第13話 修羅場。
「賢者さん。その女、どっから拾ってきたんですか。」
朝一で戦士ちゃんがまたも光り輝く拳を握りハイライトを失った「お兄ちゃんどいて。そいつ殺せない。」的な雰囲気の瞳で俺を見据えている。
もう、殺意しか感じない。多分俺は今日死ぬ気がする。
妹ちゃんは傍観してるし、西のギルマスちゃんも死んだような目で手のひらに火球を生成しだしてるし、お前いつの間に来たんだよな皇国ギルマスはニコニコしている。
「イヤァ…本当にモテる男はつらいねぇ。
まぁ、猫には私と君の身に何があったかは思念伝達で先ほどここに来るまでに全て伝えたんだがね。
それでも、仕方なかったとは言え、君の唇を奪った事と君が私と同じベッドで眠っていた事実などが受け入れ難く、怒りと憎しみでいろいろと拗らせてるらしい。」
「あー、オレのご主人様は女たらしなんですねぇ。なるほどなるほどー。」
こらそこ納得しない。
「俺だってよくわかんないんだよ…。
なんかこう、気がついたらこうなってたと言うか…。
昨日のアレは…、そのつい、甘えてしまっただけで…。
魔女さんも他のみんなにも…ごめん…。」
「イエー。イインデスヨー。ドウセワタシハムネノサイズモネンレイモチュウトハンパデスモノー。」
わー、戦士ちゃんがだいぶ怒りで壊れてるー。
「その…。賢者様は一番好きな人は誰なんですか!」
誰…とそんなストレートに言われても…。
正直俺もよくわからない…。
確かにその場のノリでギルマスちゃんと魔女さんの2人に対しては些か進みすぎた気もしなくはないが…。
そう考えると、この2人からしたらやっぱり大人の女の人にしか興味が出ないの…とかなるのか…。
いやでもこの子達の年齢的には本来それが正しいはずだし…。いやでもこの世界では12歳で成人らしいから、彼女らにとっては自分自身は大人なわけでそうなると…。
「おやおや、あまりに難しい質問するからパンクしちゃってるよ彼。」
「実際、魔女。あなた様は彼のことどんくらい好きなのにゃ?異世界人だから好きなだけじゃないのにゃ?」
「いやぁ、まぁ…。最初はそうだったはずなんだけどねぇ…。
夜までの数時間の間でどうしてここまで彼のことが好きになったのか、自分でもよくわからないくらい今はたまらなく好きなんだよ。
ほんと、愛おしく思うよ…。私も誰かに取られたらと考えるとつらいくらいに…。」
「そこは、にゃーも同じにゃ。
だから色々と報告を聞いてすっ飛んできたのにゃ。彼の身に何かあったらと…。
てか、なんでアーマードドラゴンがまた現れたのにゃ?
あの時出た個体を仕留めた後は巣も探し出して、幼体や卵も破壊したはずにゃ。」
「そう、それなんだよね。不可解なんだよ。
アーマードドラゴンどころか、ここ最近では龍種の出現自体がほとんど報告がなかった。
それなのに希少種のアーマードドラゴンの出現に加え、魔力無効スキルまで保有していると言うのはかなりの異常事態だ。
ひとまず、出現ポイントに私の研究機関の連中を向かわせて見ている。
何かしら痕跡が見つかれば良いんだけど…。」
「と言うとにゃ?」
「君の国の近くの初級ダンジョンに中級ダンジョンボスレベルのミノタウロスが出た件も引っかかっていたんだよ。
あのダンジョンにはそもそもそんなやつ1匹たりとも出たことがなかっただろう?
それが急に現れた。
ダンジョンの生態系が変わったのか…はたまた何か別の要因なのか…。
そこに関しては君のところではどうだったのかな?」
「そうだにゃ…。ひとまず遺体の回収に向かわせた連中からは特に異常はなかったと報告を受けているにゃ。
ただ、いくら初級ダンジョンとはいえど、
あまりにも敵が出てこなくて、まるでただの洞窟のようだったと報告を受けているにゃよ。」
「なるほど…。皇国のギルマスはどう思う?
