二階級統一王者大場政夫 VS WBC世界ジュニアフェザー級王者伝説のボクサーロイヤル小林「写真五枚」
「1973年1月25日に首都高速のカーブで、彼の愛車はスリップした。そこで奇跡は起きた。死の淵から生還した『永遠のチャンプ』は、再びリングへと帰ってきた。1976年、日本中が夢見たカードが今、現実となる。」
1976年6月16日(水曜日)大場政夫は桑田勲氏から対ロイヤル小林戦の講話を聞いた。
「今回試合する事になるロイヤル小林選手は強敵だ。だからワシが書いたノートをよく読んでおくように!」
大場政夫は桑田勲氏が書いたノートを読んだ。
大場政夫が取るべき対策・戦略
大場政夫がロイヤル小林と戦うなら、「アルゲリョが見せた理詰めのボクシング」に、大場特有の「機動力」をミックスした戦術が理想的です。
① 「左」の制空権争い
ロイヤル小林の最大の武器は踏み込んでの左フックですが、その反面、懐に入るまでのプロセスでジャブに合わせられる場面が目立ちました。
対策: 大場は持ち前のスピードある左ジャブを徹底し、小林に「自分の距離」を作らせないことが最優先です。小林が踏み込もうとする瞬間にジャブを差し、出鼻を挫きます。
② サイドステップによる「位置取り」
小林は直線的なプレッシャーには滅法強いですが、横の動きに対する対応には課題がありました。
対策: 正面に立たず、常に右へ右へと回り込みます。小林の得意な左フックの射程から逃れつつ、小林が向き直る瞬間に右ストレート、あるいは返しの左フックを叩き込む「ヒット・アンド・アウェイ」が有効です。
③ ボディへのカウンター
小林は攻撃の際、やや上体が立ち気味になる傾向がありました。
対策: 大場は得意の低い体勢からのボディブローを混ぜ、小林のスタミナと踏み込みの足を削ります。 特に小林が大きなパンチを振り回した後の空振りに乗じて、懐に潜り込む勇気が必要です。
④ 「中盤以降の勝負」と精神的ゆさぶり
大場政夫の真骨頂は後半の粘りです。チャチャイ戦で見せたような、絶望的な状況からの逆転劇は大場の代名詞です。
対策: 前半は小林の豪打を徹底してガード・回避し、小林が「倒せない」ことに焦りを感じ始めた中盤(7〜10回)から一気にペースを上げます。小林は強打ゆえに判定決着への不安を抱えがちな面もあったため、大場の「倒しても立ち上がってくる」姿は小林にとって最大の脅威となります。
3. 試合の展開予想
序盤: 小林の重戦車のようなプレッシャーに大場が晒されます。一度や二度のダウンは大場にとって想定内。ここでパニックにならず、いかにダメージを最小限に抑えて小林のパンチを見切るかが鍵です。
中盤: 距離を支配し始めた大場が、ジャブから右ストレートをヒットさせ始めます。小林の左フックをスウェーやダッキングでかわし、冷徹にポイントを重ねます。
終盤: 疲労が見える小林に対し、大場がラッシュをかけます。1976年のロイヤル小林は非常にタフですが、大場の回転の速い連打と正確なパンチが、最終的に小林の足を止め、大場の判定勝ち、あるいは後半KO勝ちを呼び込む可能性が高いでしょう。
結論
大場政夫の対策としては、「15ラウンドをフルに使い、小林の左フックを封じるための距離設定と、サイドへの機動力」を徹底することです。
「いつも丁寧な文章を書いてくれてありがとうございます...!」
それは心からの感謝だった。それから間もなくロイヤル小林は WBC世界ジュニアフェザー級王者になった。
1976年10月11日(月曜日)体重測定の日になった。大場政夫の体重は54.171kgでロイヤル小林の体重は55.123kgだった。
そして運命の日1976年10月12日(火曜日)に日本大学講堂(日大講堂)で試合が始まる。
「レディースエンジェントルメーーーンッ!今宵はお集まり頂きありがとうございます!これよりMasao Ohba VS Royal Kobayashiの試合を始めます!」
リングアナウンサーが大声で言った。
