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鼻豆転生 ~最強への第一歩は、鼻に豆を入れないことでした~  作者: 明日茂昇
六人の巫女

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6/15

お前の話

数日経った。


数日経ったというのは、自分の感覚ではない。

ユルダが、軒下に吊る薬草の束を入れ替えながら「もう三日じゃの」と言った。

私はそれで、三日経ったらしいと知った。


三日。

血は出ていない。

喉も詰まっていない。

鼻からも何も出ていない。

椀も割っていない。

壁にも頭をぶつけていない。


非常に立派な三日である。


私はそう思っているが、二人は思っていない。

二人にとって、三日無事は、三日に過ぎないらしい。


止まる稽古は、まだ続いていた。


ユルダの前で座る。

鼻の奥で何かを拾う。

追わない。

言葉にする。

待つ。


それだけのことが、思ったより身体に入ってきていた。

追いたい、という衝動の手前で、肩のあたりが少しだけ重くなる。

重くなったところで、私は息を一度入れて、止まる。


身体は、案外まじめだ。

本人より、少しまじめである。


           *


夕方の前だった。


ユルダは土間の隅で、根の太い草を捌いていた。

皮を剥ぐ手は速い。

緑の皮が一枚一枚、足元の盆へ落ちていく。


バルドは、戸口の脇の低い椅子に座っていた。

膝に丸い木と、短い刃。

削っているのは、たぶん、また何かの杭だ。

鉋屑が、足元へ細く落ちる。


私は土間の板の上で、手を膝に置いて座っていた。


座っているだけ。

非常に模範的である。


すると、バルドが顔を上げず、削りながら言った。


「ナラム」


「うん」


「お前の話をしておこう」


私は、削られていた木の方を見た。

バルドの手は止まらない。


「いま」


「いま」


「なぜ」


「お前も思い出さんようじゃし、もう一度するのは面倒じゃ」


「もう一度」


「儂も忘れていくでな。歳じゃ」


ユルダが、根の皮を一枚剥ぎながら口を挟んだ。


「お前も忘れんようにな」


「ふむ」


「もう、記憶喪失にはなるな」


ユルダの手の動きと、口から出た言葉の温度が同じだった。

緑の皮が一枚落ちる。

私の記憶喪失が一回禁じられる。

重みは、たぶん、同じくらいである。


「気をつける」


「気をつけて済むやつとは思っとらん」


「努力する」


「努力で済むやつとも思っとらん」


ひどい評価だが、反論の材料が私にはない。


バルドはまだ顔を上げなかった。

削りの音が、こつ、こつと続く。


「お前は」


こつ。


「コウノトリに運ばれて、この辺りへ来た」


こつ、と一つ音が抜けた。


私は、削られた木の表面を見ていた。


──マジか。


口は閉じていた。

顔は、たぶん閉じていなかった。


「顔」


ユルダが言った。


私は顔を直した。


──メルヘンやんけ。


直しても、内側はうるさい。

鳥に運ばれてきた幼児という導入で始まる物語の主人公を、私は前世でも何度か目にした覚えがある。

だいたい、皆、健気だった。

私は健気ではない。


「鳥か」


外へ出した声は、ずいぶん短かった。


「鳥に見えるものじゃ」


バルドはそこでようやく顔を上げた。


「実態は、たぶん鳥ではない。頭が大きすぎる。首が長すぎる。胴は小さく、立つと全体の釣り合いが悪い。鳥は足で立つが、あれは翼を腕のように地面へつく。喉と胸も、羽の付き方も、鳥のそれとは違う。空にいる時は鳥に見えるが、地に降りた形はもっと古いものに近い」


