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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第一章

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第三十八話 英雄

温かいと思った。


人の温もりはこんなにも心地よい。


長い間忘れていた感覚だった。


「リオは……大きくなりすぎたわ」


見上げると、目が合う。


名残惜しそうに腕を離しながら、彼は所在なさげに目を逸らした。


「先生は……変わりませんね」


「ええ、おそらく、十年前のままね。でも、じゃあ今はリオの方が年上って事になるのかしら」


おかしな感覚だ。


見た目だけではなく、確かに十年の歳月を重ねている。


なんだか、おいていかれた気分だ。


アウレリアは焦燥感を薙ぎ払うように、視線を滑らせた。


先程の爆発で、かなりの音が響いていた。


兵達が異変に気づいて駆けつけるのも、時間の問題だろう。


アウレリアはぐったりと倒れているヴィオレッタに歩み寄った。


亡霊が全て消えると、彼女の姿が現れた。


まるで、力を流し込まれていたかのように。


助け起こすが、意識はない。


アウレリアはそっと手をかざし、魔力を流し込む。


淡い光がヴィオレッタの身体を包み込んだ。


外傷はすぐに塞がる。


だが、目を覚ます気配はなかった。


美しい黒髪が乱れて、無惨に土に塗れている。


「原因は王妃だったのですね」


リオはヴィオレッタの衣服が汚れて乱れているのに気がついて、目を逸らした。


「ええ、彼女は昔から魔術の才があったことは有名だったから」


「先生ほどではないでしょう」


「また、そんな言い方をして。でも——」


アウレリアは小さく息を吐く。


「魔力が強いからこそ、影響されたのでしょうね」


「……竜ですか?」


リオの言葉に確信があるのを見て、アウレリアは驚いて振り返った。


銀灰色の瞳が静かに見つめている。


「そう……気がついていたのね」


「ヴァレンティス教授にも話を聞いて、そうではないかと」


「……教授が言うのならば、やはり間違いはないのでしょうね」


当たってほしくない予想ほど、当たるものだ。


リオはアウレリアの言葉を待っているようだった。


既にもう当事者だ。


知る権利がある。


「リオ——」


言いかけた時、人の気配がした。




「これは、派手にやったな」


「貴方は……ガイアス?」


ガイアス・ゼルヴァーン。


アウレリアを王宮に連れてきた張本人だ。


捉え所のない風のような男は、紅眼を細めた。


「ほら、言った通り——美人じゃないか」


「え?」


リオが庇うようにアウレリアの前に出る。


「先生に軽口を叩くな」


「斬りかかってきそうな勢いだな。美人だから美人だと褒めただけだぞ」


リオの目がさらに鋭くなる。


ガイアスは苦笑した。


馬車の中で向けられた視線とどこか違うような気がして、アウレリアは頭髪を一房手にとって見つめた。


淡い金髪は、慣れ親しんだ色だった。


「気がつかなかったわ。元の姿に戻っていたのね……」


「星護の森の加護が薄れたのかしら」


「先生が自分で魔法をかけていたのではないのですか?」


振り返って、リオが疑問を口にする。


「ええ、星護の森で目が覚めた時には魔力は空だったから。今は六割くらいは戻ったけどね」


「それで六割かよ。さすが英雄様だな」


ガイアスが苦笑した。


「印象操作魔法のようなものだと思うのよ。きっと何か意味があるのだと思っていたのだけれど」


「星護の森が先生を隠そうとしていると?」


「ええ」


沈黙が流れる。


「その話は悪いが後にしてくれ」


ガイアスは上着をかけると、意識のないヴィオレッタを抱え上げる。


先程よりも顔色はずいぶんと良い。


回復魔法が効いたようだ。


「俺はこれからここに来る兵達を誤魔化す。王妃様もなんとかしないとな」


「なんとかって誤魔化せるの?」


「お前達の名前が出ないようにぐらいはできるだろ」


「どうして……」


「肩入れするのかって?」


ガイアスは不敵に笑った。


「まだバレたくないんだろ?」


一拍置いて——


「それに理由はそいつが知ってるよ。なあ、ヴァルノクス卿」


不敵に笑ったガイアスに、リオは眉を顰めただけだった。

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