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沈む皇室  作者: 弓張 月


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婚約記者会見3

一週間お待たせいたしました。

記者会見も最後になります。

違和感ありありかと思いますが、ぜひ読んでみてください。

記者は早く終わらせたいなと思うようになっていた。

これ以上話が長引くと収拾がつかなくなる。

東宮の、后宮からの関与はなかったという言葉には追加の質問もでず、あれ程週刊誌で「后宮様がじきじきに大和田家に出向いて頭を下げた」と書かれ、哲也が「三顧の礼を受けたので」と答えたという衝撃的な内容であるのに、記者達は見事に無視する。

そして「どんな家庭を築いていきたいですか。お子様は何人くらい」と質問を進めた。

幸子はうつむいて女性らしく笑っている。

東宮は張り切って言葉を紡ぐ。

「私自身幸せな家庭に育った経験を持つ者として、やすらぎのある明るい家庭を築いていきたいと思っております」

自ら「幸せな家庭で育った」と語る東宮にちょっといらついた者もいたが、黙っている。

東宮は続けて

「安らぎのある家庭というのは私達がこれから様々な公務を尽くしていく上でもまた、次代の子供達にとっても非常に大切なものではないかという風に思っています。

それからまた、これから先二人でもって様々な事をお互い学びあってそしてお互い高めあっていくこともぜひやってみたいと思います」

東宮がそっと幸子を促すと、姿勢悪く座っていた幸子はすっと背をまっすぐにした。

「あの基本的には東宮様のおっしゃる通りでございますけれども、私の言葉で一言付け加えさせて頂ければ愛情に満ちた温かい家庭という事だと思います。

そして特に苦しい時や辛い事があった時にお互いを労りあって助け合っていくことが出来るような家庭に出来ればという風に思っております」

幸子が照れたように笑うと東宮もどうしたものかという風に笑って

「次の質問についてですけれども・・・まあ、これはコウノトリのご機嫌に任せてという風に申し上げておきましょう」

東宮はこれぞ「粋」だと得意になっていた。

確かに「コウノトリのご機嫌に任せて」という言葉は流行りそうな気配ではある。

しかし、二宮が同じ質問を受けた時は愛しそうに菜子を見つめ

「何人にしましょうか」と尋ねた時ほどの情熱は感じられなかった。

あの時、菜子は逆に質問された事に驚き「それも・・宮様と相談して」とはにかんだように言った。

その可愛らしさに国民は熱狂したのである。

なのに、東宮の「やすらぎのある家庭」も幸子の「愛情に満ちた」も本で読んだセリフにすぎなく、少しも現実味がなかった。

そうこうしている間に、幸子が何か言おうとしたので東宮が「何?」という風に振り返ったのだが、ぶんぶんと首を振ると

「いえあの・・・実はその質問についてはあの・・多分あの、でるでしょうという事で、で、おとといお目にかかったときにだいぶ相談をしていたんですが、あの二人で答えが出ませんで。私、東宮様にお任せするという風に申し上げたんです」

