ルズベグの提案2
前話
オーガを領地に保護したいと言うルズベグ
あっけにとられて、しばらく沈黙が生まれていた。
「創世教はオーガに対しては容赦なく弾圧をしていると聞きましたが、そのような活動が許されるのでしょうか」
「はは、オーガの方から聞いたんですよね。昔であれば事実です。ですが、時代も変わりますし、なんなら私も変わってるんですよ」
やっと声を出した俺に、ルズベグはにたりと笑う。
語るに落ちてしまった感のある俺だが、もうルズベグもわかってしまっているし、否定せずともいいだろう。
「森や山の奥地へ、ひたすら逃げていく相手をどこどこまでも追いかける、または殺し合いをする……そんな任務、ハヤト様ならやりたいですか?」
ルズベグはだんだんと口調が軽くなっている。おそらく、こちらが素なのだろう。
「やりたくないですね」
「組織の人間なんで、命令されたらしょうがないですけどね。でも討伐しなくても、人里にオーガが来なくなれば、結果的に一緒のことなんです」
「昔、オーガは強制労働をさせられたと聞いてますが、それと似たようなものでしょうか」
ルズベグははっきりとゆっくりと首を横に振る。
「そんなことして早死にされたら、こちらも旨味がありませんよ。コルカラ島はオーガだけしか住んでませんし、生活用品補充と作物回収の船は私の使用人しか乗ってません。全部高く売れる作物ですので、オーガたちもひっそりと、不自由しない暮らしをしてもらってます。理想郷だなどと感謝してもらったりもするんですよ」
にわかには信じがたい話だが、ルズベグの話はリアリティがあり、嘘をついている様子は全く感じられなかった。無言のままでいる俺に構わず、ルズベグは説明を続ける。
「だいぶ人数も増えてますが、まだまだ島には手がまわってないサフラン畑もありますし、増えるのは大歓迎ですよ。もちろん、着ていた服などは交換させてもらって、教会本部には証拠品として提出します。『現地で皆殺しにしました』と言ってね」
ルズベグはわざとらしく悪人の顔をしてみせる。
「そんな話を後ろの兵士たちに聞かれても構わないんでしょうか」
「密告しても旨味がないばかりか、引き続き森の探索をさせられます。それなら私の口止め料をもらって、酒や女でもやりたいのが人間ってものでしょう。まあもう一つ言うなら、たとえ密告されても儲かってる私は本部の上の人間と懇意にしてますからね」
ルズベグは後方をみて笑う。
兵士もうなずいたり、にっこりしたりといった反応だった。
「私は領地の労働力と名誉、教会は威光、兵士は口止め料、オーガたちは安心して幸せに暮らせる環境、皆様が得をします」
ルズベグは両手をゆっくり自身の胸に当て、それから子供を抱擁する直前のように腕を広げた。
「さて、日が落ちるまで時間もあります。よかったらオーガの代表の方にお話を取り次いで、こちらにお連れしてもらえませんか? 不安だと思いますので、兵士は大半を西側に移動させておきます」
「……どうしたもんだろうか」
少し距離があるルズベグに聞こえないよう、小声でみんなに聞く。
「嘘だと思うなあ」
「信用しないほうがいいと思います」
「受けないにしても、ここで断るのはよろしくないのう」
同じく小声で返してくれた皆の反応は、良くないものだった。
「待っててくれ。話を聞くにしろ、断るにしろ、今日中にここにもう一度戻って来る」
「ありがとうございます。お待ちしてます」
ルズベグは会ったときと同じように、爽やかにほほえんだ。




