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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第ニ章

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第七話 静かなる視線

近衛隊副隊長、ディオン・アルヴェインの報告をきいて、報告書に目を通していたリオは顔を上げた。


「……何?」


「国王陛下がお忍びで城下へ出たようです。向かった先は木漏れ日ではないかと」


考える前に体が動いた。


書類の山が崩れて床へと散らばる。


気にする余裕もないまま、立ち上がる。


「ディオン、後のことは頼んだ」


「隊長!」


背中で彼が何か言っていたような気がするが、そのまま駆け出す。


嫌な予感がした。



エドガルドが木漏れ日に向かうなど目的は一つしかない。


アウレリアだ。


近頃彼女の周りでは、彼の興味を引く出来事ばかり起こっていた気がする。


騒動が起きれば見て見ぬ振りはできない。


それが彼女の性分であり、長所でもあると思っている。


だが、少し目立つ事は控えるように諭すべきだった。


いや、違う。


自分が彼女の手を煩わせる事なく対処できていれば。


ただの木漏れ日の店主として過ごさせてあげていれば。


不甲斐ない。


握った拳に爪が食い込んだ。


せめて自分が行くまでーー


リオは唇を噛んでなおもスピードを速めた。








「いらっしゃいませ」


飛び込むように入ると、店内は驚くほどいつも通りだった。


ただ、いつも訪れる夜と違って客の楽しそうな笑い声が聞こえる。


その声がぴたりと止まって、長身の女性が立ち上がった。


「今日はついてるよ。ヴァルノクス隊長を間近で拝めるなんて」


アウレリアは一瞬動きを止めたものの、自然に微笑んだ。


「今日は早くお越しですね。お休みですか?」


その姿を確認して、とりあえず無事で良かったと胸を撫で下ろす。


「ヴァルノクス隊長も通ってるって本当だったんだな」


カウンター席で食事をしていた青年が、驚いたようにこちらを見た。


その隣に座っているのは顔見知りのエリアスだ。


彼は店の奥に目配せをした。


どこか緊張しているようにも見える。



その時、強い視線を感じる。


よく知る気配。


店の奥に、見知った人物がいた。


王の側近イアン・グレイヴ


そしてーー


「近衛隊隊長がこんな昼間からやってくるとは、良い店のようですね」


穏やかだが無機質で、どこか冷たい声色。


その言葉に皮肉が滲んでいる事を、リオは知っていた。


ルクシオン国王、エドガルド・ルクシオン・レイヴァルドが、不敵に微笑んでいた。


その紫色の瞳は獲物を捕らえたようだった。

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