そして北上
前話
牢屋から逃走
町を出た後、荷車も無事に回収できた。夜を待つ間、那須じいが森を突破させておいてくれたらしい。
俺達は北街道をそのまま北上し、深夜になった頃、東に広がる森に少し入り込んで野宿をした。
起床後はすぐに食材探しとなった。
「朝飯前にゃ」
トラ美は十分ほどで、カモシカを仕留めて帰ってきた。那須じいには鹿狩りの経験があったため、ナイフだけで血抜きは問題ない。
「よかろう、あとは水シャワーでしばらく冷やしておいてくれるか」
「任せるっピー!」
ピピのシャワーはとんでもなく便利で、今では無しの冒険など考えられない。来る前には「手がかかりそう」などと、考えていて申し訳ないと思う。
「肉だけじゃなくて、果物とか木ノ実とか、食べられそうな野草なんかも欲しいところだな」
「ピピも肉だけは嫌だっピ!」
血抜きの間に、そこらに生えている野草を炒めてみたり、水にさらしてみたりした。キュアが使える俺が即死したりするような事があってはいけないので、那須じいメインで食わせてみる。
「ヨモギに似てるな。これはいけるんじゃないか?」
「ぶっ……これは苦いし、葉脈も筋ばってて食えたもんじゃないわい」
「これなんて茄子そっくりだよ! やっぱり那須おじさんは茄子を食べないとね!」
「にがっ! しびれるぐらいに苦いぞい!」
「変な形の芋にょろ! 森の中のどこにでもあるにょろ!」
「おぅ…うぇあ…」
「ハヤト君! 那須おじさんが痙攣してる!」
「春の七草のセリにそっくりです。これは大丈夫なんじゃないでしょうか」
「あゔぇえ…」
「じじいが呼吸困難になってるにゃ」
ここに来てようやく、キュアが役に立ち出した。
結局、美味しく食べられる植物は見つからず、焼肉で腹を満たした。
八木ちゃんは肉だけでも不満はないらしく、那須じいはもともと牧草のみだったが、ピピはやはり穀物が食べたいようで、鳥の姿で麦畑の穂を直接食べに行っていた。
やはり体にあった食べ物は大事だ。その点では、おれも野菜をなんとか手に入れないといけない。
腹ごなしは恒例の、今後についての話し合いだ。
「北の街道沿いにある町だが、一つ目はスルーだ。東の森の中を進む」
「さすがに警戒されてそうですもんね」
「二つ目以降の町は、入り口の様子を見る。警戒されているようなら、さらに北に行くかもしれない。どのみち首都は北の街道の先にあるからな」
首都に着くまでには、ほとぼりも冷めているだろう。
「街道を進むのは、明け方と夕暮れ直後だけにした方がええの」
明るいうちは街道も通行が多く、軍隊じみた一行が張り詰めた雰囲気で巡行しているらしい。
街道から外れた事情を知らない集落あたりで、昼の間に野菜の交換をしておきたい。
昼過ぎ、俺達は農家が散在する集落の様子をうかがっていた。
「どんな様子だ?」
「特に変わった感じはしないっピ! のどかな農家って感じだっピ!」
「街道からは少し外れてるし、大丈夫そうだね」
「ふふ……待ちきれません」
今から襲撃しようかといった雰囲気だが、これは世直しの冒険である。手荒な事はするつもりはない。したい事は肉と毛皮をそれ以外にトレードする事だ。