──ケツァルコアトルスやんけ。


私は、口の代わりに肩を少し動かした。


「うむ。お前も、しばらくケツァルなんとかに育てられたと言っていた」


口に出てしまっていたかもしれない。この口にも止まり方が必要だ。


「翼が大きい」


私は言った。


バルドは小さく頷いた。


「子を攫う」


ユルダが、根の先を切り落としながら、横から付け足した。


「鳥のくせに、乳を出す」


ぽとり、と切り落とした根の先が盆に落ちた。


私の頭の中では、もっと不穏な音が落ちた気がした。


──鳥が乳を出す。


「乳」


「うむ」


「飲ませる」


「飲ませる。攫った子を、すぐには食わん」


バルドが、削った木の表面を親指で撫でた。


「そして、乳が絶品らしい。母の乳よりずっと美味く、貪るように飲み、すくすく育ったらしい」


なるほど。飲んでみたい。いや、思い出せばいいのか。いや、機会があったら飲んでみよう。


「飲みに行くな」


ユルダは、やはり、読心術を使えるらしい。


「違う、お前が自分で言っておった。また、飲みに行きたい、と」


なるほど、言うだろうな。


「あれは強い。賢く、危険のない狩りしかせんから、普通の人間の大人でも襲われることは少ない。じゃが、向かってくる相手には躊躇せぬ」


「わかった。飲みに行かない」


当面は、飲みに行かない。


「あれは子を、囮にする。泣くもの、匂うもの、動くもの。攫った子を生かしておいて、それに近づいてきた獣や魔物を狩る」


「私が、囮」


「お前は囮で、ここまで運ばれた」


「いつまで囮なのか」


「人の子なら、運べる大きさまでじゃ。八つか九つで、危うい」


私は、自分の鼻の奥を一度確認した。


なぜ鼻なのかは、自分でもよく分からない。

身体の中で、いちばん私らしい場所が鼻だからだろう。


そこに、薄い記憶のようなものはあるか。


ない。


匂いの記憶は、ある。

草、灰、薬、煙、ユルダの皺の匂い、バルドの木屑の匂い。

それより前の匂いは、思い出せない。


ただ、ふと、首の付け根の少し下、鎖骨と胸の間のあたりに、温かいものの匂いが、線のように一瞬だけ通った。


通っただけだった。

追わなかった。

追えば、たぶん、悪い。


「追うな」


ユルダが、根を捌きながら言った。


見ていない。

鼻でも見ていないはずだ。

だが、ばれた。


「追っていない」


「追いかけた目をした」


私は目を戻した。

目も危険物だった。


           *


バルドは、削った木を膝の上で持ち替えた。


「お前を、儂が奪った」


短い。


「奪った」


「コウノトリの巣に近いところで、ばたばたと羽の音をさせとった。儂は、たまたまそこにおった」


「たまたま」


「たまたまじゃ」


それは嘘ではないが、全部でもなさそうな言い方だった。

木屑が一枚、また落ちた。


「儂は若くなかった。今ほどではないが、若くはなかった。だから、力で奪ったわけではない」


「では、何で」


「相手を間違えさせた。鳥は、近くにあった別の動くものに気を取られた。儂はその隙にお前を取った」


「鳥は怒ったか」


「怒った」


「殺されかけたか」


「殺されかけた」


「生きているが」


「生きとる」


短い往復で、長い場面が、ぱきり、ぱきりと省略されていく。

英雄譚にならない。

英雄譚にはならないが、たぶん、相当のことが起きている。


バルドは続けなかった。


私も、続けなかった。


ユルダが、土間の隅の盆を引き寄せ、皮を一掴み拾って竈の灰の上へ撒いた。

緑の皮が灰の上で湿る。

匂いが立ち上がる。

苦い匂いではなかった。

甘いというより、湿った青さに近い。


「飯にすると不味い根じゃが、灰でくすぶらせると、虫が嫌がる」


ユルダは、私の話とは別の話のように言った。


ただ、ナラムの話を切る合いの手としては、ちょうどよかった。


──ありがとうユルダ。


私はそう思った。

