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求愛給水

前話

クサガモ情報

 今朝も日課の感触で目が覚めた。俺に覆いかぶさっている八木ちゃんと目が合い、起床の挨拶をする。


「おはよう」

「おはよう、ハヤト君」


 八木ちゃんはそのまま俺の唇を舐め続けている。寝巻きが真っ白な襦袢なせいか、背徳的な雰囲気だ。


「もう起きた」

「うん」


 やめる様子がない八木ちゃんだったが、ふと俺の下半身にも何やら感触があることに気づいた。


 八木ちゃんを横にずらして自分の上半身だけを起き上がらせる。

 感触の犯人は、腰をすり寄せてきているアオイさんだった。


「おはようございます、ご主人様」

「おはよう」


 俺が起き上がったことに気づくとアオイさんは、右手の人差し指を自分のほほにあて、青い光を一瞬出す。

 ほほが少しぷくっとふくれ、ゆっくりと顔を近づけてきた。


 俺に口付けてからもそのままぐいと押してきたので、後ろに倒れて再び横になってしまう。


 角度が地面と水平になったところで、アオイさんの口からゆっくりと水が流れ込んできた。


「んむっ」


 驚いた俺だが、いつのまにかアオイさんの両手は優しく俺の顔に添えられていて動けない。

 そのままゆっくりと流れ込んでくる水を受け入れている間、断続的にごくりごくりと水が喉を通る音が響いた。


「むむっ、これは妻として見過ごせない!」


 口内の水を移し終わったアオイさんは、まだ水がしたたっている唇を開いて、八木ちゃんに言う。


「これは、ピピちゃんの求愛行動です」


 生前のピピの俺への求愛行動は激しく、お尻をこすりつけてくるだけではなかった。

 俺に見せつけるように餌を吐く、求愛給餌と呼ばれる行動もしょっちゅうだった。

 ちなみに餌を吐くのはインコの『プレゼント』らしく、本来はオスがメスにするものらしい。


「私としても、ご主人様のコップにされるなんて……幸せすぎておかしくなってしまいそうです」


 普段よりもっと桃色に染まったほほを抑えて嬉しそうにつぶやいた。


「もう充分おかしいと思う」

「そうだよ! 正妻として遺憾の意を表明したいよ!」


「うふふ、じゃあ八木さんもおかしくなっちゃいましょうか」


 再び青く光る指先を、今度は八木ちゃんにあててアオイさんはほほえんだ。


 ほほが膨らんだ八木ちゃんはさきほどの抗議も忘れ、同じように俺に口付けて、じわりじわりと口移ししてくる。



 前世で父が言っていた「寝起きに水を飲むのは健康にいい」という言葉を思い出す。


 そう、俺は健康のためにゆっくりと朝を過ごした。



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