と言うかいつの間にか恋バナからちょっとした会議になってきたね。」
「そうですねぇ。実を言えばわたし達皇国ギルドの登録冒険者達が、修練場代わりに使ってきていた上級ダンジョンなのですが、最近そこにポツポツとレッサードラゴンやランブルボアなどの中型ボスモンスターが急激に増えたんですよ。
まぁ、うちの連中は脳筋が多いのでトレーニングが捗ると大喜びで討伐してくれましたけどね。
あいつらはみな、増えたらまた狩ろう!と言って適度につがいを残して狩る癖があるので全滅はさせず、増えるたびに間引いてを繰り返していたのですが、最近では何故か成長速度が上がっているようだとの報告も聞いています。」
「なるほどねぇ…。
考えにくい事ではあるが…意図的にモンスターが強化されてるような感覚も感じるね。そのようなことを聞くと…。
はてさて…いったい誰が何の目的でそんなことをしてきているのか…。」
「皇女殿下の報告によると、南の大陸や北の大地の近隣ダンジョンでも最近モンスターの動きが活発化しているらしく、国境付近のダンジョンはてんやわんやらしいにゃ。
国境付近のダンジョンも皇国側の管轄だからにゃ。」
「そうなんですよねぇ…。なので最近は上級冒険者の出張数が多すぎて、重罪人討伐系の依頼を私の配下の暗殺部隊に専門的に行っていただいているような状況ですよ…。
と言うわけで、彼らの稽古をつけるのに私自ら出向いてきたのです。」
「本音は面倒な仕事を抜けてきたくてサブマスに押し付けてきたってところだろう?君たち2人は。
いや、猫は愛しの賢者様に会いにかなー?」
魔女さんがからかうと火球が魔女さんめがけて放たれた。
「オォン?これ以上喧嘩売るならいい加減焼き尽くすぞこのアニャ…。」
「オォ?上等だ。ひさびさに一戦やるかい爆烈猫娘?」
おぉい、人を巻き込んで恋のバトル始めるのはやめてくれ…。
「はははは。君も大変だねぇ。
まぁとりあえず、君のことは僕が全力でシゴいてあげるよ♂」
………。気のせいかな。いま別の意味を連想させる記号が見えたような。
「貴方にしごかれるなら俺はギルマスちゃんと魔女さんにシゴかれたいよ…。」
それを聞いた2人が顔を真っ赤にする。
「ば、ばか…!いきなりそんな大胆なこと言うんじゃないにゃっ」
「そ、そうだぞ!いくら2人でベッドで寝たからって、ま、まだ早いよっ…!心の準備というものがだね…!」
「下の話してんじゃねぇよ。剣と魔法の話ししてんだよこっちはよ。ったく…。ギルマスには本当にど変態しかいないのか…。」
しばし沈黙の時が流れる。
「「「面目ない…。」」」
「否定しろよ!!」
そんなこんな感じで軽いショートコントも終わり、俺は盗賊ちゃん(奴隷ちゃん)を引き連れ、この城に魔女さんが用意してくれた工房室に入る。
「なんかごめんね。盗賊ちゃん…。
俺が捕まえたばっかりに逃げられない上に離れられなくもなっちゃったみたいで…。」
「あぁ…。本当にな…。
あんたの周りの連中、色々と半端なさすぎてそのうち命奪われちゃうんじゃないかなって思ってるよオレは…。
ん…?何だよ…。さっきからじろじろとこっち見て…。
ていうかあまりオレの腹を見るな…。
奴隷紋をこんな位置につけられるのもなかなか屈辱なんだぞ…。」
「そうだよな…。腹に奴隷紋とかなんかエロいもんな…。女の子にはキツイよなそれ。」
「いや、そういう意味じゃなくてだな…。
いやまぁ確かにそう何だけど…。
奴隷紋ってのはな。つけられた位置でも少しだけ意味合いが変わるんだよ…。
手の平なら作業奴隷。
首や頭なら事務奴隷。
足なら肉体労働奴隷ってな具合にな…。」
そんな意味もあったのか…。なるほどなぁ。
「で、お腹は…?」
「お、おい!!それをオレの口から言わせるのかご主人様は…!
オレはお前が命じたらどんな命令でも逆らえないのに…!
