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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第ニ章

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第五話 忍び寄る影

緑の香りがする。


アウレリアは早朝、店の裏の森にやってきていた。


やはり朝日を浴びると気持ちが良い。


背伸びをしてから、念入りに辺りを見回す。


今の季節は様々な薬草が取れる。


籠に摘み取った薬草を入れながら、ふと動きを止めた。



洗練された足運び。


巧みに気配を消している。


どうしたものか。



悟られないように、再び手を動かす。


籠が一杯になると、アウレリアは店へと戻った。




静かにドアを閉めて振り返る。



わかったことがある。


様子を探っているのは、一人だけだ。


森から店まで、付かず離れず後をつけてきた。


目当ては間違いなくアウレリアだ。


どうやら、今のところ危害を加える気はなく、ただ見張っているだけのようだが…。


誰が、何の目的でーー


王妃がまたアウレリアに接触するとは考えにくい。


しかも彼女は、先日の騒ぎの際の心身の傷が癒えていない。


目を覚ましたが、療養をしているとリオから聞いた。


それに王妃ならもっと直接的な方法を取る。


先日の出来事がまさにそれだった。


この緻密に、じわじわと近づいてくる感覚。


まるで蜘蛛の巣のように、気づいた時には逃げられない。




まさか。



「エドガルド……」


かつての友人を思わせる気配だった。


気づかれたのだろうか。


いや、賢王エドガルドといえど、簡単にアメリアと死者であるアウレリアを結びつける事はしないだろう。


ならば、何かしら興味を持たれたということだ。


近頃派手に動きすぎた。


隠していたつもりだったが、隠しきれていなかったのだろう。


ーートントン


その時、裏口から控えめなノック音がした。


そっとドアを開ける。


「リオ?」


早朝から彼が訪れるのは珍しい。


彼は珍しく、汗を滲ませていた。


アウレリアの顔を見るとホッとしたように胸を撫で下ろす。


「シッ」と口元に指を立てて中に静かに招き入れた。


よっぽど急いでやってきたのだろう。


肩で息をしている。



「良かった。また居なくなってしまうかと」


「私が?なぜ?」


「先生が気づかない訳ないでしょう」


小声でリオは窓の外を指差す。


「今は認識疎外の魔法をかけてるから大丈夫よ」


「そうですか……」


リオは警戒を解いたようだ。


「じゃあ、リオにも尾行がついているの?」


「ええ。おそらく指示しているのは……」


「エドガルドよね」


アウレリアは小さく息を吐く。


「先生はあまり彼に会いたくないようでしたから…」


「だから居なくなると?」


「……」


アウレリアはリオの頭をポンポンと撫でた。


「そんな事はしないわ。それに、いつかは彼と向き合わないといけないと思っていたもの。絶対に黙って居なくなったりしない」


「それは黙ってでなければ居なくなるという事ですか」


じっとりとした視線はまるで子供が拗ねた時のようだ。


10年前を思い出して、少し笑ってしまった。


「笑わないでください」


慌てた姿を見せたのが恥ずかしくなったのか、リオは少し顔を赤らめて視線を逸らした。


すると、なぜかーー


アウレリアは手を伸ばしてリオの背中に回した。


「先生?」


少し驚いたようにリオが身じろぐ。


なぜか、抱きしめなくてはいけないような気がした。


「絶対に居なくならないわ。約束する」


きっと、10年前リオを傷つけた。


あの選択を今でも後悔はしていない。


でも、今度は絶対に傷つけたくないとアウレリアは思った。

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