顔を見合わせていた。「これは正常じゃない。ベニーの体が限界を超えている」と彼はトレーナー仲間にささやく。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第6R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第6R、大場が反撃を開始する。彼はベニーの弱点を見抜き、その動きの予測を始める。ベニーの動きは速いが、一定のパターンがあることを大場は発見した。「君の動きはもう読めた。ベニー」と大場は自信に満ちた表情でベニーを見つめる。大場の反撃は的確で、ベニーは次第に追い詰められていく。観客の興奮は沈静化し、緊張感が会場を包む。ベニーは第6R終了のゴングが鳴り大場政夫のラッシュをギリギリ持ちこたえた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第7R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第7R、ベニーは再びピンチに陥る。大場の左フックが彼の腹部を直撃し、ベニーは苦悶の表情を浮かべる。彼の瞳から光が失われ、再び闇が広がり始める。「もう終わりだ、ベニー。君はもう戦えない」と大場が言い放つと、ベニーは突然笑い出す。その笑いは不気味で、会場を凍りつかせる。「終わらない...俺はまだ...」ベニーはかろうじて言葉を絞り出す。彼の体は限界に達していたが、精神だけはまだ立ち向かう意志を失っていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第8R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第8R、ベニーは奇跡的な力を発揮する。彼のパンチは再び鋭さを取り戻し、大場を驚かせる。観客は再び興奮し、会場は熱狂に包まれる。ベニーの仲間が「ベニーが戻ってきた!」と声が響き渡る。
しかし、この奇跡は長くは続かなかった。中盤になると、ベニーの動きは再び鈍り、疲労が彼を襲う。大場はこの機会を逃さず、猛攻撃を開始する。ベニーはダウンした。審判が「1...!2....!3..!.4...!」とジャッジしている間に立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第9R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第9R、ベニーはもはや戦う意識を失っていた。彼の動きは反射的で、思考が追いついていない。大場は優しさと憐れみの入り混じった目でベニーを見つめる。「もうやめよう、ベニー。君はもう戦うべきじゃないんだ!」と心の中で思う。だが、ベニーには聞こえない。彼はただ、リングの中央で立ち続ける。その姿に大場はためらうが、日本の誇りとして試合を続行することを決意する。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第10R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第10R、試合は予断を許さない展開にベニーはアンフェタミンの効果により回復を見せ、大場を追い詰める。
だがしかし、その直後に彼の体は限界を迎え、再びピンチに陥る。観客は息をのんで二人の選手を見つめる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第11R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第11R、ベニーの瞳にはただ闇が広がり、その動きは機械のように正確で無感情だ。大場は恐怖を感じるが、プロとして戦い続ける。
「何が起きているんだ...この男は...」
大場はベニーの異常な状態に理解を示せない。彼のパンチは鋭く、動きは速いが、そこには人間の感情が一切感じられない。大場はベニーの左フックを腹に受けて意識朦朧となるが第11R終了のゴングが鳴り救われた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第12R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第12R、大場は反撃を開始する。大場は反撃を開始する。東洋の大場の真価がここで発揮される。彼はベニーの機械的な動きの「合間」を徹底的に突く。ベニーの右ストレートが空を切った一瞬の隙に、大場の左フックが炸裂した。ベニーの顔面が血しぶきと共に大きく揺れる。
しかし、ベニーは痛みの表情一つ見せず、ただ無言で再びパンチを放ってくる。その光景に、大場は背筋に寒いものを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第13R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第13R、リングは血と汗で濡れていた。ベニーの動きは完全に崩壊しかけていたが、彼のパンチだけはなおも凶悪さを失っていなかった。大場のフットワークは、血まみれのキャンバスの上でもなお華麗だった。ベニーの突進を華麗にスリップし、その脇腹に鋭いボディブローを叩き込む。「ぐっ...」と初めて、ベニーから苦痛の声が漏れた。その声を合図に、大場の連撃が始まる。左ジャブ、右ストレート、そして左フックにより東洋の魔神のコンビネーションが、薬物で強くなったベニーの肉体を容赦なく破壊していく。ベニーはロープに追い詰められ、ゴングに救われるまでひたすらガードに徹するしかなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第14R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第14Rの幕が上がる。大場のコーナーではトレーナーが「もうやめろ!これ以上は危険だ!」と叫ぶが、大場は静かに首を横に振った。「彼のプライドを、俺が砕く」と彼は呟いた。対するベニーのコーナー。彼は座ることさえできず、ロープに寄りかかりながら、虚ろな瞳でリングの向こう側を見つめていた。彼の中には、もはや何も残っていなかった。プライドも、意志も、そして光も。ゴングが鳴り、二人は中央で向かい合う。大場が一歩踏み出した瞬間、ベニーも最後の力を振り絞って前に出る。さりとて、その足はもはや立っていられず、ふらつくだけだった。大場は、ベニーのその姿に一瞬の迷いを見せる。だが、彼はすぐに決意を固めた。これは慈悲ではない。戦士として、相手に全てを捧げさせることが、自分の務めだと思ったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第15R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第15R、観客は息を殺していた。リングに立つ二人は、もはやボクサーというより、国を象徴する存在のようだった。大場は深く息を吸い込み、静かにベニーに近づく。ベニーは、本能だけで大場にパンチを放つが、それは大場の肩に当たるだけで、威力はなかった。その瞬間、大場は決定的な一撃を放った。
彼の全身から繰り出された、渾身の右ストレート。それは、音を立ててベニーの顎を貫通した。時間が止まった。ベニーの体は、その場で一瞬静止した。そして、ゆっくりと、まるで木の葉のように後ろに倒れ込んでいく。キャンバスに倒れる彼の瞳には、最後に一瞬、何かを悟ったかのような、穏やかな光が宿った。レフェリーはカウントを試みるが、途中で止め、リングを跨いだ。試合終了し勝者は、大場政夫。会場は真然とした静寂に包まれた。勝利のゴングも、歓声もない。ただ、倒れる男と、勝利した男が、リングで立っているだけだった。大場は倒れたベニーに近づき、彼の顔を見つめた。そこには、もはや闇も光もなかった。ただ、眠る男の顔があった。大場は静かに彼の頭を撫で、そして自分のコーナーに戻った。彼の勝利は、誰にも祝われることはなかった。日大講堂に残ったのは、一人の男の悲劇と、それを終わらせたもう一人の男の、あまりにも重い勝利だけだった。ベニー・ロドリゲスがプライドを守るために飲み込んだ錠剤は、彼の肉体だけでなく、彼の魂そのものを破壊してしまったのだ。彼の瞳に映っていたものは、光か闇か。
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