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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第一章

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第十九話 木漏れ日の再会

木漏れ日の被害は思ったほど酷くはなく、食器が多少割れたくらいで済んだ。


軽く掃除をするくらいで済みそうだ。


アウレリアは床を掃きながら星護の森の様子を思い出す。


普段は大人しく、姿を見せない幻獣たちが森を出てまで人を襲うとは何か理由があるはずだ。


竜。


確かにあれは竜の気配だった。


あの気配が竜で、その気配に影響されたとすれば説明がつく。


先日の結界の揺らぎ。星護の森の異変。


思い至らない訳ではなかった。


しかし、10年前に命を賭してまで倒したはずの竜がまだ生きている。


考えたくなかったのかもしれない。


掃く手が、わずかに止まる。


それでも。


再び竜が現れたとしても、アウレリアはもう英雄ではない。


何もできない。


その時、懐かしい気配がした。


それが誰なのか、顔を見るまでもなくわかった。


ドアが開いてベルが鳴る。


アウレリアは顔を上げて、一瞬固まってしまった。


背丈が記憶よりも高い。


肩幅が広くなって筋肉がついた。


しかし、銀灰色の瞳の色は変わらない。


光を受けて揺れるその色は、静かで鋭く、それでいてどこか優しい。


端正な顔立ちは、男性ながら美しいと表現するのが相応しいと思った。


「すみません、この前の騒ぎで店の中が散らかっちゃって。まだ開店前なんです。初めてのお客様ですよね」


アウレリアは知らないふりをした。


大丈夫。慣れているから、上手くできる。


彼は店内を一瞥した後、アウレリアへと視線を向けた。


「ああ」


短い一言だった。


やはり、リオだ。


「いつもはもっと色々あるんですけど、せっかく来て頂いたので、お茶だけでも飲んでいきませんか?お菓子もクッキーならあります。ハーブティーお好きですか?」


わずかな沈黙。


「……えぇ。とても」


その答えを聞いた瞬間、胸の奥がわずかに揺れる。


「こちらへどうぞ」


椅子を引く。


リオは静かに腰を下ろした。


カップを選び、湯を注ぐ。


立ち上る湯気が、ゆっくりと空気に溶けていく。


音はほとんどない。


それでも、やけに静けさが際立つ。


カップを差し出す。


指先が触れそうになって、触れない。


「ああ」


受け取る手は、昔よりも大きくなっていた。


少しの間を置いて、カップに口をつける。


「……うまい」


短い言葉だった。


「よかった」


それだけのやり取りだった。


「……静かだな」


ぽつりと落ちる声。


「ええ。落ち着くって言ってくれる方が多いんです」


視線が一瞬だけ重なる。


すぐに逸らされる。


名前は呼ばれない。


確かめる言葉もない。


それでも、確かにそこにいる。


彼の目元が、わずかに緩んだ気がした。


優しい笑顔だった。

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