魔王、決闘する 異世界百二十日目
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狩人組合の中には当然、狩人達が出入りし様々な獲物が持ち込まれる。組合は獲物や薬草を査定して、狩人達に対価を支払う。そして、狩人組合はモンスターの素材や薬草、希少鉱物等を各組合に販売して利益を得ていた。凶暴なモンスターと対峙するのは勿論、薬草採取でもモンスターや野獣に襲われる事も有り得る。だから、狩人達はある程度の戦闘能力を持っていた。たとえ、下位の狩人でも素人よりは強く、それゆえに間違った方向に粗野な者も存在する。そんな狩人達が獲物を見つけた。
明らかに意地の悪そうな笑みを張り付けた男が、受付に向かうアデルの前に立ちはだかった。
「お嬢ちゃん、こんな所に何の用かな。大人の俺達が力になるぜ。」
「カイン、排除して。」
アデルの吐き捨てる様な言葉にカインは頷きもせず、アデルの前に立っている男の顎に拳を叩き込んだ。ここにいる何人がカインの拳を見ただろうか。崩れ落ちる男の襟首を無造作に掴むと、入り口へ引き摺って行った。カインは扉を開けると、男を片手で放り出した。その光景を見ていた何人かが立ち上がった。
「小僧、よくも・・・。」
「まて、良く考えろ。何が起こったか見えたやつはいるか。何かして気絶させたのは良いとして、あの小僧の体格で、片手で奴を投げたぞ。」
「あら、意外と冷静なのもいるのね。カイン、あの男はどうしたの。」
「投げた場所が悪かった。丸太に当たって変な音がしていた。生きているとは思う。」
アデルが常駐クエストである薬草類と害獣の討伐依頼の報告をして、カインが害獣とされるハンターウルフの五枚の毛皮を納めて立ち去ろうとした。
「気を付けてね。貴方達のパーティーには亜人種がいるでしょ。しかも、女の子。領主の息子に見つからない様にしてね。」
「ええ、気を付けるわ。カイン、軽々しく決闘を受けないでね。」
「それはフリか。絶対にフラグだろ。」
本当に心配そうな表情を浮かべて言う受付の女性の言葉に、アデルは受け流す様に答えるとカインを見た。軽口を叩かくカインと出て行くアデルの背を、受付の女性は心配そうに眺めていた。
旅に必要な物資の買い出しを終えたニーナ達は、露店で大量の肉串を買い込んで、テーブルセットを出してその味を楽しんでいた。カインとアデルも合流し、市場についてミリアンとエレンから報告を受けていた。
そこへ、一人の上等な服に身を包んだ男が足を止めた。男はニーナ達を舐める様に見詰めると、口元を厭らしく歪めて舌なめずりをした。
「これは、これは。中々に美形揃いではないか。亜人といえど、ここまでの美形は希少。決めた。僕の玩具にしてやろう。」
「ほら、やっぱりフラグだったろ。」
「あら、カイン。お貴族様から決闘を申し込まれたらどうするの。口を慎んで。」
男が理不尽な事を口にすると、カインがうんざりした様に呟いた。アデルは口元に笑みを浮かべながら、震える声でカインに告げた。
「人族の二人は去れ。その獣人族の男は奴隷にしてやろう。そして、雌どもは僕の玩具だ。」
「お、お貴族様。彼女たちは俺じゃなかった、僕の大切な仲間です。渡すことは出来ません。」
完全にニーナ達を見下して言う男の言葉に、カインは怯えた様に震えた声で返した。その様子を見ていたニーナ達の顔には、大きな疑問符が貼り付いていたように見えた。
「そうか。ならば、決闘だな。女達を賭けてこの僕と決闘してもらおうか。」
「そんなぁ。お、僕がお貴族様に勝てる訳が無いではないですか。」
「ふん、決闘を受けねば僕の要求を飲んだ事になる。ならば、女達は僕のものになる。良いのだな。」
「うっ、それならば受けます。」
既に勝ち誇った様な男には、カインは恐怖する少年に見えた事だろう。ニーナ達の顔には、大量の疑問符が貼り付いていた。
「はっ?受けると言ったか。賭けるのは女達と獣人の奴隷契約だ。日時と場所はお前が決めろ。」
「その前に、良いかしら。私達は彼のパーティー。即ち、家族よ。貴方が賭けるのは、貴方の家族の命と言う認識でいいのかしら。」
「勿論だとも。父上、母上。それに、弟に妹。なんなら、使用人達の命も賭けてやろう。貴族からの決闘を受ける事の意味を知っているのだろう。」
