魔王、買い物をする 異世界百十八日目
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ニーナ達は門番から教えてもらった宿屋に向かい、二組に分かれて部屋割りを決めた。宿屋の女将がカインから受け取った銅貨と銀貨を数え終えると、真剣な面持ちで周りを見渡して小さな声で話し始めた。
「あんた達はあまり出歩かない方がいいわよ。色ボケの領主の息子は、見目麗しい女性を見ると決闘を仕掛けるのさ。そして、抵抗できない相手を、嬉々として叩きのめすの。」
「悪趣味ね。でも、カインに挑めば死ぬ以外の選択肢がないのよ。」
「貴族に勝てば色々と面倒な事になるで。さっき、言われた事やで。」
宿屋の女将の言葉にアデルが答えると、トロンが少し慌てた様に手を振りながら答えた。腕を組んで考え込むニーナと、首を横に振る呆れた様なギルスとエレン。
「挑戦者には死あるのみ。」
綺麗にはもるカインとティアを見て、大きな溜息と共に項垂れたミリアン。そんな時間の後、ニーナ達は旅の追加物資の調達に出た。
辺境区の大きな町では、様々な物が売られていた。ニーナ達は狩人組合で討伐した獲物素材を換金した。組合からの報酬に、トロンの眼が妖しい光を放った。アデルの視線を感じたトロンは、わざとらしい咳払いをしてから腰に手を当てた。
「おほんっ!ハンターウルフにゴブリン、オーク、オーガ。それだけ狩って無傷とは、あんさんらやるな。」
「まだ、あるのだけど、出すと騒ぎになるから。青銀等級になってからね。」
「そ、それは青銀等級のモンスターを狩ったって・・・。」
「声が大きい。」
数枚の金貨と数十枚の銀貨と銅貨を見て、目を輝かせたトロンはニーナ達の実力を知った。更に、アデルの言葉に驚くトロンに、カインはマジックバッグから何かの鱗を見せた。アイテム鑑定が出来るトロンの眼が、限界まで開かれた。アデルは唇に人差し指を当てて、微笑ながら静かにトロンを制した。
狩人組合を出てニーナとミリアン、ティアにトロンが加わって、ギルスとエレン、カインとアデルの三組に別れて市場に向かった。ニーナ組は食糧や調味料、ギルスとエレンは投擲ナイフ等の消耗品を、カインとアデルはその他の必要物資の入手と役割が決まった。
「トロン。無制限ではないからね。しっかりと、選んでね。」
「判ってるて。お嬢ちゃん達の暴走を止めんねんやろ。」
「エレンもギルスを見ていてね。」
「俺、節度あるって言われるし。」
「私はカインね。」
アデルの言葉はニーナ達には届いていない様に見えた。はしゃぐニーナの横でギルスが不服そうに口を尖らせ、飛び火したカインは無言でアデルを睨んだ。そして、市場で別れたニーナ達は、アデルの予想とは裏腹に野菜や肉をバランスよく入手して、トロンは目を丸くして驚きをその顔に張り付けた。
「む、お菓子。」
「うにゅう、カインの出すお菓子の方が美味しそうなのじゃ。」
「ん、肯定。むむ、肉。」
「鴨の肉なのじゃ。これは買うのじゃ。」
そして、ギルスとエレンは狩人組合で聞いた道具屋に来ていた。剣に槍、手斧にハルバート、フルプレートメイルに様々な盾が並ぶ店内で、ギルスは小さなメモを出した。
「エレンの矢とカインの投擲ナイフだな。」
「カインは投擲ナイフを全種類って言っていたな。」
「あいつ、凄いよな。どんな形のナイフでも投げて、的に当てていたぞ。」
「うむ、あのブーメランは弧を描いて飛ぶのに、全てを中心に当ていたな。」
旅の途中、日課の朝練で、カインは投擲ナイフの練習をしていた。投げナイフは勿論、クナイや十字手裏剣、小型のブーメランナイフや円形のチャクラムで的を貫いて見せた。
「エレン、これも投擲武器らしいが。」
「取り敢えず、買って帰ろう。」
