第三話 弟ではいられない
店の外へ出ていく、アウレリアの背を見つめる。
ずっと剣を学んだのは自分のためだと思っていた。
強くなれば何にも脅かされない。
師の言葉を信じて剣を振り続けた。
しかし、アウレリアが居なくなったことで、全てが空虚になった。
どんなに強くなっても虚しい。
爵位を賜り、地位も名誉も得た。
しかし、満たされない。
その理由を彼女と再会して悟った。
自分は彼女を守りたかったのだ。
華奢な体で勇敢に一人で戦う少女の傍で共に剣を振りたかった。
力になりたかった。
10年前とは違う。
肩を並べられるほど、強くなったと思う。
手を伸ばせば届きそうな距離。
しかしまだ届かない。
いっそ、守らなければならないほどか弱ければ良いのに。
それなら、誰にも触れさせず、目に触れさせず、宝物のように守るのに。
リオは手のひらで顔を覆い息を吐いた。
まだまだ修行が足りない。
抑えていないと、触れて、抱きしめたい衝動に駆られる。
本当の家族以上の愛情をくれた人。
アウレリアは夜明けという光の名前をくれた。
だが、リオにとっての光は彼女だ。
かけがえのない最愛の人。
弟だと彼女は言った。
きっと、満足すべきなのだろう。
弟でいれば、きっとずっと傍に居れる。
だがーー彼女の特別になりたい。
もうこの感情は隠しきれない。
「………鈍いからな…先生は…」
いつか、弟ではなく、一人の異性として意識してもらえたらーー
リオは首を横に振った。
せっかく再会できたのだ。
これは紛れもない奇跡だ。
これ以上の奇跡を望んではいけない。
今度こそ、離れない。
絶対に守ってみせる。
それは、自分の名に誓った決意だった。