口には出さなかった。

出すと、たぶん、ろくなことにならない。


           *


しばらく、削りの音と、灰の上で湿る皮の音だけが続いた。


私は、聞いた。


「変なことは、知っていたのか」


「拾った時に、か」


「拾った時に」


「服でな」


刃が、ひと削り。


「お前が着とった服が、変じゃった」


「服」


「子供の服のくせに、刃が立たん」


私は膝の上で、自分の身体を見下ろした。

今着ているのは、ユルダが繕った薄い麻のような布だ。刃は普通に立つだろう。

拾われた時の服は、たぶんもう、私の前にはない。仕舞われている、と感じる程度に。


「お前は、一歳になる前に、ここへ来た」


「私が」


「お前が」


「歩けたか」


「歩けん」


「話せたか」


「話せた」


「歩けず、話せたのか」


「めずらしいやつじゃった」


──それは、まあ、めずらしいだろうな。


「お前は、しばらくしてから、自分のことをこちらへ話してくれた」


バルドの手が、削りの間に一度だけ止まった。


「だから、今、儂が話しておるのは、半分はお前が儂に教えてくれた話じゃ」


「私が」


「お前が、まだ一歳になる前の頃のお前が、儂とユルダに、自分の家のことを話した」


私は、自分の喉のあたりを意識した。

一歳に届かない子供が、家のことを話す。

何の家か。

誰の家か。


「家、というのは」


「お前の家じゃ」


「私の家」


「辺境じゃが、貴族の家じゃ」


私は、削られていた木の表面を見ていた。


──貴族の子です、と告げられた瞬間。


私の中で、何かが反応するべきだった。


していない。


私は、内側で、自分の反応を待っていた。


待っても、出てこなかった。


──マジか、貴族なのか、私は。


内側はうるさい。

だが、出てきている言葉は、状況を観光している人のそれだった。

誰かの観光であって、自分のそれではない。


「貴族か」


私が外へ出した言葉も、結局、観光的だった。


「貴族じゃ」


バルドは、こちらの温度を測ったような、測らなかったような声で受けた。


「名も、その時に聞いた」


「ナラムではなく」


「ナラム・オ・アルドヴェイン」


長い。


自分の名前としては、急に重い。


ナラムだけなら、まだ身体のどこかが反応する音だった。

オ、と、アルドヴェインまでつくと、名ではなく、荷物を渡されたような気がした。


「それが、私の名か」


「外では言うな」


即答だった。


「確認しただけだ」


「確認で口に出すな」


名前にも、抜いてはいけない杭があるらしい。


「と言っても、領主の家じゃ。広い領地の上で偉そうにするやつではない。山と森と痩せ地と、変人の番をするような家じゃ。お前の親は、その家の主夫婦じゃ」


「父」


「父」


「母」


「母じゃ」


確認するように私が言って、確認するように彼が返した。


それで、私の中の何かが、揺れたかというと、揺れなかった。


揺れなかったことに、少し驚いた。


──私には、両親の顔の記憶がない。

──だが、私の身体には、たぶん、ある。


身体は、案外まじめだ。

本人より、少しまじめである。


そう先ほど思ったばかりだったのに、その身体は、いま、二人の話を聞いて、首の付け根の少し下、鎖骨と胸の間のあたりで、ふたたび、短く線を立てた。


短い線だった。

追わなかった。

追えば、たぶん、悪い。


           *


「お前は」


バルドが、また少し言葉を切った。


「鼻が、生まれた時から、少し他人と違う作りじゃった。鼻だけではない、ない。胸の中の、小さな石も含めてじゃ」


「石」


「お前の中には、人間が普通持っとらん小さい石がある」


「魔石」


「言葉だけは早いの。それじゃ」


ユルダが、薬草を一掴み竈に追加しながら、口を挟まずに横顔だけ動かした。


私は、自分の胸に手を当てかけて、やめた。