「大場政夫選手はプロボクシング45戦43勝23KO2敗2分の戦績です。」
アナウンサーは隣同士で仲良く談笑する。
「そうですね!対するロイヤル小林はプロ戦績23戦(19KO)2敗なのでどうなるか楽しみですね!」
遂に大場政夫とロイヤル小林の火蓋が切られる。
「赤コーナー二階級統一王者Masao Ohbaァアアアアアアア!対するは青コーナー WBC世界ジュニアフェザー級王者ロイヤル小林ィイ!レディーーーーーーーーーーファイ!」
レフェリーの大声と共に試合の火蓋は切られた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第1R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第1R、開始のゴングが鳴り響くと、日大講堂の熱気は一気に沸騰した。観客五千人の息遣いが、まるで生き物のように会場を満たしていた。大場政夫は軽やかなフットワークでリングを駆け、その動きはまるで蝶が舞うようだった。対するロイヤル小林は、岩のように動かず、青コーナーの王者を冷静な眼光で捉えていた。
「大場、まずはジャブから!距離を測れ!」
セコンド席から師匠の声が響く。大場は鋭いジャブを数発放つ。小林はわずかに体を傾けるだけで、そのほとんどをかわす。
しかし、最後のジャブが小林のガードに軽く当たる。パチンという乾いた音が会場に響いた。
「おお!まずは大場がポイントを獲得!」
アナウンサーの声が興奮を帯びる。小林はゆっくりと前進し始めた。その歩みは、まるで獲物を追う豹のようだった。大場は距離を取りながらも、鋭い左フックを小林の脇腹に叩き込む。
「ブシッ!」
汗が飛び散る。小林の表情は微動だにしないが、その目に一瞬、光が宿った。
「小林も黙っていない!右ストレート!」
小林のパンチは、まるで雷のようだった。大場は間一髪でそれを避けるが、拳が髪をかすめた。観客からどよめきが上がる。ラウンド残り30秒で両者は中央で対峙する。大場のコンビネーションが小林のガードを打ち鳴らす。ジャブ、ジャブ、右フック、左フック。まるで雨のようだった。小林はガードを固めるが、その防御の内側で何かを計算しているようだった。そして、ラウンド終了のゴングが鳴る直前、小林の右が炸裂する。
「ドカッ!」
大場がよろめく。強烈な一撃だった。
しかし、大場はすぐに体勢を立て直す。ゴングが鳴り、第1ラウンドが終了した。
「おおおお!なんとラウンド終了間際に小林の強烈な右ストレートが大場にヒット!大場は持ちこたえたが、これはどうなるか!」
アナウンサーの声が会場に響き渡る。セコンド席では、大場のカットマンが慌てて腫れを抑える。小林のセコンドは、静かに水を差していた。
「政夫、調子はどうだ?」
師匠が尋ねた。
「あいつのパンチは重いな。でも、まだまだいける!」
大場は汗を拭いながら言った。その目には、闘志が燃え盛っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第2R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第2R、開始のゴングが鳴る。今度は小林が主導権を握る。その強烈な右ストレートと左フックのコンビネーションは、まるで波のようだった。大場は防御に徹するが、小林のパンチはガードを貫通する。強烈なボディブローが大場の腹を打つ。
「ぐっ!」
大場が息をのむ。小林はそこに追い打ちをかけるように、連打を浴びせる。大場はロープに追い詰められる。
「大場がピンチ!小林の猛攻が止まらない!」
観客は立ち上がり、声を枯らして応援する。大場は必死にガードを固めるが、小林のパンチは容赦ない。
しかし、その時だった。大場の目に光が宿る。そして、小林の連打の合間を縫って、鋭い左フックを放つ。
「カチン!」
