番外編 スキルに悩まされている令嬢
「貴方がロゼ様ですか?」
散歩をしていたら、突然声をかけられた。
「えっと……あなたは?」
「申し遅れました、男爵令嬢レイナと申します。レイナとお呼びくださいませ」
「ええ!? えっと、私になんの用ですか?」
レイナという令嬢はこほんと咳払いをして、深刻な顔で話し始める。
「私には、スキルランクSSSのスキルがあります」
「ええ!? すごい……」
「そのスキルはどんな危機が迫っても耳鳴りがして教えてくれるというものです」
「それが、私に何の関係が?」
そう聞くと、レイナの目に涙が浮かび始める。
「これは、どんなに小さい危機でも耳鳴りがします。一度お手並み拝見と言わんばかりに、暗殺者が送り込まれてきました。お茶会ではずっと耳鳴りがする。そのときは護衛が守ってくれましたが、お父様が「なぜ危機が迫っていると教えてくれなかったのか?」と、疑問の目で私を見てきました。その目に、私は耐えられなかった……」
ロゼは察してしまった。
みんなの期待を裏切りたくないから、本当のことを話せない。ずっと不安を、誰にも話せず一人で抱えていた。
そこに追い打ちがかかった。
周りから見たら大当たりスキルだけど、本人にとって親の優しい期待が、プレッシャーという名の呪いになっていた――……
「そこで、私に相談しに来たんですね」
「はい……ロゼ様はどんな呪いでも解呪できると聞きました。これはもはや呪い、解呪してもらえませんか?」
「もちろんです! 聖女の名において、困っている人を見過ごすわけにはいきませんし!」
ロゼは今までの経験をもとに、どうしたらいいかを考える。
「レイナ様、ステータス画面を出してくれませんか?」
「え、ええ。わかりました」
レイナは自身のステータス画面を開く。
『名前 レイナ レベル20
種族 人間
スキル 危機感知能力 スキルランクSSS』
ロゼの手は迷いなくステータス画面に突っ込まれるが、もちろん画面は透け、手が画面の奥へ出てしまう。
「ロゼ様……なにを?」
「壊すんですよ、文字を」
ロゼはスキル名が書かれているところを、あまりの握力と気合で概念を物理的に掴んだ。そして、そのまま勢いで握りつぶした。
パキッ
――そう音を立て、スキル名の欄は壊れた。
「…………音がしなくなった」
「解呪とはまた違いますがね。もう、安心してください。ご家族には突然消えたとでも言ったらいいですよ」
「ありがとうございます、私を助けてくれて……」
レイナは、先ほどの涙とはまた違う涙を流しながら何度もお礼を言う。
「どんなに辛くても、私のことを『すごいスキルを持っている』というだけで贅沢をさせてくれた親に言えなくて……でも、ロゼ様に助けられました。本当に、ありがとうございました!」
「いえいえ」
こうして、ロゼはまた一人の女性を救ったのであった。
誤字報告ありがとうございました!




