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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第一章

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第十八話 星の下で交わすもの

リオがアルフェン邸で過ごすことになって、三日が過ぎた。


セレナの申し出で与えられた休暇は一週間。


兵士になってから、これほど長く休んだことはない。


休めと言われても、何をすればいいのか分からない。


手持ち無沙汰になれば鍛錬をするが、長く続けると止められる。


――落ち着かない。


そんな夜だった。


「ねえリオ、時間ある?」


部屋に顔を出したのは、ルーカス・アルフェンだった。


「久々なんだしさ、ちょっと付き合ってよ。フィリオも非番なんだ。三人で飲もうと思って」


「ああ」


短く答えると、ルーカスは少しだけ意外そうに目を細めた。


「即答なんだ。そんなに暇?」


「……ああ」


「少しは否定しなよ……まあいいけど」


肩をすくめながら、ルーカスは笑った。


向かった先は、ルーカスの研究室――兼、天文台。


室内には本や書き物が山のように積まれている。


その山を崩さないように片付けているのは、部屋の主ではなくフィリオだった。


「ルーカスは、少しは片付けろよ」


「分かってるって。今やろうと思ってたんだよ」


「それ、何回目だ?」


呆れたように言いながらも、フィリオの手は止まらない。


三人は同い年だった。


身分も立場も違うが、こうして顔を合わせるときだけは昔と変わらない。


「料理と酒は用意してあるよ。義姉上の許可もちゃんともらってる」


机を寄せ、クロスをかける。


それだけで簡素ながらも食卓が整った。


並べられた料理はどれも見事だった。


「酒は分かるが、菓子まであるのか」


「リオが好きだろ? 甘いの」


「見た目は完全に辛党なのに、実際は甘党だったよな」


「……」


否定はなかった。


リオは並べられた酒瓶に視線を落とす。


「……悪くないな」


「でしょ? まあそこそこいいやつだからさ」


「そこそこで済ませるには高すぎるだろ。こういうの、普通はそうそう飲めないぞ」


フィリオが言う。


「それに、こんなものをよくセレナ様が許したな」


「義姉上はリオに甘いからね」


「オレを理由にするな」


「いいじゃん別に。減るもんじゃないし」


「……減る」


「そこ突っ込む?」


ルーカスが笑う。


「じゃあ、始めよっか」


グラスが触れ合い、小さな音が響いた。


酒が進むにつれて、空気は少しずつ緩んでいく。


「でもさ、リオが無事でよかったよ」


ルーカスが少しだけ声を落とす。


「あの日、妙な胸騒ぎがしてさ。それにアルフェンが見たことないくらい光ってたんだよね」


「……あの状況で、星を見ていたのか」


「避難命令は出てたけどね」


「相変わらずだな」


「褒めてる?」


「どうだろうな」


軽口が交わされる。


「そうだ、これ覚えてる?」


ルーカスが取り出したのは、小さな髪留めだった。


星を模した細工が施されたそれは、どこか懐かしい。


「……先生のものだな」


「うん。昔さ、オレが壊しちゃって」


「気づいてただろ、あの人」


「やっぱりか……ちゃんと謝ればよかったな」


ルーカスは小さく笑い、少しだけ視線を落とした。


「……直したのか」


リオが問う。


「うん。通りかかった人が直せるかもって言ってくれてさ。木漏れ日って店の店主」


「アメリア・ルシア、だったか」


フィリオが言う。


「薬も扱えるし細工もできる。あの年であれなら、相当だな」


「最初ちょっと怪しいかなって思ったんだけどさ、でも不思議と信用できたんだよ」


ルーカスは少し考える。


「見た目は普通なんだよ。髪も目も特別目立つわけじゃないし」


一度言葉を切る。


「でも、なんか印象に残るっていうか……気づくと目で追ってる感じ」


「……まあ、わかる気はする」


フィリオが頷く。


リオは短く問う。


「……どんな人だ」


「珍しいな、リオが他人に興味持つなんて。落ち着いててさ、一緒にいると安心する感じの人」


少し間を置いて、ルーカスが続ける。


「似てるっていうのとも違うんだけどさ」


「……あの人に通じるものがあるのかもな」


フィリオの言葉に、空気がわずかに止まる。


「見た目は全然違うのにね。不思議だよ」


「……ああ」


リオはそれ以上言わなかった。


アメリア・ルシア。


会ったことのないはずの名。


だが、その響きが妙に引っかかる。


リオは静かにグラスを置いた。

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