2. 【不死鳥の舞】に不穏な空気(神様・ナターシャ視点)
ここから短編の続きです。
「はっ、はぁあ! ぜ、全然駄目だわ。」
「おいおい聖女の神様!あの子殺気100%剥き出しの魔物にも気づきませんでしたよ!?」
「さ……大地の神様……さすがにこれは、やヤバいですね」
「ですよねー」
神2人はため息をつく。
「ロゼはただでさえ聖女の才能はないのに、危機感知能力も0%ですよ……」
「どーしましょう、聖女の神様? これじゃこっちの心臓が持ちませんよ……」
「もういっそ森ごと魔物を破壊してやりたいわ」
「それならいっそロゼちゃんが木を殴ってくれたら早いのに」
「はっくしゅん! ……誰か噂してるのかなー?」
神のそんなやりとりなんて知らないロゼは、解呪の練習を今日も続けていた。
「ロゼちゃん、何がいけないのか悩んでるけどそれ違う、解呪方法間違ってる! ああ、いっそ言ってあげたいけど言ったらロゼの願いが叶えられない……気持ち悪いわ!」
聖女の神はやきもきして大地の神の肩をバシンと叩いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロゼが解呪の練習をしている頃、【不死鳥の舞】ではナターシャがパーティーメンバーに言われた話を理解するのに必死だった。
「え……? そんな、でていくってどういう事ですの?」
「そのままですよ、ナターシャ。ロゼがいないこのギルドにいる意味はもうないですから」
「は……!? ロゼ!?」
「もうこの生活にはうんざりですよ。ロゼがいないなら耐えられない。さよなら」
「え!? は、ちょっと……」
メンバーが出ていった部屋の中で、ナターシャは呆気にとられていた。
「ロゼ……なんであなたの名前がでてくるの。どういう意味ですの……?」
ナターシャのその呟きが、しんと静まり返った部屋に虚しくこだまする。
ナターシャは知らなかったが、【不死鳥の舞】のメンバーは、ナターシャの態度に心底うんざりしていた。それをロゼが優しい言葉でフォローしていたのだ。
ロゼは、それこそ聖女の才能はなかったが誰よりも優しい心の持ち主だった。
「ロゼ……気に食わないわ……」
しかしこれが破滅の道へ進む第一歩だとは、すべてを見通す神しか知らなかった。
――バタン。
それから数分後、追い打ちをかけるように部屋の扉が開いた。残っていた別のメンバーだ。
「ナターシャ。ロゼもあいつらもパーティーを抜けたし、私も抜けるわ」
「は、はぁ!? あなたまで、なんでですの!?」
「何が原因だったか、よーく考えることよ。じゃ」
ナターシャの静止も虚しく、扉は再び閉まった。
「……どいつもこいつも、なんなのよ。何が原因? わからないわ……」
ナターシャは何が原因か必死に考えるが、結局日が暮れても答えは出なかった。
ナターシャは、もともと男爵家の一人娘だった。
願えばなんでも手に入れられて、わがままを言っても許されて、甘やかされて育ってきた。
でも、社交界に出て貴族の厳しさを知った。
初めて肩苦しい思いを知ったナターシャは、仕事をサボり使用人にわがままを言いつけ、なんとかこのストレスを抑えていた。
ある日、そんな生活に飽き飽きしてきたナターシャは、本で見た魔法使いに憧れるようになった。
親にお願いをして、無駄に高い防具や杖やポーションなどを買ってもらい、それらだけを頼りにBランク冒険者になった。
誰かの下につくのが嫌だったナターシャは、勇者パーティー【不死鳥の舞】を作った。
リーダーが強いのもあって、メンバーはすぐに集まった。
それを機にナターシャの自己中心的なところはさらに拗らせていった。
何か不満があればメンバーに八つ当たりし、敵と戦う時も目立とうとして、負けて、八つ当たりして……という悪循環を繰り返していた。
それをロゼが優しくなだめ、フォローをしていた。
「ロゼ……あなたが全ていけないのよ……!」
そんなことも知らないナターシャは、逆恨みの復讐に燃えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
遠くの森の奥が「カッ」と光る。それを天上界から覗き見ていた大地の神は、思わず声をあげた。
「えっ、ロゼちゃん解呪成功した!?」
「いや、大地の神様、あれは――……呪い自体を気合で破壊したんだわ」
「ほえー、力ってそんな応用もできるんですね!」
「いや、神である私も知らなかったわよ? とゆうか普通力ってそんなことに応用できないから」
解呪を成功したロゼは、戸惑いながらも喜ぶ。
「ほら、大地の神様。ロゼも何が起きたかわからない様子よ」
「やべー……敵にしたらダメなタイプですね」
「あぁ……ロゼ喜んでる……。口が裂けてもロゼにこのこと言えないわ」
聖女の神は呆れ半分気の毒半分のため息をつく。
「ほんとロゼ、ほっとけないわ――……」
大地の神はその言葉に、激しく同意するように首を縦に振る。
「お、なんで解呪できたのか考えてみるみたいですよ」
「あぁ、教えてあげたい教えてあげたい教えて……」
「落ち着いて聖女の神様! なんかヤバい色のオーラ出てるから!」
大地の神は別の意味でヒヤヒヤする。
そんな神のやりとりも聞こえないロゼは、なぜ今解呪ができたのか必死に頭をフル回転させて考えている。
「まぁでも……考え込んでるロゼも可愛いから、いいかな」
「よかった……オーラ収まった」
大地の神は安堵する。
しばらくしてロゼは、唐突に手を叩いた。
「えっ、わかったのロゼちゃん?!」
「あ――、「単純に私にも聖女の才能が現れ始めたんだ!」……いや、普通はそう思っちゃいますよね」
「バカ! 違うわ!!」
「聖女の神様ほんと落ち着いて!!!」
聖女の神の怒りオーラで周辺の木々がミシミシ音をたてる。
泣きそうになる大地の神をよそに、ロゼは帰る支度をしていた。
「ロゼちゃんは満足そうだけど、聖女の神様のせいで僕は最悪の1日だった――……ギャッ! やめて! 足を踏まないで!」
「あんたが悪いのよ」
こんなことをしている神には全く気づかないまま、ロゼは帰っていった。




