番外編 夢のきっかけ
これは、ロゼが幼い頃のお話。
「おね……さん……」
「まあ、大変! 回復魔法」
若い女性がそう唱えると、ロゼの傷がみるみるうちに塞がっていく。
「何があったか話せる?」
「えっと……暴走してた馬に、ぶつかって」
「そうなのね。話してくれてありがとう」
ロゼは立ち上がり、女性に向かってお辞儀をする。
「お姉さん、助けてくれてありがとう」
「いいのよ、聖女として当然のことをしただけだし」
「聖女……当然……」
「そうよ。聖女って、なるまでも努力や苦労で大変だし、解呪とか回復とか魔力消費が激しくてすごく大変だけど、それをやった後にみんなの笑顔を見るのが好きなの」
「……お姉さん、かっこいー……」
(……私も、かっこいいって思われる、感謝されるようないい人になりたい……!)
「お姉さん、私、聖女になる!」
「……そう。大変だろうけど、頑張って!」
「うん! 努力とか苦労とか乗り越えて、絶対すごい聖女になる! 約束」
それが、ロゼが聖女を目指し始めたきっかけ。
「あら……この力は、あなたの夢にとって邪魔ね。封印しておきましょう。感情が激しく高まった時に封印が解けてしまうかもしれないけど、まあ滅多にそんなこと起きないし大丈夫かしら」
「え?」
「なんでもないわ。あなたの夢が叶いやすくなるよう、少しだけ手を加えただけよ」
慈愛に満ちた聖女笑顔に、ロゼの目はキラキラと輝いていた。
「お姉さん、ありがとう! そんな優しい笑顔、どうやったらできるの?」
「それはねー、こうやって…………」
手取り足取りで丁寧に優しい笑顔のコツを教える聖女に対して、ロゼの聖女への憧れはどんどんと増していた。
「お姉さん、最後に一つだけ」
「なぁに?」
「お姉さんの名前はなに?」
「……名乗るほどのものでもないわ」
あの聖女に出会ったからこそ、今のロゼがいる。
その後2人は再会するとか、しないとか。




