オーセの結婚観
前話
クサガモ捕獲に成功
連日の獲物や採集で食材は豊富だったため、昼からは集落でのんびりと過ごした。那須じいは相変わらずオーガの訓練を熱心に指導している。
オーガの子供たちに作ってあげたシャボン玉セットは好評のようだ。
石鹸水にグリセリンを混ぜ、つるで作った輪っかをつけて空中を泳がせると、子供たちは目を輝かせながらはしゃいだ。
ちなみにシャボン液を入れているタライもSMグッズだが、本来の用途は聞かないでおいた。
ステンレス製のため、鍋としても使えるこのアイテムに、ここまで気づかなかったのはもったいなかったものだ。
「こら、喧嘩するな! 輪っかをそれぞれ作って順番に使えばいいだろ!」
オーセは牧草の上に寝転んでいる俺たちの隣に座って、子供たちを見守っていた。
「子供たちも最近本当に楽しそうで、これもハヤトさんたちのおかげだ」
「だんだん雰囲気が良くなってきてるな」
「今まで先行き不安しかなかったからさ。今はこれからのことを話すのも明るくてね。南組が集落に合流してから二組の新婚夫婦ができてたんだけど、やっと幸せそうにしてて……」
「オーセさんは結婚してなさそうだけど、いい人はいるの?」
八木ちゃんがずけずけと質問した。
「う、うちは独身だし、決まった相手もいない。今、大人の男オーガはセフ以外、全員奥さんがいるからさ。当分ないよ」
「そ、そうなると……今、そこで遊んでる男の子が大きくなってからってことでしょうか?」
心なしか、アオイさんの目が輝いているが気にしないことにしよう。
「そうかもしれないね。あと、あってほしくはないけど、奥さんに先立たれた男の人がいたら、次の奥さんになるっていうのも考えられるかな」
「一夫一妻制なんだな」
「そうだね。兄妹揃って独身だからさ、『一組の新婚夫婦が別れて、夫がオーセと、妻がセフと結婚しなおしたらいいんじゃないか』ってこないだ父ちゃんに言われたよ」
「えー、自由恋愛婚ってわけじゃないんだね」
「昔はそうだったらしいよ。でも集落の人数だって限られてるし、力をあわせて生きていくってなるとね。なるべくあぶれがないように考えるもんなんだと思う」
不満そうにほほをふくらませる八木ちゃんを見て、オーセは苦笑いしながら言う。
「でも新婚は二組とも仲がすごくいいし、セフもうちもすぐに結婚しなきゃって思ってるわけじゃないからさ。その話は全員でお断りしたよ」
「なるほどー、じゃあ強制的ってわけじゃないんだね」
「そうだね。以前はうちも、そういうのを組み合わせとしか思ってなかったかもしれないけどね」
オーセは少し遠くを見ながらつぶやくように言った。最近のオーセは何かと思慮深げな空気になることが多い。
「ということは、今は『恋愛結婚をしたい』と考えてるってことですよね」
「そ、そういうことになるのかな……」
「そう考えるようになったきっかけって何なのでしょうか?」
「いや、特にそう、いうのも、ないんだけどね。はは……」
なぜか歯切れの悪いオーセに次々と質問するアオイさんは、どちらかというとSっぽく見えた。