──触るな、と言われる前に、自分で止めた。

──それくらいは、私も学んだ。


「親は、それを早くから知っとった」


「親が」


「特に母じゃ。お前が乳のころから、息と気の流れが普通でないことに気づいた。父も気づいておったが、口にせんかった」


「父は、黙る人」


「黙る人じゃな」


そこだけ、バルドの口元が少し緩んだ。

笑ったわけではない。

口の端が動いただけだった。

だが、その動きで、見たことのない父の顔が、わずかにこちらへ近づいた気がした。


近づいた気がしたが、顔は浮かばなかった。

浮かばなかったので、近づきもしなかった。


「禍い子(わざわいご)と祝い子(いわいご)。忌子(いみご)と祝子(ほぎご)とも言う」


ユルダが、根を切りながら、横から言った。


「上の方の人間が、お前のような子を呼ぶ呼び方じゃ。忌むやつもおる。祝うやつもおる。だが扱いは似たようなもんじゃ。連れていかれて、囲われる」


「囲われる」


囲うのは、たぶん、優しい言葉ではなかった。


「お前の家は、お前を上にやらん覚悟だった」


バルドが言った。


「だが、家の外から、人が動き始めた。家まで来てから判断するのでは遅いと、お前の母が考えた」


「来た」


「まだ来ていない頃に、来る前に動いた」


「動いた」


「お前を、コウノトリに攫わせた」


私は、椀の縁を見ていた。

椀は土間の板の上にあった。

中には、何もなかった。


「呼んだのか」


「呼ぶ笛がある。人には聞こえん。お前の母は、夜中から何時間も吹いた」


「夜明け前に、お前を高いところへ出した。鳥が一羽降りた」


そこから先を、バルドは語らなかった。


風が冷えていた、とは言わなかった。

母が泣いていた、とも、言わなかった。

父はその場にいたともいなかったとも、言わなかった。


ただ一つだけ、付け足した。


「お前は、たいそう泣いたそうじゃ」


「私が」


「お前は、たいそう泣いたそうじゃ」


繰り返された。


それは、たぶん、私の身体が一度知っているはずの泣き声だった。

身体は思い出さなかった。

鼻の奥も、何も拾わなかった。


──よかった。


──よかった、と思った自分に、私は、少しだけ姿勢を崩した。


──よかった、で、いいのか。


──それを思っていいのは、その時に泣いた当人なのではないか。


私は、当人だった。

当人だったはずだが、当人のはずの私には、その時の記憶がなかった。


身体には、たぶん、ある。

本人には、ない。


距離があった。

距離があることに、少し罪悪感が出た。


罪悪感は、表に出さなかった。

出すと、たぶん、ろくなことにならない。


息は少し浅くなった。


「浅い」


ユルダが言った。


見ずに分かるらしかった。


「普通にする」


私は息を入れた。


入れた息は、根の灰焼きの匂いだった。

苦くて、甘くて、湿っていた。


それが、たぶん、いま、私の身体にとっての家の匂いだった。


           *


「お前の母は、お前に言うた」


バルドが続けた。


「儂の話ではない」


「分かっている」


「お前が、儂にそう話した」


「私が」


「お前がな」


刃が、ひと削り。


「大きくなって、自分で逃げられる足ができたら、逃げて、できれば帰ってきてほしい、と」


「帰らなかったら」


「無事に、生きてほしい、と」


「父」


「黙っとったらしい」


「黙っとった、で、よいのか」


「そういう男なのじゃろう。お前の父は、止める権利と止めない権利の両方を持っとって、後者を選んだ。儂は、そういうやつを責めん」


「責めない」


「責めるとな、責めた側が動けんようになる」


それは、たぶん、バルドが何度も使ってきた小さな知恵だった。


ユルダは、その横で、根の最後の一本を切り終え、刃を布で拭いた。


刃を拭く音が、思ったより長く続いた。


その間、私は、口を閉じていた。

顔も、たぶん、閉じていた。