小林がよろめく。大場はそこに追い打ちをかける。ジャブ、右ストレート、左フック。まるで嵐のようだった。
「おおおお!大場が反撃!大場が反撃した!」
小林は後退するが、大場はそれを許さない。コンビネーションが小林を追い詰める。そして、大場の右フックが小林の顎に炸裂する。
「ドカッ!」
小林が倒れる。会場は静まり返る。レフェリーがカウントを始める。
「1....2...3...4...5...」
小林はゆっくりと立ち上がる。小林がガードを構える。レフェリーが試合を再開させる。
「試合再開!大場が追いかける!」
大場は小林を追い詰めるが、小林は冷静に距離を取る。そして、ラウンド終了のゴングが鳴る。
「なんと!大場がダウンを奪う!しかし、小林は立ち上がった!この試合、どうなるか!」
セコンド席では、大場のセコンドが興奮していた。
「政夫、よくやった!あと一押しだ!」
大場は深く息を吸い込む。その胸には、勝利への確信が宿っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第3R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第3R、ゴングが鳴り両者は中央で対峙する。今度は、互いに一歩も引かない。ジャブの打ち合いから始まり、やがて激しい打撃戦に発展する。
バチン、バチン、バチンッ!
拳が拳を打つ音が会場に響く。汗と血が飛び散る。観客は息をのんで、その光景を見つめていた。
「大場の左!小林の右!互いに譲らない!」
そして、ラウンド残り1分。大場のコンビネーションが小林のガードを打ち破る。鋭い左フックが小林の脇腹に食い込む。
「ブシッ!」
小林がよろめく。大場はそこに追い打ちをかける。右ストレート、左フック、そして、左ストレート。
「ドカッ!」
小林が再び倒れる。会場は歓声に包まれる。
「まただ!大場がまたダウンを奪った!」
レフェリーがカウントを始める。
「1....2....3....4....5....6....」
その時子供の声が聞こえた。
「負けるなぁあ!パパ勝ってぇえええええええええええええ!」
ロイヤル小林のご子息と奥さんが応援していた。その声に応えるかのようにロイヤル小林はゆっくり立ち上がろうとした。その叫び声は、単なる応援ではなかった。それは、父親の魂を揺さぶる、最も原始的な力だった。ロイヤル小林の膝が、わずかに震える。
しかし、その震えは恐怖によるものではなかった。それは、父親としての誇りが、闘士としての魂に火をつけた証だった。
「7....8....」
小林の目が開く。その瞳には、先ほどまでの怒りとは違う、静かで深い光が宿っていた。彼はゆっくりと、しかし確実に体を起こす。レフェリーのカウントが「9」を言い終える直前、小林は完全に立ち上がった。
「ファイト!」
レフェリーの声が、試合を再開させる。大場政夫は、その目の前の男が変化したことを瞬時に感じ取った。先ほどまでの「WBC世界ジュニアフェザー級王者」ロイヤル小林ではなかった。そこに立っているのは、自分の子供の声に応えて立ち上がった「父親」だった。
「おおおお!小林が立ち上がった!なんと!彼はまだ戦う!観客席からの子供の声が、彼を立ち上がらせたのか!」
大場がためらいなく踏み込む。
しかし、小林の動きが変わっていた。彼はもはや、豹のような猛攻を仕掛けてこない。その構えは、まるで深海に棲む巨獣のようだった。静かで、重く、そして、計算高い。大場のジャブが小林のガードに当たる。さりとて、先ほどまでのような乾いた音はしない。まるで、濡れた砂袋を殴るような、重い音が響く。
「うっ...」
大場が、わずかに後ずさる。小林のガードから、異常なほどの圧力が伝わってきたのだ。そして、ラウンド残り40秒。小林が、ゆっくりと左のジャブを放つ。そのスピードは、大場のジャブに比べれば遅い。しかし、その拳には、まるで鉄の塊のような重みがあった。
「ぐっ!」
