8. 解呪の達人
「あっ、今日も無理だった〜!」
今日も解呪の練習をするロゼは、休憩として今日の振り返りをしていた。
「1回だけ成功したの、ほんとなんでだったんだろ――……」
さっきお隣さんにもらったりんごをかじりながら、今までのことを一つ一つ思い出していく。
「……もしかしてあれ、気合で呪い自体を破壊しただけだった?」
何度も何度も考えて、行き着いた答えはこれだった。
「ちょっとやってみようかな……はああぁ!」
解呪の対象、呪いの人形が光り始める。
「せ……成功しちゃった……」
ロゼは息切れしながらも、成功したことへの歓喜に震える。
「やっぱり、これが正解なのかな?」
そこからロゼはいくつもの人形を解呪する。
コツをつかんでからは、失敗することはもうなくなった。
「これだったらー、私、どんな呪いでも解呪できちゃうんじゃないの!?」
いい気になっているロゼの後ろに、大きな影がさしかかる。
「あ――……えっと、これは……呪いの羆?」
それは、人を睨みつけるだけで呪う力を持つ呪いの羆だった。
その魔物は名前の通り、凶暴化する呪いがかかっている羆で、見た目はかなりおどろおどろしい雰囲気を放っている。
「ここの森に魔物なんて来たことないのに――」
ロゼは知らない。いつも魔物を寄せ付けないようにしていた神3人が、急用で目を離していたことを。
「……私のこの力なら、倒せる?」
手が震える。足がすくむ。
……ロゼは、魔物を倒したことなんて一度もない。
(だって、魔物を倒す聖女なんて聞いたことない。それに今までも魔物はすべてナターシャが倒していたから……)
ロゼは、自分で何かを傷つけることを恐れていた。
「ガルゥゥゥッ……」
体がビリビリするような唸り声に、ロゼは恐怖する。
(あ……れ? そう言えばなんで私、呪われないんだろう?)
呪いの羆は、相手を睨むだけでその1時間後には死ぬ呪いをかけることができる。呪われたら体が痺れてくるのだが、ロゼの体には違和感1つない。
(もしかして、私の力が呪いを弾いてる?)
考えられるのはそれしかなかった。
「それなら時間に余裕がある。呪いの羆は羆のくせに、呪い以外特に攻撃手段を持ってないからね」
(さて、どうするか。相手を攻撃するのは嫌だし、だからといって放っておいて犠牲者が出るのも嫌だ。……だったら、危険性をなくせばいいんだ)
「呪いの羆にかかってる凶暴化の呪いを解こう!」
ロゼは呪いを破壊するイメージをする。
(呪いの核を壊すイメージをしたほうがやりやすいな。ほら、中心部に核がある感じで……)
「ふんっ!」
ロゼが体にぐっと力を込める。
「呪いの羆が……解呪の練習をしてた時に使ってた人形のように光り出した!」
光が徐々に消えていき、最後には戦意を完全に失った羆がのこっていた。
「成功、した……」
緊張の糸が途切れたロゼは、その場にへたり込む。
「……私はやっぱり、このタイプの解呪があってるのかな。……なら、今度から私は私らしいやり方で聖女をやる!」
(きっと、回復も結界も、私らしいやり方がそのうち見つかるよね)
近い内にロゼは「解呪の達人」として名を馳せることを、今は考えもしていなかった。
◇◇◇
「ナターシャ、やったね! 炎の龍、やっと倒せた!」
「ま……まあ、これくらい当然ですわ」
「不死鳥の舞のメンバーはまだ2人だけど、そのうち増えていくよね」
新しい【不死鳥の舞】は、もう昔のパーティーとは全く違うものになっていた。
今もナターシャはアイテム頼りだが、敵を倒すことのできないロゼはそれでもいいと思っていた。
「ふふっ、なんかメンバーが多かった前より強くなってる気がする。きっとナターシャがいてくれたからだよ」
「……ま、私がいないとロゼは何もおできになりませんものね」
ロゼ達の物語はまだ続く。
そのラストを、ロゼは楽しみに待っているのだった。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
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