──アルドヴェイン。


その家名は、私の中で、一度だけ静かに鳴って、止まった。

バルドは、そこで二度目を口にしなかった。


私もそれに従って、口に出さなかった。


           *


しばらく、根を捌く音も、削りの音も、止まっていた。


そして、バルドが、ようやく、いちばん短い話に入った。


「ここへ来てから、お前を、人里へ返すという話もあった」


「あったのか」


「あった。儂とユルダで、何度か話した」


「返さなかった」


「返さなかった」


「なぜ」


バルドは、削りかけの木を一度膝に置いた。

それから、両手を膝の上で組んだ。

組んだ手は、ごつごつしていて、皺と古傷が多かった。

私の身体にある古傷より、ずっと多かった。


「理由は二つじゃ」


「二つ」


「一つは、人里へ返したら、お前は、上の方の人間に渡される。お前のような子は、囲うか、あるいは、もっとよくないことをされる」


「よくないこと」


「噂じゃが、中の石を、取りに来る者もおる」


「中の」


「中のじゃ」


私は、息を、止めかけた。


止めなかった。


止めるなと、ここ数日、何度も言われた。


私は普通に息をした。

普通にしたつもりで、たぶん、少しだけ浅くなっていた。


「もう一つは」


バルドの口が、少し、止まった。


止まった口は、止まった、と分かる止まり方だった。

重い話の手前で止まる時の、止まり方だった。


「もう一つは」


「もう一つは、お前を人里へ置いたら、誰かがお前を殺すより先に、お前がお前を殺すじゃろう、と思うたからじゃ」


私は、椀の縁から、目を上げなかった。


──誰かが私を殺すより先に、私が私を殺す。


笑えなかったのは、心当たりがあったからだった。


喉。

鼓膜。

腹に二つ。

目の前の光。

崖からのダイブ。


それから、私がまだ知らないだけで、たぶん、ほかにも何回かあるはずの、未遂と未遂の間の、まじめな失敗。


私は、私を殺すのが、たぶん、いちばん上手い。


人里でも、ここでも、同じだろう。

だがここには、それを止める二人がいた。


「じゃから」


バルドの手は、膝の上で組んだままだった。


「止まり方を、教えとる」


私は、息を吐かなかった。

吐くと、たぶん、震えた。

震えるのは、嫌だった。


身体は、まじめに少し震えた。

本人より、少しまじめに。


「止まると」


「うむ」


「私が、私を殺さない」


「とりあえずは、な」


とりあえずは、というところで、バルドが、初めてこちらをまっすぐ見た。


「お前を生かすやり方を、儂とユルダで、全部は知らん。じゃが、止めることくらいは教えられる。教えられるところから教えとる」


「うん」


「うん、で、よい」


「うん」


私は、もう一度、うん、と言った。


うん、しか出てこなかった。


うん、しか出てこないのは、たぶん、いま、ちょうどよかった。


           *


ユルダが立ち上がった。


立ち上がる音は、ほとんどしなかった。

ただ、根の皮の盆を片手で持ち上げ、灰の方へ運び、ばさり、と残りを灰の上へ落とした。


苦いような甘いような匂いが、もう一度立った。


それから、ユルダは、土間の板の上にあった空の椀を、伏せた。


ことり、と音が一つ鳴った。


「お前の話は、終いじゃ」


ユルダは言った。


私の話、らしかった。


それが、私の話、らしかった。


椀の伏せた底の上に、薬草の屑が一つ落ちて、止まった。

赤茶色の小さな粒だった。

豆ではなかった。

たぶん、根の屑だった。


だが、形は豆に似ていた。

私は、それを、一瞬だけ目で追って、追ってから、追うのをやめた。


止めるのは、思ったより、上手になっていた。


豆壺の場所は、知っていた。


今、見なかった。


[お前の話 了]


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