接触
前話
対策会議
「お初にお目にかかります。私はブレメン本部所属の神殿騎士、オレツァ・ルズベグです。今回の探索隊の隊長を務めております」
金髪碧眼の赤い革鎧を装備した指揮官が折り目正しい自己紹介をした。
「ハヤト・フジです。探索していたのは俺たちのことでしょうか」
「そうです。それと、この奥にあるオーガの集落も訪ねるつもりです」
隠すつもりを全く感じない口調だが、そのにこやかな顔の裏にある真意は俺には全く読めない。
付近のたき火からは、黄色の煙が勢いを衰えさせることなく立ち昇っていた。
話は朝に戻る。
夕方の接触予定日の朝、偵察役のアオイさん以外はそれなりにゆったりと朝食をとった。
「早くから全力で張り詰めすぎてもいかんわい。競馬と一緒じゃよ」
人生を落馬した那須じいが言っても説得力がないように思う。
朝食後はイカダでドルバ河を渡るシミュレーションをした。
藤家では猫は完全室内飼いだったため、猫はどの子も肉球がふにふにしていた。
イカダに乗ってトラ美が引っ張るとき、ヒガンマスの毒の牙で噛まれるんじゃないかと思っていたが、心配無用だったようだ。
「たくさん外を歩いて、肉球がそこそこ硬くなってるから心配ないにゃ」
水しぶきをあげながら河を渡るトラ美と、引っ張られるイカダに乗ってはしゃぐ子供たちを見ていると、危機が迫っていることを忘れてしまう。
もしものときは河を渡って王国側の森に移動するかもしれない。
しかし、国として機能してなさそうな王国の国境など、大陸一の強国である帝国には意味をなさない可能性もある。
大軍を差し向けられるようだと、ゆくゆくは森にいられないだろう。
「創世教か」
「敵にするには大変だよね」
俺のつぶやきの意図を察した八木ちゃんが隣に座ってきた。やはり俺は考えてることがわかりやすいらしい。
「大きな勢力だし、天使の依頼的に血なまぐさいことも避けたいし、かといって放置もしてもらえない。どうすればいいんだろうな」
「諦めてくれるまで逃げまわるとか?」
「トラ美の猫ぱんちが火をふくにゃ」
「ボクの毒で偉い人を暗殺するにょろ」
「帝国からできるだけ離れるのもいいかもしれんぞい、遠方にはエキゾチックな魅力の馬も待っておるじゃろう」
ろくでもない意見のようで、那須じいの言ってることはなかなか悪くないなと考えた。
創世教としても『地の果てまで追って殲滅したい』とまで思っているわけではないはずだ。ひょっとすると、今日会って話をすることで何か糸口がつかめるかもしれない。
「じゃあそろそろ出る。連絡役以外は少し河辺寄りで待機しておいてくれ」
「トラ美様もいらっしゃいますし、心配は要らないのでしょうが、人間は何をしてくるかわかりません。お気をつけて」
「ハヤトさん、……気をつけて」
明るく送り出すセフと心配そうなオーセを残し、昼には集落を出た。
あまり意味があるとは思えないが、一応人間か動物モードに変わり、獣人の姿は見せないようにした。
日が陰り始めた夕暮れ時を選び、集落にまっすぐ向かってくる七人組の目の前に進み出る。
鷹はすでにこちらの姿を視認しており、二百メートル以上前から忙しく鳴き、七人組の元に戻っていた。
そのためか、七人組は少し開けた土地でたき火を準備しながら、こちらをまっすぐに見据えて待機していた。
「こんにちは、我々は敵ではありません。どうかこちらの指揮官のお話を聞いていただけませんか。すぐにこちらに呼びますので」
猫耳を隠した八木ちゃんの姿なので、最初から攻撃してくる可能性も考えたが、相手は友好ムードだった。
距離をとったままで呼びかけに同意すると、七人組はたき火に黄色の玉をくべて、冒頭の状態にいたる。




