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十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび
第一章

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第十六話 星が瞬く夜

星紋鹿の姿が見えなくなると、星護の森に静寂が広がった。


乱れていた魔力の気配も、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。


安堵したように、兵士たちが胸を撫で下ろしたそのときだった。


リオ・ヴァルノクスが、その場に崩れ落ちた。


「隊長!」


副隊長のディオン・アルヴェインが咄嗟にその体を支える。


その様子に、先程神獣を鎮めたローブの人物がハッとしたように振り返り、駆け寄ってきた。


膝を折り、リオの容態を確かめる。


意識が混濁している。


固く閉じられた瞳。


長い睫毛が小刻みに揺れていた。


端正な顔が苦痛に歪んでいる。


「このままでは、長く持たないわ」


その声で、周囲の兵士たちは初めて気づいた。


先程までローブに身を包んでいた人物が、若い女性であることに。


彼女の掌には、べっとりと血糊が付いていた。


「隊長……」


ディオンの顔色も、リオに負けず劣らず蒼白だった。


ふう、と息を吐くと、ローブの人物は何かを決心したように呪文を詠唱する。


すると、淡い光がその手から発せられた。


「……無駄です。隊長は治癒魔法が効かない体質で……」


ディオンが絶望したように言う。


だが彼女は、静かに首を横に振った。


「大丈夫、助かる。……いいえ、助ける」


そのときだった。


天頂に輝く双星の片方の星が、青白く光り輝いた。


まるで、力を貸すと言わんばかりに。


まるで、彼女の願いに応えるように。


その手の治癒の光が大きくなる。


すると、どんな魔術も無効化するリオの体の傷が、ゆっくりと癒え始めた。


光が温かく包み込み、そして彼の体へと吸い込まれていく。


リオの顔に赤みが差し始めた。


「傷が……」


ディオンは信じられないというように、彼女を見つめる。


彼女は安堵したように立ち上がった。


「一先ずは安心よ。早く怪我した人たちと……隊長を休ませてあげて」


「あの、待ってください」


それだけ言い残し、彼女は足早に立ち去ろうとする。


ディオンが呼び止めようとするが、彼女は振り返らない。


そのまま森の奥へと姿を消した。


「良いものを見た。一生かかっても見ることができるかわからない幻獣だ」


エリアスは夢中で星紋鹿をスケッチしているようだった。


鞄から分厚い本を取り出し、スケッチと見比べている。


こんなに物が入っていては、鞄がはち切れそうになるのも当然だ。


「実際の模様はこうで、文献と少し違うな……歩くと光の粒が落ちるのか」


ぶつぶつと独り言を言いながら書き込んでいく。


根っからの研究者なのだろう。


アウレリアは脱いで綺麗に畳んだローブをエリアスに差し出した。


「ありがとうございました。汚れたり、破れたりはしていないと思いますけど」


「そんな事は問題ではない。君のおかげで貴重なものをじっくりと観察させてもらった」


「そんなに感謝されることしていませんよ」


「いや。星紋鹿を本来の姿に戻したのは君だ。神聖で美しい研究材料を、じっくり観察させてもらったよ」


見透かすような確信を持った瞳が、アウレリアを見つめる。


「……それは事実ですね」


「否定しないのだな」


「全部見ていた人に否定しても意味がありません」


「それは、そうか。ところで君は……何者だ?」


エリアス・ヴァレンティスは裏表のない、率直な人間のようだ。


少なくともアウレリアは好感を抱いた。


「アメリア・ルシア。木漏れ日という……ただの小さな店の店主です」


その返答に、エリアスは「そうか」と一言頷いただけだった。

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