大場のガードを、そのジャブが貫く。単なるジャブのはずなのに、強烈な衝撃が大場の脳を揺さぶった。反撃に出た大場が放った左拳に、小林の額の硬い手応えがズシンと伝わる。同時に、大場の口内には鉄の味が広がった。両者打ち合いになった。後小林がややジャブの威力が上で大場がガードしだした。
「小林のジャブ!なんとこの威力!大場がガードしきれない!」
大場は、距離を取ろうとする。しかし、小林は、まるで大場の動きを読んでいたかのように、ゆっくりと、しかし確実に追いかけてくる。そして、再び、重いジャブ。そして、今度は右ストレートで大場は、そのパンチを避けきれなかった。
「ドカッ!」
強烈な一撃が、大場の顎を直撃する。大場の足が、ふらつく。世界が、ゆっくりと回り始める。
「大場がよろめく!小林の反撃が始まった!この試合、流れが変わった!」
小林は、そこに追い打ちをかける。左フック、右フック、そして、再び重いジャブ。その一発一発が、大場の体に、そして精神に、深く刻み込まれていく。大場は、ロープに追い詰められる。小林の猛攻が止まらない。もはや、それはコンビネーションとは呼べない。それは、父親の愛が生み出した、容赦のない鉄槌の連続だった。
「大場がピンチ!大場がピンチだ!このままではラウンド終了まで持たない!」
ラウンド残り10秒。小林の右フックが、大場の脇腹に深く食い込む。
「ブシッ!」
大場の口から、苦しげな声が漏れる。そして、ラウンド終了のゴングが鳴る。
「ゴング!救われた!大場は、ゴングに救われた!しかし、このダメージは尋常ではない!」
大場は、よろめきながら自分のセコンド席に戻る。その顔は、すでに腫れ上がり、血で汚れていた。
「政夫、大丈夫か!」
師匠の声が、遠くに聞こえる。大場は、何も答えることができなかった。ただ、深く、深く息をするしかなかった。対する小林は、静かに自分の席に戻る。その顔には、勝利への確信が浮かんでいた。そして、彼は、観客席にいる自分の子供と奥さんに、小さく頷いた。その仕草は、まるで「大丈夫だ。パパは、勝つ」と言っているかのようだった。第4ラウンド開始のゴングが鳴る前に大場は、足を引きずるようにして、リング中央へ向かう。その姿に、会場は静まり返る。先ほどまでの蝶のようなフットワークは、どこにもなかった。小林は、変わらず静かに、大場を見つめていた。その目には、もはや戦意以外の何ものもなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第4R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第4R、大場は、何とかジャブを放つ。しかし、その拳には、全く力が入っていなかった。小林は、そのジャブを簡単にガードする。そして、ゆっくりと、右のストレートを放つ。
「ドカッ!」
大場が、再びよろめく。今度は、もっと激しく。世界が、もっと速く回る。
「大場がまたよろめく!小林の右が炸裂する!」
小林は、そこに追い打ちをかける。左フック、右フック、そして、ボディブロー。大場は、ガードすらままならない。ただ、小林のパンチを浴び続けるのみだった。そして、ラウンド残り2分。小林の左フックが、大場の顎を鋭く捕らえる。
「カチン!」
大場の目が、白く濁る。彼の体は、まるで糸が切れた操り人形のように、ゆっくりと倒れていく。
「ダウンだ!大場がダウンした!」
会場は、どよめきに包まれる。レフェリーが、カウントを始める。
「1....2....3....4....5....」
大場は、地面に倒れたまま、動かない。その意識は、遠くのどこかへ消えかけていた。
「6....7....8....」
その時、大場の脳裏に、子供の頃の記憶が蘇る。貧しい家庭で、必死に働く母親の姿。そして、ボクシングを始めたきっかけ。家族を守りたいという、その純粋な想い。
「9....」
大場の指が、わずかに動く。
(もうここで終わってもいい。だからありったけを....!)