二人は鋭い先端を四本備えたいわゆる、撒きビシを不思議そうに眺めてから購入した。その他にも、捻じれたドリルの様なものや、五寸釘の様な針、トランプカードにしか見えない金属製の薄い板などを買い込んだ。そして、カインとアデルは魔法で様々な効果を付与された道具、魔道具と呼ばれるアイテムを取り扱っている店に来ていた。
「けっ、子どもがこんな所に何の用さね。ここは子どもがお小遣いで買えるような物はないさね。」
「素材と物々交換でも良いかしら。」
「そりゃいいけど、ゴブリンの魔石なら数十万個は必要さね。」
「カイン。お願い。」
黒いローブに黒い鍔広のとんがり帽子、顔に刻まれた深い皺が高齢だと告げる。しかし、その眼光は鋭く、何もかも見通しそうに思えた。カインは何事かを小さく注美焼きながら、袋からバスケットボール程の眼球を取り出した。
「誰が糞婆さね。あたしゃぴちぴちの二百六十才さね。ひょっ、こ、これは。」
老婆の年齢を聞いたカインは、アデルを見てから吹き出した。次の瞬間、カインの背から、アデルのレイピアが生えていた。
「次は心臓を貫くわよ。」
「今のも避けなければ心臓だったろ。痛いから止めてくれ。」
「顔色一つ変えずに言われても説得力がないわね。」
「お、お前さん、大丈夫かね。胸を刺されているようだが。」
「問題ない。」
目の前で繰り広げられた光景に驚いた老婆は、ダメージをものともしないカインよりアイテムに興味を移した。本来なら大怪我どころか致命傷になりかねない傷を気にした風も無く、カインは数種類のアイテムをカウンターの上に並べた。
「サイクロプスの目玉に角。こっちはレッサーフェンリルの毛皮。爪も牙も付いてるさね。」
「足りるかしら。」
「勿論さね。サイクロプスの心臓と肝臓をつけてくれれば、好きなだけ持って行くがいいさね。」
「それはどうも。カイン、ついでに一つ目の肋骨と腕と足の骨も出してあげて。」
追加の内臓と巨大な骨が並ぶと、老婆は不気味な踊りを踊り始めた。踊る老婆を無視した二人は、別れて店を物色し始めた。アデルは数種類の道具をバッグに入れると、魔道具を手に取って眺めているカインに頷いた。すると、カインは手当たり次第に、置かれている魔道具をバッグに無造作に叩き込んだ。
「根こそぎって。お前達。」
「好きなだけって言ったでしょ。」
「確かに言ったが、それはマジックバッグだと判ったけど、そんな容量を持っていたなんて思わなかったさね。」
「そうね。やり過ぎだったかもね。カイン、もう一つぐらい出してあげて。」
呆然と呟く老婆の言葉に、涼しげに答えるアデル。そんなアデルの言葉に、カインはバッグから古惚けた杖を取り出した。
「こっ、これは。ノーライフキングの錫杖。レジェンダリーどころか、ミソロジークラスのアイテムさね。」
「お釣りに、各硬貨を百枚ずつ貰えるかしら。」
「勿論だともさね。白金貨は三枚しか持っていないさね。」
「それは一枚でいいわ。貴方にも現金が必要でしょ。」
そう言うと、アデルは老婆が積み上げたお金の大半をバッグに入れ、残りを釈然としない表情を浮かべたカインがバッグに入れた。
「何故、三割しかない。」
「貴方の無駄遣い対策。さあ、次はギルドに行くわよ。」
釈然としない表情のカインを連れて、アデルは狩人組合に入った。アデルの綺麗な顔立ちは男達の目を引き、その見た目の年齢は好奇心と加虐心を膨らませた。
「妾はちゃんと節約しながら、食糧を買って来たのじゃ。肉串を買ったのはアデルには内緒なのじゃ。」
ア♀:ペースは変わっていないみたいだけど。
空♂:にょ、先週、投稿しようと思っていたのだ。
ア♀:どうして投稿しなかったのかしら。
空♂:だらだら過ごしていたら、今日になってしまったのだ。
ア♀:はぁ、まだまだ続けます。




