5. 破壊の神(ナターシャ視点)
「どういうことよ……」
ロゼがうちに来たあとから、噂はロゼがいい人で逆に私が嘘の噂を流した犯人だというものに変わった。
なんだかむしゃくしゃして自分でもめったに買わないような高級なご飯を食べるが、なんだか味気なく感じる。
「あっ! またですわ……」
気分転換に散歩をするも、地面がべちゃべちゃしていてたまに穴があり転けそうになる。
「ロゼが来てからこうなった……きっと、いや、絶対にロゼのせいですわ!」
その推理はあながち間違っていないのだが、ロゼが直接的にやったわけではなかった。
とにかくこのイライラをぶつけるために、私は腹いせで娯楽に金をつぎ込んでいた。
貯金が底をつくのは一瞬だった。
「お金……お金が欲しいですわ……お母様、お父様」
生活金がなくなってしまい、仕方なく親に資金を求めた。
しかし、帰ってきた答えは残酷だった。
『私たちは今までお前を甘やかしすぎた。
親としてもナターシャにはそろそろ自立してほしい。
金は自分で稼げ。』
「そんな……」
ナターシャは親からの手紙をグシャグシャにして、床に放り捨てた。
ついに家賃が払えなくなったナターシャは、親のあれはきっと気まぐれだと、可愛い愛娘がまた甘えたら家に戻してくれると、そう信じて実家に行った。
結果は当然門前払い。
ナターシャは、本当に行く当てを失った。
衣服も食べるものも住むところもない。どこかへ行けばロゼを悪女という噂を流した人だ、と誰からも無視される。
ナターシャの居場所は、人のいない森しかなかった。
「ここは……どこですの……? 森、にしては開けているけれど」
キョロキョロ周りを見渡していると、ふと地面に何かがあるのに気づいた。
「……なんですのこれ」
ナターシャの視線の先には、キラキラと光るペンダントがあった。
「まさかこれは、神の欠片……?」
噂に疎いロゼは知らなかったが、この世に神が降りてきた際に落としてしまった『神の欠片』が存在するという話があった。
「もし……これが本当ならば」
ナターシャはその光り輝くペンダントを天に掲げ、叫んだ。
「超上位神、破壊の神! わたくしに力を与えなさい!」
そうナターシャが言った途端、雷が鳴り始め大雨が振り始めた。
「……余を呼んだのは汝か……」
超上位神破壊の神。神話に出てくる最恐の神として世間に知られている。
「なっ、破壊の神!? 本当に出てきたの!?」
「そうだ。汝、神の欠片を使ったな?」
「ええ、そうですわ!」
「なら仕方ない。汝に余の力を授けよう」
破壊の神がそう言い終わると雷雨が止み、元通りの青い空になった。
「これで……私は最強……」
ナターシャは歓喜で震え出す。
「ロゼ……! 貴方の歪んだ顔が思い浮かぶわ! ふふ、待っていなさい」
野獣のような顔で、ナターシャはロゼの家へ行った。