大場政夫はWBC世界ジュニアフェザー級王者ロイヤル小林のご子息の前で本人をボコボコにする事に抵抗感があった。だが、その甘い良心を捨てなければこの試合に勝つ事は出来ない事を悟った。そして大場政夫は立ち上がる。
(許せ....ロイヤル小林....次のラウンドで貴様を狩るッ!)
遂に二階級統一王者の真の実力が明らかとなる。大場政夫は、立ち上がっていた。「9...」のカウントと同時に、彼の体は、まるで不死鳥のようによみがえった。その目は、もはや白く濁ってはいなかった。そこに宿っていたのは、闘志の炎ではなく、冷たく、静かで、絶対的な殺意だった。
「おおおお!なんと!大場が立ち上がった!カウント9で立ち上がった!この試合、まだ終わらない!」
アナウンサーの声が、会場を震わせる。
しかし、その声には、先ほどまでの興奮とは違う、戸惑いが混じっていた。なぜなら、立ち上がった大場の姿が、あまりにも異質だったからだ。彼の足は、もはや引きずってはいなかった。その動きは、まるで油を塗ったようだった。先ほどまでの苦しみは、どこへやら。彼の体からは、凄まじいオーラが立ち上っていた。小林は、その変化を感じ取っていた。彼の目が、細くなる。先ほどまでの「父親」の顔は消え、そこにいたのは、再び「WBC世界ジュニアフェザー級王者」だった。だがしかし、その王者の瞳には、今まで感じたことのない、危険な光が宿っていた。
「ファイト!」
即座に大場政夫はクリンチした。レフェリーの声が、試合を再開させると同時に第4Rは終了した。第4Rは WBC世界ジュニアフェザー級王者ロイヤル小林が勝っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第5R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第5R、ゴングの余韻を切り裂いて大場が跳んだ。迷いを断った彼のステップは、もはやキャンバスを滑る氷の刃だ。小林が網膜にその姿を捉えたときには、既に大場の左がガードを割り、顎を跳ね上げていた。
「バシンッ!」
乾いた音が、静まり返った場内に響く。大場は隙を許さない。彼のコンビネーションは精密機械のように正確で、そして容赦なかった。大場は悟っていた。目の前の男は「父親」という鎧を纏った怪物だ。慈悲をかけることは、自分と、そして小林の誇りを汚すことだと。
「大場の反撃!なんとこのスピード!小林が全くついていけない!」
小林のガードはもはや紙のように薄かった。
「ブシンッ!」
苦しげな吐息を漏らす小林に、大場は怒涛の追撃を浴びせる。右ストレート、左フック、そして再び右――。
「ドカッ!」
小林がよろめき、ロープに体を預ける。大場の拳は止まらない。観客席では、小林の子供が恐怖に声を失っていた。
バシンッ!
乾いた音が、会場に響く。小林のガードを貫いた大場のジャブが、小林の顎に鋭く食い込む。
「うっ!」
小林が、よろめく。大場は隙を許さない。彼のコンビネーションは、まるで精密機械のように、正確で、そして、容赦なかった。ジャブ、右ストレート、左フック、右アッパー。その一発一発が、小林の体に、深く刻み込まれていく。
「大場の反撃!なんとこのスピード!小林が全くついていけない!」
小林は、必死にガードを固める。しかし、そのガードは、もはや紙のように薄かった。大場のパンチは、そのガードを楽々と貫通する。そして、大場の拳は、その防御を楽々と貫通する。ラウンド残り1分30秒。大場の左フックが小林の脇腹を深く抉る。
ブシンッ!
