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沈む皇室  作者: 弓張 月


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宮様方のお怒り

今回もよろしくお願いします。

この所、皇室に関する古い情報が小出しに出て来てくれるので、今更「そうだった」みたいな感慨があったりします。

戻れるならバブルに戻りたいですよね。

大和田家と皇室の食事会は終わった頃、雲井宮邸に電話が入った。

それは大瑠璃宮妃からのもので、今すぐ彩子妃に屋敷に来るようにというものだった。

「彩ちゃん、これって何だかいい話ではないみたいだね」

宮が心配そうに彩君を見る。

「そうですわね」

「やっぱり僕らだけ招かれたのが・・ダメだったんだよね」

「そうですわね」

今更そんな事を言ってもしょうがないのに。

「殿下もご一緒されます?」

「え?嫌だよ。僕はまだ研究があるし犬たちの散歩もあるし」

「それでは私、出てまいりますわ。お夕食はどうなるかしら。とりあえず侍女に申し付けておきますので私が遅くなったら先に召しあがって」

「うん。行っておいで。あのね。何でもはいはい申し訳ありませんっていうんだよ」

雲井宮のアドバイスにうんざりしながら、彩君は車に乗った。


大瑠璃宮邸にはすでに高砂宮妃や春日宮妃も来ていて、いつもの如くお茶とクッキーでお喋りに花を咲かせていた・・・とはいっても、いつもと雰囲気はだいぶ違っていたが。

彩君が通されると、まず菊君が

「まあ、彩君、まっていたのよ。こちらにお座りなさい」とあいさつも録にさせず自分の隣をあけた。

「ごきげんよう。大瑠璃のおば様には大層ご機嫌よ麗しく・・」

「麗しいわけがないよ。彩君」と車いすに乗ってティーカップを持ちながら低い声でおっしゃる。

(最悪)

と彩君は思い、居住まいを正す。

「まあまあ、とりあえず紅茶を。フォートナム&メイソンのお茶よ。大瑠璃の御姉様はとても高級品がお好きでいらっしゃるから」と春日宮妃はちょっと意地悪な感じで言った。

「贅沢で悪うございましたね。千代君。あなたのように子宝に恵まれていないからついお茶とかお花とかくだらない方に目が行くのよ」

「そんなつもりは」春日宮妃は黙った。

「ちょっとお姉さまも、千代君も争っている場合ではありませんよ。彩君、あなた、東宮妃に内定した大和田家の方々とお食事をされたんですって?」

「はい」

「皇居で。主催は陛下?」

「はい」

彩君は悪い事などしていないのについつい言葉が途切れがちになる。

「やっぱりそうなのね」と大瑠璃宮妃がドスの効いた声でおっしゃる。

「これは一体どういう事なんだい?帝と后宮は何をお考えか。彩君はわかるでしょう」

彩君は冷や汗をかきながらしどろもどろになる。

これでは「はいはい」では済まされない。

「申し訳ございません。実は私達は何も知らされていなかったのでございます」

「知らなかった?」

今度は菊君が怒った。

「しらなかったってどういう事かしら?そもそも大和田家の娘は富強化学の会長の孫でしょう?未だ解決していない公害病を引き起こし、訴えた患者達に「腐った魚をたべるからだ」とか「貧乏人め」と言って、暴力団を雇って大変な騒ぎを起こしたのよね。そういう家の娘をなぜお認めになったのか」

(それは帝に直接聞いて下さい)

と彩君は心の中で訴えていた。

菜子妃が秋月宮妃に内定した時も、同じように皇族と菜子の家とで食事会を催したが、そこには大瑠璃宮妃を始め皇族方が全部そろった盛大なものだった。

なのになぜ今回は雲井宮夫妻と秋月宮夫妻だったののか。

宮妃方はそこが不満らしいのである。

「私も、あの娘が東宮妃に内定と決まった時には驚いたものです。だって桃園家の令嬢と見合いをしてほぼ決まりと伺っていましたので」

「知ってるわ」菊君はさも情報通のように言い始める。

「東宮は面食いなのよ。とにかく目が大きくて彫りが深い顔じゃないとダメな人なのよ。后宮の教育はどうなってるの?顔で人を選ぶなんて」

「で、なぜ今回はあなた方と秋月宮家だけだったの?」

「さあ、私達はさっぱりわかりませんけど」

「けど、どうなの?」

「あちらの方々は・・・正直無礼というか不遜というか。とても外交官一家とは思えませんでした」

「どういう事?」千代君も興味津々だ。

「帝に対して恐れ多いという感情がないのですわ。何やら弱みでも握られているように口が重くいらして。ですからとても会話が弾んだというわけでは。秋月宮家のようにほのぼのとした雰囲気はなくて、東宮とあの娘はよそよそしい。そうそう、姉妹3人が固まってくすくす笑っているので驚きました」

