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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第ニ章

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第一話 気づいてしまった

天気の良い昼下がりだった。


久々に自分の時間が取れた。


馬車に揺られながら、レオニスは先日リオがやってきた時の事を思い出す。 





「木漏れ日の店主を救って頂けませんか?」


まっすぐな、少し切実な銀灰色の瞳。


あんな顔は久々に見た。


まるで10年前、妹が生きていた時以来だった。


思い返せば、リオがレオニス個人に会い、話がしたいと望んだのは初めてだった。


リオはアルフェン家で少年期を過ごした。


だが、アウレリアがいなくなって以来寄り付かなくなった。


先日も怪我をした事を口実にセレナが無理に休暇を取らせ滞在させたほどだ。


昔は家族のようにここに居たのに。


いや、と首を振る。


本当に自分は家族のように接することができていただろうか。




アウレリアがリオを連れてきた時の事は鮮明に覚えている。




「お兄様、すごいのよ。私よりも年下で剣の心得なんか全くないのに、木の棒で狼を何匹も倒していたの。

すごく才能があるわ。弟子にして剣を教えても良いでしょう?」


自分のことのように目を輝かせていた姿は年相応の少女だった。


「アウレリアがそう言うのなら間違いないのだろう。お前に任せる」




アルフェン公爵の名を継いだばかりで、忙しく、半ば空返事のように返した事を覚えている。


だが、アウレリアはまるでプレゼントをもらった時のように嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「ありがとう!お兄様!」





今になってあの笑顔を鮮明に思い出す。


アウレリアの言葉は本当だった。


捨てられたも同然だった名もなき少年が、今は最強の騎士となっている。


彼がアルフェン邸を訪れないのは自らの職責を全うしているがゆえだ。


避けているわけではない。


逆に尽くしてくれている。


それは理解していた。


馬車が止まる。



窓から覗くと、遠目に見えるのは木漏れ日だった。


まだ客が賑わうまでには時間がある。


すると、箒を持った少女が姿を見せた。


アメリア・ルシア。


リオが救ってほしいと嘆願した少女だ。


たとえ、あの嘆願がなかったとしても、その境遇に気づけば、きっと救うために動いただろう。



彼女にはそれだけの恩がある。


息子を救ってくれた。


そして、もう一つの宝を与えてくれた。



だが、なぜ気がつかなかったのか。


初めてカイルを救うために訪れたアルフェン邸で、対面した時の既視感に。


仕草、口調、纏う空気。


姿が変わっても見紛うなどあるはずがない。



「アウレリア…」


レオニスは堪えきれず、目頭を押さえた。


本当は、菓子を作ったり、茶を飲んだりするのが好きな娘だった。


薬草に詳しく、よく集めていた。


知っていたのに。


なぜ、重責を背負わせてしまったのか。


兄弟の中で誰よりも才能に恵まれた。


アルフェンの剣、ルクシオンの剣である事を強いてしまった。


力が及ばずとも、支えるのが兄の役目だというのに。


普通の兄弟のように語らったり、笑ったり、外出したりすれば良かったと。


ずっと後悔していた。


妹が居なくなって10年も経つというのに、何をしていてもずっと心の片隅から、後悔がなくなる事がなかった。


ふと、掃き掃除をしていたアウレリアが顔を上げた。


馬車に気づいて、会釈をする。


レオニスと視線があった。


「すまない…」


聞こえているとは思えないのに、思わず呟くと、彼女は笑った。


10年前のあの花のような笑顔だった。


首を横に振る。


「ありがとう」と口が動いた気がした。

2章に入りました!

ここから物語が動き始めます!引き続きお付き合いくださいませ。

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