伝説のボクサーロイヤル小林と暗雲を切り裂く一撃。大場政夫がスパーリングで見せつけた「格の違い」写真「三枚」
1976年6月15日(火曜日)伝説のボクサーロイヤル小林の名トレーナーエディ・タウンゼントにマッチメイクをしたいと桑田勲氏が黒電話で言った。
プルルルルルルル。プルルルルルルル。ガチャ。
「お忙しいところ失礼します。帝拳ジムの桑田勲です。トレーナーのエディ・タウンゼントと通話したいのですが、今いますか?」
「ワシじゃよ!エディじゃが?何か用かね?」
エディ・タウンゼント(61歳)だ。
「あの~実はロイヤル小林選手とマッチメイクしたいのですが、よろしいでしょうか?」
桑田勲氏は緊張した面持ちでそう話した。
「お~~~~~~い!キバヤシ!桑田勲氏からマッチメイクのお誘いが来とるで~!試合するか~!」
※エディは日本語も話せましたが、独特のなまり(ハワイなまりや英語圏のアクセント)があり、「小林」という名前を呼ぶ際にどうしても「キバヤシ(Kibayashi)」という発音になっていました。そのため、周囲の人やファンからは、エディが呼ぶ「キバヤシ」がロイヤル小林の独特のニックネームのように親しまれていました。他にもロイヤル小林には「きびし」や「マシーン」というニックネームがありました。
そしてロイヤル小林が返事をした。
「良いですね!私もマッチメイクしたかったんです!是非お願いします!」
ロイヤル小林は試合する旨をエディ・タウンゼントに伝えた。その後ロイヤル小林はシャドウボクシングをして闘志を漲らしていた。
(俺は勝つ!)
こうしてマネージャー、スポンサー、プロモーターの協力もあり大場政夫VSロイヤル小林の試合日が1976年10月12日(火曜日)の日本大学講堂(日大講堂)に決まった。この知らせを聞いた大場政夫は喜んだ。
「絶対良い試合にします!」
それは決意の宣言だった。
「俺も政夫君なら良い試合になると信じているッ!」
桑田勲氏の言葉には本心と優しさが込められていた。そして大場政夫は金田盛男とスパーリングしていた。大場政夫は金田盛男ミドル級のボクサーと拮抗した良いラウンドを繰り広げていた。
シュシュシュシュシュシュ!シュシュ!シュシュシュ!
右ジャブ、左ジャブ、右フック、左フックを交互に打ち身長184cmのミドル級ボクサーを翻弄していた。
(流石は大場政夫さんですねッ!ミドル級ボクサーを翻弄するとは!ミドル級相手にどこまで通用するかな?)
ミドル級ボクサー金田盛男は驚きを隠せなかった。金田盛男は在日朝鮮人である。本名はキム・クファンだ。
(有り得ない。こんなに強い日本人なんて見た事ない.....)
「そこまで!」
桑田勲氏の声により第1R分のスパーリングが終了した。
「ちょっとキム!弟分だからって俺に手加減しているだろ!」
大場政夫はミドル級ボクサーキム・クファンが手加減しているのを見抜いていた。
「当たり前じゃないですか!手加減しないで大場さんを傷つけて試合に悪影響を与えてしまったらここにいる全員が全部俺のせいにしますよね。そんな事にならないように手加減はマナーですよ」
キム・クファンは人間関係のいざこざをめんどくさがる性格だ。
「それはその通りだけど、もう少し本気でスパしてくれないとこっちもアドレナリンが上がっていかないんだよ!」
ミドル級ボクサーキム・クファンはトレーニングと評して服を着てランニングする為に大場政夫から逃げた。
「ちょっと足腰のトレーニングして来るんでお先に失礼します!」
「全くキムはしょ~がね~な....」
桑田勲氏はキムが本気のスパーリングから逃げてばかりでやきもきした。
全力で面倒事から逃げるキム・クファンに大場政夫は苦言を呈した。
「あいつ~!俺とのスパの時いっつも萎縮してあまり打ってこないんだよな。どうしたら打ってきてくれるんかな?」
「在日朝鮮人だから肩身の狭い思いをしているんじゃないですか?差し詰め大場さんに大怪我させたら大バッシングが来ると思って気が気じゃないとかでしょう。後、大場さん強過ぎるからサンドバッグ打ちを一時間してから俺とスパしましょう。俺なら階級下だから手加減しませんよ。それに俺はヘッドギアして大場政夫さんはヘッドギアなしでフェアだと思います」
そう言ったのはいずれ日本スーパーフライ級の初代王者になる竹森颯太だ。
「竹森なら手加減しないだろうな!そうしよう」
大場政夫は快諾した。竹森颯太は自らの力を信じていた。
大場政夫が一時間に及ぶサンドバッグ打ちを打ち終わる頃には辺りが暗くなってきていた。
「そろそろやりましょうか!俺の真の実力見せてあげますよッ!」
竹森颯太の異質な迫力に大場政夫はスパーリングなのを一瞬忘れそうになった。
(この迫力....この威圧感.....こいつ本当に強くなる逸材だな....!)