や、やめろ…オレはこれ以上言いたくない…!言わせるなぁぁっ…!」
「いやだって気になるじゃん…。お腹だから…コックとかかな?教えてよ。」
そう言うと奴隷紋がキィィィインっと光出し、盗賊ちゃんの口から言葉を発するように促す…。
「うぐぅっ!ぐっ…!
腹に奴隷紋を付けた【女の奴隷】は…!
性奴隷だ…!うぅぅぅぅ…!!馬鹿野郎!こんな恥ずかしいこと言わせやがって!!」
は…?性奴隷…??
はぁあぁぁあぁあっ!?
「ちょちょちょちょ、待て!じゃあなんだ!?
ギルマスちゃんは俺に、寝起きの俺に!朝一で!性奴隷を!プレゼントして来たってのか!?
どんな冗談だよ!ウゾダドンドゴドーンっ!!」
「そうだよ…。だから言ったろう?こんな位置につけられたのは屈辱だと…。
私はご主人様が求めたら拒めないんだ!
だから、その…、お前の優しさと紳士さと誠実さを信じてお願いするが…。
オレにそう言うこと…させるんじゃねぇぞ…?」
すごい剣幕で言われる。
「そこは、安心してよ。
俺は少なくとも、女の子にそう言うことさせるような最低なやつではないよ。」
優しく頭をなでなでしてやる。
「ふぁぁあぁんっ…!ひゃっ…やぁぁ…!
ば、馬鹿野郎!!性奴隷紋付いてる女に気安く触るんじゃねぇ!てか撫でるな!!
あぁ…ってか、知らないんだよな…。
くそ、先言っとけばよかった…。
その、だな…。性奴隷紋を刻まれてる女は…その…ご主人様に触れられると…感度がすごく増してるし…その…すごく気持ちよくなりやすいんだよ…。
だから…その…あまり触らないでくれ…。
いろんな意味で壊れちまうから…さ…。」
「ご、ごごごごめんなさい。
いやでも本当にギルマスちゃんはどう言う意図でこんな事を…。」
「それはだにゃ、賢者くんが女の子を大事にするような良い子か悪い子か改めてよーーーーくしりたくなった所にちょうど都合よくこの盗賊ちゃんが現れたからにゃよ。」
うゎぁぁぁぁぁぁぁっ!?
「どっから湧いて出たぁぁぁあっ!?」
「えーっと…ウゾダドンドゴドーン!辺りから工房に入って来たにゃ。」
いやもう、本気でびっくりしたよ…。
いや、それよりもだ。
「ギルマスちゃん…その…。」
「あーもう、それ以上は言わなくても良いにゃ。
その…悔しくてついつい怒ったりからかったりしちゃっただけにゃ…。それに付いてはこっちもごめんにゃ…。」
「いや、そのとばっちりをいま現在進行形で受けてるオレへの謝罪は…?」
「犯罪者のお前になんで謝らないと行けないのかにゃ?」
「おっしゃるとおりです…。」
ギルマスちゃんが俺の横に座ってこっちをものすごく可愛らしい甘えたトロ顔で見つめてくる。
これはやばい…。くそ…相変わらず可愛らしいし、この顔は本気で破壊力がやばい…。
「にゃーにもキスしてくれたら許すにゃ…。」
俺はこの空気に耐えられず思わず盗賊ちゃんの方を見る。
「そう言うプレイがお好みならバッチリ見てやるから見せつけてくれよ?ん?」
こいつ…。
「…。見るな。」
奴隷紋が輝きだし盗賊ちゃんは目を閉じて顔を逸らしてくれた。
「ギルマスちゃん、その…俺も自分から誰かにキスってした事ないんだけど…。」
「あ、あらたまって言うにゃ!にゃーも…その、そういうのは経験はないのにゃ…。
だから…あなたから…その…ギュって抱きしめて…して欲しいにゃ…。」
「こういうのを浮気って言うんだよな…世の中では…。」
「まだ、誰とも付き合ってないんだから…ノーカンにゃ…。」
ギルマスちゃんがキュッと抱きついてこっちを見つめた後目を閉じる。
俺はもう覚悟を決めて、ギルマスちゃんに口づけをした。
魔女さんにバレたら今度は魔女さんにされて…って言うエンドレスかなこれは…。
「終わったかー?