「聞いたかしら。確か、彼は伯爵家の嫡男。今後は此処の伯爵家が後ろ盾になってくれるなら、願っても無いチャンスだから。しっかり、叩き込んでやりなさい。」
「何か恐ろしい未来をかんじるのじゃ。」
男達ととアデルのやり取りに、ニーナは何かを感じた。怯えた様な雰囲気を出すカインの表情は、俯いているためうかがい知れない。
「良かろう。賭けるのは互いの仲間と家族の命。立会人は誰だ。」
怯えていたさっきまでとは打って変わって、カインは堂々とした声で野次馬達に声を飛ばした。誰もカインから怯えが消えたと気付かない。すると、初老の男が右腕を上げながら、周囲に頭を下げなら数歩だけ出て来た。
「私は商人組合の査察官です。この決闘の立会人となりましょう。さて、挑まれた方には時間と場所を決める権利があります。何時、何処で決闘をされますかな。」
「場所はここだ。」
カインの言葉に、何の感情も読み取れない。まるで、機械の自動音声の様に聞こえた。野次馬達から小さなどよめきが沸き起こる。娯楽の少ないこの世界では決闘は最高の娯楽と言えた。
カインはゆっくりと腰裏に手を回して、無表情に無言で黒いナイフを抜いた。右手のナイフを器用に回して逆手に持つと同時に、左手も黒いナイフを抜いて貴族の男へ向けた。
「時間はたった今だ。」
「へっ?」
初老の男が妙な声を出すと同時に、野次馬からも、貴族らしき男からも妙な声が上がった。心配そうに見つめるニーナ達とは違い、アデルは眉間に指を当てて俯いた。そして、カインはゆっくりと顔を上げると、真紅の眼が貴族風の男を貫いた。
「合図だ。」
「ザコエラ様。剣を抜いて構えて下さい。あ奴、やる気です。」
義務的に督促したカインに何を感じたのか、取り巻きの騎士の一人が叫ぶ様に言った。その叫びに触発されたのか、初老の男が右手を挙げてから振り下ろした。
「始めっ!」
次の瞬間、カインの姿はザコエラと呼ばれた貴族らしき男の背後に現れた。両手のナイフを腰裏の鞘に納めたカイン。野次馬も騎士達も、ザコエラ本人でさえも、何が起こったのか判らないといった表情を浮かべていた。
「カインが速神天を使えば、時速百キロを超える。秒速約二十八メートル。十メートルも離れていなければ、コンマ数秒。ゼロから最高速まで瞬時に加速。まるで、Gの様ね。」
「心外だ。」
「ん、G確定。」
呆れた様に呟くアデルの言葉に反応したカインと、妙に納得顔で大きく頷くティア。ギルスとエレンの眼は大きく見開かれ、ミリアンはその手で口元を隠していた。
「立会人。勝敗を宣言しろ。」
「へっ。しかし、まだ終わっていな・・・ひっ!」
カインの言葉に初老の男が応じた時、ザコエラの首が地面に落ちて辺りを赤く染めた。騒いでいた野次馬からも、一斉に息を飲む音が聞こえた。
「ねえ、カイン。こいつが賭けたのは家族の命よね。どうするの。まさか、皆殺し。」
「まさかな、命を助ける代わりに、俺達の後ろ盾に成って貰うつもりだ。」
「息子を殺されて後ろ盾になるかしら。」
「まあ、お抱えの騎士達と屋敷を半壊させれば、大人しく納得してくれるだろう。」
「この馬鹿息子の親に同情するわ。」
カインとアデルが何気ない様子で話している間に、ニーナ達は十人近くの騎士によって取り囲まれた。状況を察したニーナ達は既に、真剣な面持ちで武器に手を掛けて腰を落とした。いくら決闘だったとはいえ、護衛対象が殺されては騎士の面目が保てない。まして、貴族が殺されたとなると、誰もが納得するだけの理由が必要になる。
ニーナ達の表情が更に硬くなり、野次馬達も息を飲んで未来を思い浮かべた。
「妾も覚悟したのじゃ。やってやるのじゃ。」
空♂:やっと、決闘したのだ。
ア♀:悠長にやっていると寿命が尽きるわよ。
空♂:えっ、それまでには終わるけど・・・。そんなに、寿命が近い?
ア♀:知らない。今の生活態度で健康が維持できるならいいのでは。
空♂:なら、いいのだ。
ア♀:インスタントラーメン、年間消費量は?
空♂:四百食以上?
ア♀:ここ十年で休肝日は?
空♂:三日?かも。
ア♀:毎日の有酸素運動は?
空♂:皆無?あっ、通勤に片道十五分は歩いているのだ。しかし、にゅう。
ア♀:まだまだ、続きます。
空♂:生活態度・・・