そして本格的な試合形式のスパーリングが始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー第1R開始ーーーーーーーーーーーーーーーー
第1R、竹森颯太はヘッドギアを装着し、グローブを握りしめた。彼の目には戦闘者の光が宿り、その身から放たれるオーラはいずれ日本スーパーフライ級王者になる者の威厳を物語っていた。一方、大場政夫はヘッドギアなしでリングに立ち、その表情は真剣そのものだった。
(行くぞ、政夫!本気で来い!)
竹森は滑らかなフットワークで距離を詰めた。スーパーフライ級とは思えないほどのスピードと切れ味のあるジャブが大場のガードを叩く。パチパチという乾いた音がジムに響き渡る。
「おうっ!」
大場は竹森のジャブをかわしつつ、鋭いカウンターの左フックを放つ。
しかし竹森は驚異的な反応速度でそれを避け、すぐさま右ストレートを繰り出した。拳が大場のこめかみをかすめ、風切り音が響いた。
(速い!階級が違うとはいえ、このスピードは本物だ!)
大場は内心驚きながらも、冷静に距離を取り直した。彼のフットワークは軽やかで、まるでリングの上を舞う蝶のようだった。竹森の攻撃を華麗に避け、的確なタイミングでボディブローを叩き込む。
「ぐっ!」
竹森の眉間にしわが寄った。大場のパンチは階級を超える威力を秘めていた。桑田勲氏はその光景に感嘆の声を漏らした。
(すごい...大場選手のボクシングは本当に芸術的だ...)
竹森は再び攻勢に出た。今度はコンビネーションで大場を追い詰めようとする。左ジャブから右フック、そして左アッパーへと続く連続攻撃はまさに王者の技だった。大場はガードを固めるも、その防御は少しずつ崩され始めていた。
(どうした政夫!この程度で終わりか!)
竹森の両手を使った挑発に、大場の目に燃え上がる闘志が宿った。彼はガードを少し下げ、竹森の攻撃を誘うように見せた。竹森はそれに乗り、全力の右ストレートを放った。その瞬間、大場は体をひねり、竹森の腕の下をくぐり抜けると、背後から鋭いフックを顎に叩き込んだ。
「うぐっ!」
竹森の足がふらつく。大場の機転は彼の予想を超えていた。王者としてのプライドが傷つけられた竹森は、無謀な連打を繰り出した。
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!
しかし大場は冷静にその攻撃をさばき、的確なカウンターを浴びせ続けた。いずれスーパーフライ級の王者になる者を超えている程のパワーとテクニックを兼ね備えた大場のボクシングは、もはや芸術の域に達していた。
「ゴングッ!」
3分間の激しい攻防が終わり、両者は息を整えた。竹森の顔には汗が流れ、その瞳には驚きと焦りの色が浮かんでいた。
「...凄いな、大場。本当に凄い。俺の想像を超えていた....」
竹森の言葉に、大場は微笑みを返した。
「君もすごいよ、竹森。階級が違うのに、これほどまでに僕を追い詰めてくれるなんて!」
桑田勲氏は二人の姿に感動し、目頭を押さえていた。
「これだ...これこそが真のボクシングだ。互いを高め合う魂のぶつかり合い...」
その時、大場政夫はロイヤル小林との試合を楽しみにしていた。彼はこのスパーリングを通じて、自分の弱点と強みを再認識していた。そして、10月12日の日本大学講堂で繰り広げられる伝説の試合に向け、さらに強い決意を固めていた。
「ロイヤル小林...君との試合も、きっとこうなるだろう。互いの魂がぶつかり合う、真剣勝負...」
大場の瞳に、これから始まる伝説への期待が燃え上がっていた。竹森颯太もまた、このスパーリングを通じて新たな境地に達したことを感じていた。
「政夫、君とのスパリングで何かが変わった気がする。俺も、もっと上を目指さなければ!」
二人のボクサーの間に生まれた絆と尊敬。それが、これから始まる伝説の序章となっていた。