小林の口から、苦しげな声が漏れる。大場は、そこに追い打ちをかける。右ストレート、左フック、そして、再び右ストレート。
「ドカッ!」
小林が、よろめきながら倒れる。しかし、彼は、ロープに体を預けることで、倒れるのを防いだ。
「小林がロープに!大場が追いかける!このままでは、試合が終わる!」
大場は、小林を追い詰める。その拳は、怒涛の如く、小林を打ち続ける。小林は、ガードすらままならない。ただ、大場のパンチを浴び続けるのみだった。観客席では、小林の子供が、父親の姿に、声を失っていた。その瞳には、恐怖が浮かんでいた。そして、ラウンド残り30秒。大場の右フックが、小林の顎を鋭く捕らえる。
「カチン!」
小林の目が、白く濁る。彼の体は、まるで糸が切れた操り人形のように、ゆっくりと倒れていく。
「ダウンだ!小林がダウンした!」
会場は、静まり返る。レフェリーが、カウントを始める。
「1....2....3....4....5....」
その時声が聞こえた。
「パパァアアアアアアアアア!立ってよおおおお!」
泣き乍ら大声を出す息子の姿が会場を味方にさせた。
「そうだ!立てぇええええ!コバヤシイイイイイ!」
観客も大声をあげて応援した。
「パパが負ける所なんか見たくないよ...」
小林の子供は号泣していた。小林は、地面に倒れたまま、動かない。その意識は、遠くのどこかへ消えかけていた。
「6....7....8....」
その時、小林の脳裏に、子供の顔が浮かぶ。そして、自分が、なぜここにいるのか。なぜ、拳を握っているのか。その理由が、蘇る。
「9....」
小林の指が、わずかに動く。
(もうここで終わってもいい。だから、ありったけの誇りを....!)
小林が立ち上がったその体は、もはや自分のものではなかった。そして第5Rは終了した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第6R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第6R、ゴングが鳴り響く。しかし、立ち上がった小林の姿に、会場は息をのんだ。彼の体は、もはや父親のものではなかった。それは、息子の涙で鍛えられた、鋼の意志そのものだった。大場は、その変化を即座に察知する。桑田氏のノートに書かれていた警告が、脳裏に蘇る。「中盤以降の勝負」と精神的ゆさぶり。まさに今、その局面に差し掛かっていた。小林は、単なる「父親」ではない。息子の涙を背負った「不屈の戦士」だった。大場は、冷静に距離を取る。先ほどまでの殺人的なラッシュは、どこへやら。彼の目は、再び「ボクサー」のそれに戻っていた。桑田氏の教え通り、彼は試合をコントロールしようとしていた。
「おおおお!小林が立ち上がった!しかし、大場は冷静だ!彼は無理に攻めず、距離を取る!」
小林は、ゆっくりと前進を始める。その歩みは、第4ラウンドの巨獣のような重みを取り戻していた。大場は、サイドステップで、それをかわす。まさに、ノート通りの「位置取り」だ。
「大場のサイドステップ!小林の左フックを空かせる!」
小林の左フックが、空を切る。大場は、その隙を逃さない。鋭い右ストレートが、小林のガードに当たる。
「バシッ!」
小林が、わずかに後ずさる。大場は、そこにジャブを叩き込む。そして、再びサイドステップ。彼の動きは、まるで数学者のようだった。正確で計算され、そして美しかった。ラウンド残り2分。大場は、ノートに書かれた戦術を完璧に実行する。彼のジャブは、小林の「制空権」を支配していた。小林は、何度も踏み込もうとするが、その度に大場のジャブが出鼻を挫く。
「小林が踏み込む!しかし、大場のジャブ!出鼻を挫かれる!」
小林の目に、焦りが宿り始める。彼のパンチは、より荒くなる。しかし、それは、大場の思う壺だった。ラウンド残り1分。小林が、大きな左フックを振り回す。桑田氏のノートに書かれていた通り、「大きなパンチを振り回した後の空振り」だった。大場は、その隙を逃さない。彼は、低い体勢から、小林の懐に潜り込む。そして、渾身のボディブローを叩き込む。
「ブシッ!」