そもそもだな、私たちは一夫多妻なんて珍しくもクソもないんだから、ご主人様もいっそのこと全員と結婚しちまえば良いじゃないか。なぁ?西のギルマス。」
俺はキョトンとした顔になってたと思う。
俺の世界では一夫多妻なんてそれこそエロゲとか海外の話だ。
「それもそうにゃね。うん、それが一番平和にゃ。誰が一番よりもみんなが一番で良いにゃよね。
うん。賢者くん。結婚しよう。」
「いや、急にイケボで言われても気がはえーよ。
ってそんなことよりもだな。
俺は新しいアクセを作りたいんだよ。」
「んにゃ?どんなのにゃ??」
俺はアクセサリーボックスから、ファイアークォーツを取り出す。
「これはファイアークォーツっていうパワーストーン。元々は恋の炎を燃え上がらせるとか、2人の愛の情熱の炎を燃え上がらせるとかそういう効果のある石でもある。
ただ、ライトニングクォーツがそうだったように、この世界なら名前の持つ意味合いも現れるんじゃないかと思ってね。
今これ用のフレームを作ろうと思っていたんだよ。」
「ほうほほう!にゃーがもらったこれとおんなじ感じかにゃ?作るところ見てみたいにゃ!!」
ギルマスちゃんがにゃっす!にゃっす!と可愛く小躍りを始める。ていうか本当かんわゆっ…。
いやされりゅ…。
「ふぅん…。これ、手作りなんだ。
なるほどなぁ。だからひとつひとつのもつパワーも強力なわけか…。」
「ふむふむー。面白いにゃ。せっかくなので魔女も呼んでやるにゃ。」
しばらくしてギルマスちゃんが魔女を連れて戻ってきた。
「ふむふむ。なるほどなるほど…。
君が手を加える前、すなわち石だけの状態だと大した力は何もない。
魔力を込めたところで、君の作ったアイテムのようにとんでもパワーを私たちに与えてくれる様子も一切ない…。
だが、これらを使って君がアクセサリーを作ると、それらはたちまちとんでもない力を発現させると…。
なるほどねぇ。
おそらくは君が時間をかけてこれらを作っている間に、無意識に込める思いや想像力と共にたっっっっぷりと君だけの特殊な魔力を注ぎ込んでいるんだろう。
いわば、これらを作ること自体が君の固有魔法と言えるかもだね。
そして時間や思いを込めた物ほど強烈な力を発現させる…。
ライトニングクォーツもまた然り…。
ならば、このファイアークォーツはまたどんな力を見せてくれるのだろうね?
名前の通り炎でも放つのだろうが、勢いあまりすぎて私たちの国を地獄の業火で焼き尽くしたりとかは勘弁してくれたまえよ?」
「俺もそうならないように努力はするけど、いざって時は頼みます…。」
「仕方ないねぇ…任されたよ。
だが、今後魔力欠乏症の時は、そこの盗賊ちゃんを魔力タンク代わりに使うと言う手もありなのではないか?」
なんつーとんでもない思いつきを口走ってんだアンタは。
「日に透けるとようやく緑とわかるような黒色に近い深緑の髪色…。魔力量は相当ありそうだしねぇ。本当にいざという時は死ぬ前に遠慮なく口づけをした方が良いよ。
私たちも常に君のそばにいるとは限らない。だが、奴隷ちゃんとなった盗賊ちゃんは君から離れられないし命令には背けないんだからね~。」
まったく、本当にこの人の言うことはどこまで本気なのか時々読めないな…。
「俺はね、そう言う事はしたくないタイプの人なの。まだあって2日目くらいだけど、なんとなくもうそう言うやつなんだって事は分かってきたろう?」
「まねーっ♪知っててからかうのは楽しいねぇ~♪」
本当この人は…。
ひとまず俺は木の板を小さく切り出し、そこに石をはめる穴を開けデザインを書き出した。
これが1つのフレームに仕上がるのは結構時間がかかる。
形を作り出すところがまずは第一歩なのだ。
かくして、俺の新しい切り札作りが始まった。





