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8.光魔法

 (光魔法、かぁ……)


 授業中だというのに、頭の中はそのことでいっぱいだった。

 ホワイト様は、人を救う力だと言った。

 殿下は、今のままでも十分だと認めてくれた。


 だけど——


『光属性は極めれば強い力となります。』


 その言葉だけは妙に耳に残っている。


(極めたら、か。)


 光魔法について私が知らないことはまだまだ沢山ある。

 回復(ヒール)

 範囲回復(エリアヒール)

 使える魔法は増えたけれど、それだけだ。


(そういえば……)


 初めて回復魔法を成功させた時。

 金色の光がふわりと広がった。

 範囲回復を使った時は、細かい粒が広範囲に。

 そのことを思い出して、思考が止まる。


(回復と範囲回復って、光の大きさが違ったよね?)


 だったら。

 超回復(ハイヒール)は?

 魔力量を増やしたら?

 逆に減らしたら?

 込める魔力の質を変えたら?


(……あれ)


 そこまで考えて、私は目を見開いた。


(もしかして、光って操れる……?)


 閃いたら試さずにはいられなかった。

 放課後。

 真っ先に向かったのは魔法の使用が唯一許可されている練習場だった。


(まずは……)


回復(ヒール)!」


 呪文を唱えると、ふわっと手の辺りに光が浮かぶ。


(ここに……)


 込める魔力の量を増やしてみる。

 すると、パチンッと音を立てて光が消えてしまう。


(えっ、なんで!?)


 いつもなら、5秒くらいは持つはず。

 なんで上手くいかなかったのか分からず、むむむっと眉間に皺が寄った。


(よし、もう一回!)


「回復!」


 今度は魔力の量を少しずつ増やして、限界を探っていく。

 さっきの失敗は、魔力が多すぎたせいだと思ったからだ。


「……あっ、消えちゃった。」


(ん? 今の魔力量って……)


 光が消えたその感覚には覚えがあった。

 何度も使った、あの感じは間違いなく……


「範囲回復の時のだ!」


 思わず声が出た。

 さっき光が消えた瞬間。

 あの時に込める魔力の量が、範囲回復を使った時と全くと言っていいほど同じだったのだ。


「じゃあ、魔法ごとに込められる魔力量に限界があるってこと?」


 もしそうなら——


「回復!」


 まず魔法を形にする為に、範囲回復の半分の魔力を流してみる。

 光は消えなかった。


 その代わり——


「わっ、眩し!」


 目の前が一気に明るくなる。

 嫌な予感がした私は慌てて魔力を込めるのをやめた。


「なんで……?」

 

 魔力の量は問題ないはず。


(もしかして、一気に魔力を注いだから? ……だったら)


「回復!」


(ゆっくり、慎重に……おぉっ!)


 魔力を少しずつ調整していくと、光が安定して消えずに残る。


「回復!」


 上手くいったことに自信をつけた私は、さっきよりも魔力を込める量を増やしてみる。

 すると、光が金色に輝いた。


(わ、やっぱり色が濃くなった!)


「回復!」


 範囲回復と同じくらいの魔力を注ぐ。

 ゆらりと揺れた光の粒が、眩い光を放っていた。


「やった、せいこ——あっ!」


 パチンッと小さい破裂音がして光が空に舞う。


「……うぅ、失敗。」

 

 肩を落とした後、すぐに気持ちを切り替える。


(でも、コツは掴めてきた。)


 もう一度、手に魔力を集中させる。


「回復!」


(少しずつ、少しずつ魔力を流して……)


 輝きが段々と濃くなっていく。


「これは成功なんじゃ——って、また!」

 

 気を抜いた瞬間、光はすぐに消えてしまった。

 

(魔力って、流し続けないといけないから……)

 

 ……実は、これが結構難しい。

 魔力が少なかったり途切れたりすると不発に終わるし、逆に多すぎたら暴走する危険がある。

 魔力の操作は集中力を必要とするのだ。


「でも、ちゃんと変わってた!」

 

 新しい発見に心が躍る。

 

(やっぱり光は操れるんだ……!)

 

 目を閉じれば、ライブ会場が目の前に広がる。

 開始直前のカウントダウン。

 曲を切り替える時の暗転。

 それから、サビで光が明るくなって盛り上がりを見せる。

 

(うん、凄く良い!)

 

 次々に色々なアイディアが浮かんできて、急いで近くにあったバッグからノートを取り出した。

 

「ここはこうして。あっ、これも!」

 

 ——夢中になっている私は気づかなかった。

 

 「……」

 

 その光景を静かに見つめている人物がいたことに。

 


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