訓練風景
前話
八木ちゃんの正妻感
「声じゃっ!」
「「「ワン、ツー! スリッ、フォ!」」」
「声を出すんじゃっ!」
「「「ファイッ、シクッ! セブン、エイッ!」」」
「これは何をやってるんだ……」
那須じいのかけ声にあわせて、オーガたちがスクワットをしている。
問題は着ていた服だった。
オーガたちは普段、葛のつるをふやかして繊維部分を布にしたものから服を作っている。
しかし目の前に広がる訓練風景では、オーガの男たちは全員レスリング選手のユニフォームを着ている。
明らかにサイズも小さくピチピチで、とんでもなく食いこんでしまっていた。
「トレーニングだそうです。動きやすい服がいいだろうって」
「SMグッズとレスリングのユニフォームがどう関係あるんだ」
コスチュームのみならず、SMグッズの幅広さはちょくちょく想定していた範囲を超えてくる。例えば携帯オーラルケアセットで、歯磨きとマウスウォッシュまで俺たちは日常使いしているのだ。
「男性同士のSMの場合に需要があるコスチュームだそうです」
「あっそう……これ以外に、なにかいいのはなかったのか?」
「私はアメリカンポリスか軍特殊部隊がいいなと思ったんですが、サイズはどうしてもご主人様のものが出てきてしまうんです。ですので、伸縮性がない衣装は大きなオーガさんたちには着ることができませんでした」
「そりゃあ入らないよな」
なんせ俺は小柄なほうで、SサイズかMサイズだ。オーガたちは確実にXL以上だろう。
「トレーニング中以外はこれをお渡ししようかと思ってます。たけがすごく長いですし、パンツもゆったり感があるので入ると思います」
次にアオイさんがだしたのは黒の特攻服とボンタンだった。背中には金糸の刺繍で『夜露死苦』か『愛羅武勇』の文字が輝いている。
「……あいかわらずこの服とSMの関連性がわからないが、オーガたちが着るとすごく迫力がありそうだな」
「女性陣はわたしとサイズが変わらない人が多いので、選択肢は多そうです。どれがいいでしょうか?」
アオイさんはたしかに長身ですらっとしている。
ナース、花魁、メイド、ベビードール、バドガール、さまざまな服装を見せてくれた。
俺は一番露出が少なく、汚れにくそうでもあったボンデージの上下一体型を選んだ。見た目はライダースーツだが、フジコスーツと名付けよう。
「わかりました、私も次回はこのコスチュームにしますね」
「違う、俺の好みで選んだわけじゃない」
胸元のジッパーをお色気悪女のごとく下げだしたアオイさんを止めていると、那須じいの声が響いた。
「終わりじゃ! 皆の衆! お互いを讃えようぞ!」
「「「ビクトリイイイイイイイイイイ!」」」
オーガたちは歓声をあげながらハイタッチをしていた。
まあ楽しそうなのはいいことか。




