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処刑されそうになった勇者を救ったのは、彼女がかつて打ち滅ぼした魔王だった  作者: 観葉植物
更なる力を求めて

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紋鎧獣の皮を求めて、少女は再び他者と共闘する


「こんにちは。紋鎧獣の皮の採集を募集しているとのことですが……」


 エリスが声をかけると、テーブルにいた三人が一斉に見上げてくる。

 募集をしたものの、あまりにも人が集まらなかったようにも見えるその様子は、急に表情がぱあっと明るくなったようにも見えた。

 

「おお! 待ち兼ねていたぜ!」


「良かったぁ……このまま夜まであと一人集まらなかったらどうしようかと思ってたんだよ!」


「ようやく採集に出かけられます! 参加してくれて本当にありがとう!」


「え、えーっと……喜んでいただけて何よりです」


 三人はエリスを瞬時に取り囲み、絶対に逃さないという圧力を向けている。

 勿論エリスは逃げるつもりは毛頭ないが、あまりにも強烈な威圧感に、少し仰け反ってしまう。

 


「あ、自己紹介がまだだったな! ゴホンッ……俺はケイオス。このパーティーのリーダーだ。よろしくな」


 日焼けによる浅黒い肌と適当に切った髪を携えた大男は、がっしりとした体格に全身鎖帷子を身に着け、背中には大きな戦斧を背負っている。

 無精ひげを生やしたその顔には、多くの戦場をくぐり抜けてきた者の貫禄があった。


《見るからに前衛だが、隠そうともしない闘気の強さからして中々の腕を持っているようだな……面白い、紋鎧獣とやらとの戦闘を見て見極めてやろう》


 続いて金髪を短めに切りそろえた少女が前に出て、エリスにアピールを始めた。


「キャリーだよ! 私もケイオス同様、前衛担当! 器用な手先が自慢で、すばしっこさには自信があるよ!」


《軽装だが鍛えられた肢体から素早い動きが想像できる。腰には二本の短剣か。非力そうだが、速度と技術で翻弄するタイプだな》


 最後に眼鏡をかけた若い茶髪の女性が、本を抱えながらお辞儀をした。

 

「私はローナ。鑑定や採取を担当していますので、魔獣に関してはお任せあれ、です。よろしくお願いしますね」


《……非戦闘員のようだが、その知識は如何様なものかが不明だな。おいエリス、後程この小娘にお目当ての魔獣の皮の採取方法を知っているか確認してみろ》


(そうですね。教えていただかないと二進も三進もいきませんし)

 

 そして最後は、エリスの自己紹介だ。


「私の名はエリスと申します。棒術を嗜んでいて、何らかの気配を察知することが得意です」

 

 よろしくお願いいたします、と丁寧に礼をして全員の自己紹介を締めた。


「棒術か、囮や支援が得意ということでいいか?」


「ええ、そう思っていただくと助かります」


《……紋鎧獣がどのような魔獣かが不明な現状、控え目になるのは仕方ない。だが、すぐに弱所を看破すればいいだけだ》

 

 ケイオスが尋ねてきたが、エリスは己の手の内を全て明らかにしない。

 魔王の言ってる通り、紋鎧獣に棒術が通用するかが不明だからだ。


 続いてキャリーが顔を覗き込んでくる。


「じゃあさ、じゃあさ! どんな魔法が得意だったりするの?」

 

「えっと……私、実は魔法が使えないのです」


「魔法が使えないの!? そ、それは珍しいね……」


「あ、あはは……私もなぜ使えないのかがわからないんです」


「でも大丈夫。私達全員の力を合わせれば、今回の目的も容易にこなせますよ、きっと」


「それぞれに事情はあるものだ。全部明らかにすることなんてなし! けれど、依頼に関しちゃお互いの実力を尊重し合うことができるよう期待してるぜ、皆!」


「言い出しっぺがちゃんとしてよね、ケイオス!」



 かくして、四人の共闘体制がここに成立したのであった。


 

◇ ◇ ◇ ◇



 テーブルの上に広げられた地図には、街の北東に広がる山の地形と、お目当ての魔獣の生息域が細かく記されている。

 ローナはその地図に指を這わせながら、魔獣の特徴や注意点を説明し始める。


「紋鎧獣は、この山の比較的高い場所に生息しています。ですが水場や渓谷のような岩が剥き出しの場所であるほど、潜んでいることが多いと言われています」


「小さな魔獣なのですか?」

 

「手のひらサイズの幼体から、大型犬程度のサイズまで様々です。ですが群れで行動することが多く、一匹を見つければ周囲に十匹以上はいると思ってください」


「十匹以上か……数の暴力に負けることのないよう、地形や配置には気をつけなくちゃな」


 ケイオスが顎に手をやりながら呟く。


「ええ。しかし、一匹一匹はそれほど強くありません。問題はその皮です。刃は通りにくく、打撃や魔法もほぼ効果がありません。……ですが、関節部分が弱点。そこを狙えば、比較的容易に無力化できます」


「細かい部位を狙うのは大の得意だよ! めっちゃ任せてね!」


「エリス。お前は今回、初めて紋鎧獣を狩猟するって言ってたよな?」


「はい……今回が初めてです」


「なら、まずはローナと一緒に動いてほしい。こいつは鑑定士としてだけじゃなく、採取の腕前も確かだ。教えるのも上手いから、エリスだったらすぐに剥ぎ取りの仕方を覚えられるはずだ」


「ケイオス、褒めても何も出ませんってば」


 ローナは照れくさそうにうつむいたが、その口元は少し緩んでいた。


「じゃあ、とりあえず各々の役割をまとめよっか!」


 キャリーが椅子の背にドサっともたれかかると、ケイオスとキャリーの話をまとめあげた。


「私とケイオスは前に出て紋鎧獣を気絶、または倒して行く。そのあと安全が確認でき次第、ローナはエリス一緒に皮の剥ぎ取りを始めていって」


「それとエリスにはローナの護衛と、採取した皮の運搬も任せたい……役割が多い気もするが、問題ないか?」


「ええ、問題ありません」


 

 作戦会議が終わり、四人は酒場を出た。

 蒼い空には、ちょうど天辺に達する位置に陽が登っている。


 依頼はおそらく一日では終わらないはずだ。

 野宿をしつつ、数日がかりで徹底的に集めるのだ。


「それじゃ、ちゃっちゃと出発しよ!」


 キャリーが嬉しそうに街の外へと走り出していく。


「エリスさん、一生懸命教えますので、一緒に頑張りましょうね!」


「はい、よろしくお願いしますね!」


 ローナがエリスの手をに握り、安心させてくれるように微笑む。

 エリスはその心遣いが嬉しくて、微笑み返した。



 一行は街の外へ繰り出していき、目標の山へと足を進めていく。


 ――再びこの街に戻った時には、大量の魔獣の皮を手にしていることを想像しながら。

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