小林の口から、苦しげな声が漏れる。大場は、そこに追い打ちをかける。ボディへの連打。小林のスタミナと、踏み込みの足を、着実に削っていく。
「大場のボディ攻撃!小林が息を切らす!」
ラウンド残り30秒。小林は、ガードを固める。大場は、冷静にジャブを打ち、ポイントを重ねる。彼は、勝利への道を、着実に歩んでいた。
そして、ラウンド終了のゴングが鳴る。
「ゴング!第6ラウンド終了!このラウンドは、大場の支配だ!」
セコンド席では、大場の師匠が、興奮していた。
「政夫、その通りだ!ノート通りだ!」
大場は、深く息を吸い込む。彼の胸には、勝利への確信が、より強く宿っていた。対する小林は、座ったまま、動かなかった。彼の体は、疲労とダメージで、限界に達していた。しかし、彼の目は、まだ諦めてはいなかった。彼は、観客席にいる自分の子供を、見つめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第7R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第7R、開始のゴングが鳴る。大場は、変わらず冷静に、ジャブを放つ。小林は、それをガードする。
しかし、そのガードは、もはや崩れかけていた。大場は、サイドステップで、小林の回り込む。そして、右ストレート。小林のガードを、そのパンチが貫く。
「ドカッ!」
小林がよろめく。大場は、そこに追い打ちをかける。コンビネーションが、小林の体を打ち続ける。小林は、ロープに追い詰められる。大場は、ラッシュをかける。彼の拳は、怒涛の如く、小林を打ち続ける。
「大場がラッシュ!小林がロープに!このまま試合が終わるか!」
観客席では、小林の子供が、目を覆っていた。彼は、もう父親の姿を見ることに、耐えられなかった。そして、ラウンド残り1分。大場の左フックが、小林の顎を鋭く捕らえる。
「バァアアアアチイイイイイイイイイン!」
小林の目が、白く濁る。彼の体は、まるで糸が切れた操り人形のように、ゆっくりと倒れていく。
「ダウンだ!小林がダウンした!」
会場は、静まり返る。レフェリーが、カウントを始める。
「1....2....3....4....5....」
小林は、地面に倒れたまま、動かない。その意識は、遠くのどこかへ消えかけていた。
「6....7....8....」
その時、小林の脳裏に、子供の顔が浮かぶ。そして、自分が、なぜここにいるのか。なぜ、拳を握っているのか。その理由が、蘇る。
「9....」
小林の指が、わずかに動く。
(勝てる気がしねぇ....!息子よ....ごめんな.....)
「立てぇえええええ!立つんだキバヤシィイイイイイイイ!」
そう叫んだのはエディ・タウンゼントだ。その時奇跡が起こった。ロイヤル小林が立ち上がった。そして第7Rは終了した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第8R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第8R、ゴングが鳴り響く。立ち上がった小林の姿に、会場は再び息をのんだ。彼の体は、もはや人間のものではなかった。それは、息子の涙と師の声で鍛えられた、不屈の魂そのものだった。大場は、その変化を即座に察知する。桑田氏のノートに書かれていた警告が、脳裏に蘇る。「中盤以降の勝負」と精神的ゆさぶり。まさに今、その局面に差し掛かっていた。小林は、単なる「父親」ではない。息子の涙を背負った「不屈の戦士」だった。
「おおおお!小林が立ち上がった!しかし、大場は冷静だ!彼は無理に攻めず、距離を取る!」
小林は、ゆっくりと前進を始める。その歩みは、第4ラウンドの巨獣のような重みを取り戻していた。大場は、サイドステップで、それをかわす。まさに、ノート通りの「位置取り」だ。
「大場のサイドステップ!小林の左フックを空かせる!」
小林の左フックが、空を切る。大場は、その隙を逃さない。鋭い右ストレートが、小林のガードに当たる。
「バシッ!」
