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盤面は二転三転②

 火属性魔法使いのルーペもこのイベントに参加していた。彼女の作戦は、遠くからの狙撃だ。


 そのためにはまず、高所を取ることが最重要事項だ。つまり取るべきはやはり……塔の屋上。


 このマップには塔が五つある。真ん中に一つと、東西南北にそれぞれ一つずつ。その中でも全てのエリア収縮パターンに対応できる真ん中の塔が一番競争率が高いだろう。ただ、他の塔も依然競争率は高い。


 誰よりも早く塔の麓に到達し、トラップを仕掛けて近づけなくしたら、狙撃に集中することができるかもしれない。そう考えた彼女はスタート直後、塔の入り口に直行し、トラップを仕掛けた。


 でも、彼女は気づいていなかった。


 もし、塔の外壁から三階の窓にたどり着けるとしたら?


 AGIが機能するのは足の速さだけではない。足の力全般に機能する。よって……ジャンプをすれば、届くものもいる。


 狙撃をしている彼女は後ろに近づく軽戦士の姿に気付かず、投げナイフによってデスした。


―――――――――――――――――――――


 彼女を倒した軽戦士……アキジは最初からサブジョブでこのイベントに挑んだ。


 足が速い方がバトルロワイヤルにおいて有利だし、スタートダッシュが速いからだ。


 ちなみになぜ彼女を投げナイフで殺したのかというと、後ろからパリィ用の剣で倒し切れるか不安だったからだ。もし倒しきれなかった場合、奇襲したのに返り討ちになる可能性も考慮すると、投げナイフを使うのがリスクが少ないと判断したわけだ。


 もっとも、投げナイフは使い切りだ。使ったものを回収することができないので、消耗品として減っていくとパリィするだけでダメージを与えられないジリ貧状態と化す。


 ただそんな時はジョブチェンジャーを使えばいい。あれは継続戦に適しているビルドだ。有効的に使うための作戦も練ってきたし。


 そういえばスタート直後の作戦を話していなかった。スタート直後はまず、ダイナミックに動き回る。パリィで無力化して、とかそんなうまくいくとは思っていない。でも、高速で動き回ると相手は俺の場所を見失うどころか自分の周りの状態に気がつけなくなる。そしてその隙に、地面にある魔法を発動させる。そうすると、相手は動きづらくなり、その隙に剣を弾き飛ばせば無力化できるっていう寸法だ。


 ある魔法というのは⦅沼地の粘土(クレイ・バンド)⦆という土属性魔法の初期級魔法だ。初期級魔法はその属性魔法使いでなくても覚えることができる。ただ、最適化されていないので使うMPは無駄に多いが。


 そんな作戦を思い出しながら塔の中を移動していると微小な音に気がつく。誰も気にしないような小さな音。ただそれに気付かなかったものは……その瞬間、デスする。


 すぐに反応し、少し横にずれると、透明な空気の流れが顔の真左を通過していった。


「あぶねぇな。でも、そんな遅い攻撃で俺が倒せるとでも」


 挑発は対人戦の基本だ。ただその言葉に反応はなかった。いやもしかして……囲まれてる!


 人に囲まれているのではない、風(・)に(・)囲まれている。その風は気づいた時にはもう大きくなっていて、流石の俺でもこれには対処できない。い(・)つ(・)も(・)な(・)ら(・)。


 ここでこれを失うのは痛いが、仕方ない。


「スキルスクロール:「空間適応」」


 相手はさすがに驚いた表情を浮かべる。スキルスクロールは今回のイベントに一つだけ持ち込み可能のアイテムで、自分が持っていないスキルでも好きな時に一回使える物だ。そして『空間適応』というスキルは周りの環境に自分の肉体を合わせる、つまり自分は風となり、塔から逃げることができる!


 スクロールを失ってしまったのは苦しいが、出し惜しみしてデスするよりマシだ。それより早く逃げなくては。あのプレイヤーは多分、AGIとDEXに多く振っているはずだ。つまり、ずっと走り続ければ負けないはずだ。


 あれに遭遇してもう一回生きれるとは微塵も思っていない。ここから……そうだな、西の塔まで一回逃げよう。

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