11.ホワイト様との魔法練習1
(本当に来てくれるのかな?)
帰り支度を終えた私は、その足で練習場へと向かっていた。
ホワイト様が来てくれるかどうかは半信半疑だった。
だけど、あそこまで後押ししてくれたのに、練習しない選択肢なんてあるはずもなく。
私は少しの期待を胸に、足を進めていた。
「ホワイト様!?」
練習場の入り口を潜ると、人影が見えてきた。
その正体が分かった途端、私は声を上げた。
「遅いですわ。」
ホワイト様は扇子を開きながら、眉間に皺を寄せた。
「す、すみません!」
「貴女が練習なさるのでしょう?」
慌てて駆け寄ると、ため息混じりにそう言われてしまう。
厳しい言葉だった。
だけど私はその底に込められた優しさを知っている。
「はい。今日はよろしくお願いします!」
笑顔で告げると、ホワイト様に目を逸らされる。
「……では、昨日の現象を再現なさい。」
「あ、はい!」
実践を促され、私は呪文を唱えた。
「回復」
唱えると、ふわっと光が現れる。
昨日みたいに最初は多くなり過ぎないように魔力を調整していると、ホワイト様は疑問を持ったようだった。
「魔力量は?」
「たぶんこれくらいです!」
「たぶん、ではありません!」
私が自信満々に言うと、叱責が降ってきた。
「感覚だけでは伸びませんよ。自分の中で数値化、もしくは他の魔法と比較して再現性を高めるのが常識ですわ。」
「そうなんですか!?」
魔法に関してはある程度は学んできた。
私の先生は「詳しいことは学園で学びなさい」とよく言っていた。
そのせいか、私は魔法の理論になると途端に自信がなくなってしまう。
「えっと、他の魔法と比べる……あっ! 範囲回復の最低限必要な量と同じでした!」
思い出したように伝えると、扇子がゆっくりと閉じられた。
「今度はその意識を強く持って、魔法を発動してみると良いですわ。」
「わかりました! ……回復!」
さっきよりも強い意識を持って魔法を発動させる。
白い光を放っていた光が段々と金色に変わっていった。
(わ、綺麗……!)
今までよりもはっきりと色の違いが現れた。
ホワイト様は私を見て、満足そうに笑みを浮かべる。
「その顔は掴めてきたようですわね。」
「はい! 意識するだけでこんなに変わるんですね!」
嬉しくてつい距離が近くなってしまう。
ホワイト様の眉がピクッと動いたことで、慌てて後ろに下がった。
「す、すすすみません!」
(馴れ馴れしかったかも……!)
距離を取る私を見て、ホワイト様は小さくため息をついた。
「別に構いませんわ。」
「え?」
「それより、今何が違ったかわかりまして?」
そう問われて、私は手に目線を向けた。
「範囲回復と同じ量を意識したこと、ですか?」
「半分正解ですわね。」
ホワイト様は金色の光が消えていくのをゆっくりと目に映す。
「貴女は今まで感覚だけで魔法を扱っていました。ですが今回は違う。」
私の目を真っ直ぐに見つめるその瞳には強い光が宿っていた。
「自分の中に基準を作ったのです。」
「基準……」
確かに魔力量の感覚を自分の中でより分かりやすく位置づけた。
「基準がわかると、こんなにはっきりするんですね。」
先生が教えてくれなかったこと。
学園でわかると言っていたことに触れられた気がした。
「ええ。ですが、普通の回復魔法ならここまで色は変わりませんわ。」
「え?」
「まだ断定はできませんけれど。」
ホワイト様は考え込むように手を顎に当てた。
「……それより貴女は、どうして回復の効果を極めるのではなく、現象の練習をしているんですの?」
不思議そうな顔に私は初めて魔法を使った時の気持ちを思い出した。
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