「くすくす笑った?」

大瑠璃宮妃の目が鋭くなった。

「なぜ笑ったのです?」

「何やら3人だけでお喋りして笑っているのです。これでは将来の背の君を無視しているような嫌な感じがいたしました。私が思いますにそういう所を見られたくなかったのと、大勢の食事を急に用意する事が出来なかったことが原因ではないかと」

3人の宮妃は頷いた。

「大殿下が大層お怒りですの」

千代君が怯えたように身を震わす。

「この結婚には反対だって」

「春日宮が怒るとはね」

普段は穏やかで知られる春日宮だったが、実は内側には非常に大きな怒りの導火線がある事を知っているのは千代君だけだった。

「そうなんです。自分達に事前の知らせもないまま内定した事にものすごく怒っていらして、なだめるのが大変でしたわ。うちは淳仁家も韓駒家もありますしね。皇族に根回しをせずに事を決めるなんて、帝は自分達を馬鹿にしているのかとそれはもう・・・・」

「こういう時は未亡人でよかったと思うわ」

と菊君が言った。笑えない冗談だった。

「后宮はその地位についた途端、やりたい放題を始めたわね。あの大人しく冷静な帝がわがままを言うはずないもの。すっかり洗脳されてしまって。でも目的はなに?わざわざ家柄の悪い娘を東宮妃にするのはなぜかしら」

「決まっていますよ」と大瑠璃宮妃は紅茶を一口すすってからおっしゃった。

「自分より身分の高い娘はお嫌なの。まして旧皇族の娘なんて本当に嫌だったのよ。あれだけ悪評の高い家から迎えたら自分が支配できると、そう思って居るのでは?」

さすがに年の功だ。

「でもおば様」と彩君が少し反論する。

「彼女は3か国が出来て外務省のキャリアウーマンで将来は総理大臣にもなれるという触れ込みです。私が実際に会った時はそれほど頭がいいとは思えませんでしたけど」

「后宮が大好きな学歴主義なの。でも女は学歴ではないわ。努力と忍耐、そして可愛げが一番。今どき外国語が出来るからどうだというのかしらね」

大瑠璃宮妃にかかると全部ばっさりと斬られてしまう。

「私はね。秋月宮が結婚した時、職員宿舎をあてがった事にも怒っていますよ。仮にも筆頭宮家で菜子は素晴らしいお妃だわ。結婚一年目で一女をもうけた。このままいけば親王の誕生だって夢ではないわ。何といっても若いし、健康だし。なのに、なぜあそこまで差別するのかしら。后宮は自分の息子が可愛くないのかしらね」

それは彩君も思って居た。

てっきり屋敷が建てられるかと思ったら築40年の職員宿舎である。

あまりにも気の毒だった。そうはいっても自分たちが首を突っ込むわけにはいかず。

「だからね」と大瑠璃の宮妃はおっしゃった。

「私はいずれ結核予防会の総裁の座を菜子に譲りますよ。あなた方も覚えていて。菜子は本当に素晴らしい妃なの。后宮に叱られても決してめげないし、常に明るいし。これ以上の人材はないわ。二宮は本当にいい娘と結婚したわ。

そしてね。私が死んだらこの屋敷を秋月宮家に譲ろうと思います。ええ。必ず譲るわ。これだけは后宮の好きにはさせなくてよ」

大瑠璃宮妃の目には鋭い光が宿っていた。


「お姉さまのおっしゃる事は承知いたしました。そうなるよう私も働きかけます」

と菊君がおっしゃり

「私も菜子妃が好きですよ。古風な娘でしかも修学院の卒業生でね。宮との仲のよさも大層気にいっています。でも私も気がかりと言えば蓮宮がいるのよ」

菊君が声を落とした。

「后宮がああいう人でしょう?旧皇族も旧華族もそれだけでご縁を持ちたくないと。これで桃園家の話が広がったら終わりね。蓮宮は家柄のよい所に降嫁出来なくなる。早くしないといけないのに」

菊君は二宮と蓮宮をことの他気に入って、よく邸に招いていたし二宮には習字を教えていた。

そういう縁を持つ事も、后宮にとっては気にいらないのかもしれない。

「今更遅いけど、でも大和田家との婚姻は皇室に闇を作るわよ」

大瑠璃宮は遠い目でおっしゃった。

「私達は早く死ぬから関係ないけどね」

今回も宮妃達のおしゃべりで始まりました。

自分としてはこの4人のお茶の時間を描くのが楽しいのですが。

そうはいっても嵐の前兆に過ぎないのです。

次回もよろしくお願いします。

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