その言葉に東宮は心から嬉しそうに笑った。始終幸子を見て心から本当に嬉しそうに。

しかし、幸子の方はセリフを言うのに必死で一切東宮を見ていなかった。

「ただ、一つだけこれだけはおっしゃらないで下さいと言った事がありまして。あの、それは東宮様が、大変に音楽がお好きでいらっしゃるんですけれども、家族で・・」

ここで幸子はくしゃっと笑った。

「オーケストラを作れるような・・あの・・・ような・・その子供の数というようなことはおっしゃらないで下さいねと申しました」

これは大変に二人にとってはウケに受けたセリフらしく、東宮は声を出して笑った。

しかし、笑っているのは二人だけで、記者たちはウケるどころか引いてしまった。

もう何と形容したらいいのかわからない程白けていたのである。

「オーケストラ」とは大きく出たものである。

今の時代10人に2人は不妊と言われているのに、一人産むのも結構大変なのにオーケストラとは。

幸子は自分が出産する身だという事を考えていないのではないか。

記者達はそれぞれ目くばせし(次いけよ)という風に促す。

もっとオーケストラについて色々質問が出るのではないかと思っていたのに「交際が中断した時の気持ちは」と聞かれたので東宮も幸子も真顔にならざるを得なかった。


「この件につきましては富強化学の問題もありまして慎重論が出ておりまして一時は中断することもやむを得ない状況となってしまいました。

またその間、こちらのほうも外交官としての研修中でもあり、外交官としての仕事を続けたいという意向もありましたし、色々とマスコミの取材攻勢等ありまして、なかなかお互いに静かな環境のもとでもってゆっくり話し合うという機会が取れなかったように思います。ただ私としてはその間常に幸子さんの事が念頭にありまして。本当に幸子さんではという事を何回となく宮内庁の方に申し入れを致しました。ただそうはいっても私としても私自身の気持ちというものも大切にしたいと思いますけれども、周囲の意見も考え、これもまた大切にしたいと思っておりましたので、昨年、周囲の意見が幸子さんでいいという意見に固まった時には大変うれしいものがございました。幸子さんが大変な時には自分が全力でもって守っていこうと思います」

記者会見は大幅に予定時間をすぎ、終わった時にはみなへとへとになっていた。


ぞろぞろと記者会見場を後にするマスコミの連中に笑顔はなかった。

「これから全文書き起こしだぜ。参ったな。本当によくしゃべる女だよな」

「東宮様は尻に敷かれるな。間違いない」

「全然日本語が理解できなかった・・何でだろ」

様々な感想を元に帰っていく。


テレビを消して帝は頭を抱え込んだ。

「何とも私には理解しかねる。后宮がいいといういうから承知したものの心配でならん」

帝は疲れ切ったようにおっしゃった。

「二人がよければいいのです。二人で心が通じあっていれば」

后宮は微笑んでそうおっしゃった。

「私には賢い娘には見えん。学歴は高くとも話がさっぱりわからん」

「そうですか?私にはわかりましてよ。これから先の事は私達が見守って教えて行けばいい事です。秋月宮もそうではないですか」

「二宮と菜子は非常に仲が良く相性がよいように見えたがね」

「それは所詮は東宮ではないという事なんです」

后宮はきっぱりとおっしゃった。

「立場が違えば妃も変わります。今どきあれ以上の学歴を持つ女性がいますか。しかも外交官ですよ。東宮妃にふさわしいに決まっています」

后宮ですら「外務省勤務」と「外交官」の違いを理解していなかった。

でもそんなことはどうでもよかった。

東宮がこのまま40になるまで独身などという事があってはならない。

それに。

大和田哲也は約束してくれた。

「この結婚をうまく取り計らって下さったなら、后宮様が熱望されている海外旅行のおぜん立ていたしますよ」

即位してからというもの、回りの目が厳しくなっているのは確かだ。

東宮時代は民間施設での夏の静養やスキー旅行なども楽しめたのに、即位したとたんに

「御用邸があるのになぜ民間施設に宿泊するのか」と宮内庁から意見が出て、さらに週刊誌にも度々取り上げるようになった。

さらに近場の訪問はあってもなかなか遠くへの親善訪問が調整できない。

バブルがはじけ、世の中が不景気に向かって急速に落ちていくのを感じつつも、それとこれとは話が違うと后宮は考えていた。

先帝の御代、散々「民間出身」であることを揶揄され、海外でも似たような扱いを受けた事もあった。

それゆえにきちんと后宮になった今、改めてリベンジしたいだけなのだ。

紆余曲折あっても、幸子との縁談はまとまった。

富強化学社長の孫娘であるという汚点はあるものの、それをしりつつ受け入れるのだから少しは分をわきまえるだろう。何かあってほじくり返されたら困るのはあちらなのだから。

秋月宮家には理子が生まれた。もし男子だったらと思うと今も震える気持ちだ。

東宮には一日も早く結婚式を挙げて、そして世継ぎを儲けて貰いたい。

その為にここまで頑張って来たのだから。

東宮の結婚はすなわち、后宮の勝利でもあったのだ




今回も読んで頂きありがとうございます。

東宮の失言が多いですね。

まず「外交官」ですし、誰も聞いてないのに「富強化学」を持ち出したこと。

自分から彼女はふさわしくないと言っているようなものだと。

相手からの質問をきちんと理解する能力に欠けているんですかね。

「中断した時は」と聞かれたら「縁がないのかと持って悲しかった」ですむのに。

わざわざ問題発言するとは。

さあ、皇族方はどのような反応をするのでしょう。

后宮は嬉しそうでしたけどね。

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― 新着の感想 ―
返す返すも口惜しいですね。帝と皇太子の不明が。2代続けて私利私欲に生きる俗人を娶ってしまわれたことが。そのお立場でそれを為されば、艱難辛苦に喘ぐのは大御宝たる国民なのに。……などと呟くと「ネトウヨ、キ…
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