小林が、わずかに後ずさる。大場は、そこにジャブを叩き込む。そして、再びサイドステップ。彼の動きは、まるで数学者のようだった。正確で計算され、そして美しかった。ラウンド残り2分。大場は、ノートに書かれた戦術を完璧に実行する。彼のジャブは、小林の「制空権」を支配していた。小林は、何度も踏み込もうとするが、その度に大場のジャブが出鼻を挫く。
「小林が踏み込む!しかし、大場のジャブ!出鼻を挫かれる!」
小林の目に、焦りが宿り始める。彼のパンチは、より荒くなる。しかし、それは、大場の思う壺だった。ラウンド残り1分。小林が、大きな左フックを振り回す。桑田氏のノートに書かれていた通り、「大きなパンチを振り回した後の空振り」だった。大場は、その隙を逃さない。彼は、低い体勢から、小林の懐に潜り込む。そして、渾身のボディブローを叩き込む。
「ブシッ!」
小林の口から、苦しげな声が漏れる。大場は、そこに追い打ちをかける。ボディへの連打。小林のスタミナと、踏み込みの足を、着実に削っていく。
「大場のボディ攻撃!小林が息を切らす!」
ラウンド残り30秒。小林は、ガードを固める。大場は、冷静にジャブを打ち、ポイントを重ねる。彼は、勝利への道を、着実に歩んでいた。そして、ラウンド終了のゴングが鳴る。
「ゴング!第8ラウンド終了!このラウンドは、大場の支配だ!」
セコンド席では、大場の師匠が、興奮していた。
「政夫、その通りだ!ノート通りだ!」
大場は、深く息を吸い込む。彼の胸には、勝利への確信が、より強く宿っていた。対する小林は、座ったまま、動かなかった。彼の体は、疲労とダメージで、限界に達していた。
しかし、彼の目は、まだ諦めてはいなかった。彼は、観客席にいる自分の子供を、見つめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第9R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第9R、ゴングが鳴り響く。疲れ切っているロイヤル小林に右ストレートをくらわした。
彼の体は、もはや動かなかった。
「1...2...3...4...5...6...7...8...9...10...!」
レフェリーの声が、会場に響き渡る。試合は終わった。
「勝者は、赤コーナー、二階級統一王者、大場政夫!」
「やったぁああああああああああああああああああああああああ!」
会場は、大場の勝利を祝福する歓声に包まれる。大場は、天に向かってガッツポーズをする。けれど、その顔には、勝利の喜びと、そして、何か複雑な感情が浮かんでいた。彼は、倒れた小林に駆け寄る。そして、その手を握った。
「すまない....」
小林は、ゆっくりと目を開く。その瞳には、敗北の悔しさと、そして、大場への敬意が浮かんでいた。
「いい試合だった。君は、本当の王者だ...!」
小林はそう言うと、微笑んだ。その笑顔は、まるで、子供を見る父親のようだった。大場は、その言葉に、胸を突かれる。彼は、何も言うことができなかった。ただ、深く、深く頭を下げるしかなかった。観客席では、小林の子供が、父親の姿に、涙を流していた。その涙は、敗北の涙ではなかった。それは、父親の誇りを、見届けた涙だった。勝者と敗者の境界線は、明確だった。しかし、この夜、日大講堂で繰り広げられた戦いは、単なる勝敗を超えたものだった。それは、家族を愛する二人の父親の、魂のぶつかり合いだった。そして、その結果、二人は、互いの魂の深さを知るのだった。
「大場さんの快進撃は止まらないな!」
奇跡の快進撃を見た大場ファンはとても高揚していた。観客の心には、その光景が、永遠に刻まれる。そして、この夜の伝説は、長く、長く、語り継がれていくことになるだろう。
大場が勝利して数時間後一人で首都高速のあのカーブを通りかかった。
「あの日、俺が死んでいたらこの熱気も、あの親子との出会いもなかったんだ...」
大場は自分の強さを誇り生を噛みしめた。その後敗れた小林が、控室で息子を抱きしめた。
「勝てなくてごめん...パパは負けたけど、最高に強い男と戦ったんだ....」
ロイヤル小林は息子の前で大粒の涙を流した。




