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「今日はここまでにしますわ。」
「はい! ありがとうございました!」
ホワイト様と数回の魔法練習を得て、だいぶ打ち解けてきたある日のこと。
「では、休憩といたしましょうか。我が家自慢の茶葉を持ってきましたわ。」
「ホワイト様の家、ご自慢の茶葉……!」
その日もいつものように練習後のご褒美タイムを謳歌しようとしていた。
練習場の一角に簡易的な木製のテーブルと椅子だけが置かれたその休憩スペースが設けられている。
席に着くと、何処からともなく控えていたメイドさんが現れて、準備をしてくれる。
軽く会釈をすると、礼を返された。
しかし、全く準備する手がブレない。
(流石公爵家のメイドさん!)
感心しながらその作業に見入っていると、ホワイト様に名前を呼ばれた。
「フローレンス様、早速今日の反省をいたしましょう。」
「あ、はい!」
慌てて思考を切り替えると、メモ用紙を取り出す。
「まず、以前より魔法が安定してきていますわ。他の魔法と比較したのが上手く作用しているみたいね。」
(やった!)
小さくガッツポーズを決めていると、ホワイト様の表情がスッと変わる。
「ですが、まだ突っ走る所がありますわ。特にアレンジを勝手に加えられては、正確なデータが取れません。」
「うっ、すみません……」
どうも楽しくなると、我を忘れてしまうらしい。
新しい発見があるとライブでの演出のイメージが湧いて、試してみてしまうのだ。
そこをホワイト様に指摘されて、気をつけようとメモに残す。
「……まあ、及第点はあげられますわ。」
「!」
バサッと広げられた扇子。
ホワイト様の表情は半分隠れてしまって、上手く読み取ることはできなかった。
(……だけど)
「本当ですか!?」
いつもは「まだまだ」という評価を貰っていた。
今日初めて言われたお褒めの言葉に、私は思わず立ち上がる。
その勢いにテーブルの上のカップがガシャリと揺れた。
「ええ。これなら殿下にお聞きになるのも、失礼にならないと思いますわ。」
(殿下に……)
ホワイト様の言葉に私はようやく本来の目的を思い出した。
これは殿下へ繋げるための橋渡し。
最低限の基礎を身につけることを目標にした練習であって、それが叶った今終わりを迎えるのだ。
楽しい時間に、これがずっと続くと錯覚していた。
喜びよりも先に、寂しいと思ってしまう。
(そっか。ホワイト様との練習もこれで……)
しゅんと視線を落とすと、ホワイト様の咳払いが聞こえた。
「……何か勘違いなさってるのではなくて?」
「えっ?」
顔を上げた先にいたのは、ホワイト様の綺麗な笑みだった。
「これで終わりではないですわ。殿下にお聞きになったら、いつもの時間に集合です。」
「えっ……えぇ!?」
私の声が練習場に響き渡る。
「これからも練習に付き合ってくださるんですか!?」
嬉しさのあまり身を乗り出すと、ホワイト様は呆れたような顔をした。
「当たり前ですわ。貴女一人だと、危なっかしいんですもの。」
言葉は冷たかったが、私を心配してくれているのが伝わってくる。
「やったぁ!」
「何を喜んでいますの? 私は反省なさいと言っているのですよ?」
「は、はい! 気をつけます……」
(怒られちゃった……でも。)
この時間がどうしようもなく楽しいと思ってしまう私がいたのだった。
* * *
(殿下から、教えてもらう……か。)
光魔法を使える者は極めて少ない。
それは同時に、光魔法について知っている人も少ないということを意味する。
それこそ、王族や保有者等、限られた者くらいだ。
——殿下に聞くことは成長に繋がる。
今までの私なら、光を増やすことしか考えなかった。
ライブの演出に使えればそれで良いと。
本気で思っていたから。
(……だけど。)
ホワイト様に光魔法の可能性を教えて貰った。
殿下から、私も人を救えてるんだと言ってくれた。
だから——
(成長したい。もっと高みを目指したい。)
……そう、思えた。
決意を胸に学園の奥へと足を進めていく。
初めて殿下と話した第2校舎の3階。
そこに、王族専用の部屋が用意されている。
(そりゃあ、人が来るはずもないよね……)
豪華な装飾の施された扉を前に、ごくりと唾を飲み込んだ。
(……よし。)
私は覚悟を決めて、扉をノックした。
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