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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『同じ人間じゃないからやりやすいのかな?』
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第80話

「なにを!」


 魔法陣の大きさは発動される魔法の強大さに比例します。現れた魔法陣が大きければ大きいほど大量の魔力が注ぎ込まれていて、魔力をあまり使わない魔法であればそもそも魔法陣が現れません。

 もちろん、魔法陣を隠すこともできますが一つの指標にもなります。

 しかし、ヒュドラの放つ魔法ですから耐えられると判断して攻撃を止めることはしません。

 思い切り振りかぶった大剣を力の限りヒュドラの体へ突き立てます。

 竜であるだけあってびっしりとウロコに覆われ、靴を挟んでも感じられる硬さがありますが、剣は見事にヒュドラの体へ傷を刻み込みました。

 次の瞬間、湖全体で巨大な水柱が立ち上りました。


「ごぼぼぁっ!」


 一瞬でワタクシは水の中です。

 元々が湖の水でヒュドラの毒に侵されていて、毒素と臭いだけでも強烈です。

 咄嗟のことで息を溜めることもできず、鼻から口から水が流れ込んで来ました。いつまでも水の中に囚われ、流れる水に体勢を立て直すこともできません。

 そしてようやく解放されたかと思うと、空に打ち上げられただけでした。相当高くまで飛ばされたようです。

 眼下でヒュドラの九つの頭がワタクシを待ち構えていました。


「ギャラララアア!」

「やりますわね……!」


 油断していたのは否めません。しかしそれもこれで終わりにしましょう。

 体勢を立て直し、大剣を下に構えます。そしてそのまま、ワタクシを丸呑みにしようと待ち構えていたヒュドラの口の中に飛び込みました。

 小さな体のワタクシはヒュドラに一噛みもされることなく飲み込まれ、一瞬で視界が真っ暗になりました。

 生暖かく、柔らかいヒュドラの喉に包まれています。飲み込もうと喉が動いています。

 そしてこれも毒なのか、肌が少しだけピリつきました。酸の類であれば、このままだと体まで溶かされてしまうかもしれません。

 魔力を練り上げ、内側からヒュドラの喉を蹴り抜きます。同時に、無理矢理に大剣を動かして肉を切り裂き、喉から脱出します。


「……気持ち悪いですわね。お風呂と洗濯がもう恋しいですわ」


 ヒュドラの放った魔法でずぶ濡れになり、飲み込まれて唾液まみれ。そして脱出する時の返り血まで。

 ぬるぬるするやら臭いやらテンションはダダ下がりです。服も少し溶けているようでした。

 このドレスはもう着られないでしょう。

 噛みつこうとしたヒュドラの頭を殴り飛ばします。その間にワタクシを飲み込んだヒュドラの首も再生していました。


「さてどうしましょうか……」


 ヒュドラがまったく湖から出ようとしないのは厄介です。

 再生能力を上回る攻撃を食らわせるにも、再生の要となっている核を破壊するにも、水上にいられるとそれらが難しいです。

 巨大なヒュドラの体で戦おうにも、途中で湖に叩き落されてはその後が大変です。

 それなら引っ張り出すしかないでしょう。身体強化の魔法を使えば不可能ではないはずで、幸いにもヒュドラの首は九本もあって引っ張りやすいことこの上ない体です。

 大剣を四次元ポケットにしまってヒュドラの攻撃を待ちます。

 警戒しつつこちらを見ていたヒュドラでしたが、いよいよ痺れを切らして三本の首を伸ばして来ました。

 最初と二番目を弾き飛ばし、最後の頭を抱え込みます。


「ギャアアア! グラアアアア!」


 腕の中でヒュドラが暴れます。抑えられないほどではありませんが、やはり恐れられる魔物だけあって気を抜くとすぐに振り解かれてしまいそうです。

 牙がガチンガチンと噛み鳴らされ、吐く息は鼻をつきます。

 やはりヒュドラの吐く息すべてに毒の成分があるのでしょうか。少し気持ち悪くなってきました。

 正面から抱えているのをなんとか脇に持って行き、力の限り締め上げます。すると、小さな鳴き声を上げて大人しくなりました。


「ぐぅ!」


 力の限り引っ張ります。

 最初はヒュドラの首も伸び、するすると後ろへ引っ張っていけました。ここまでヒュドラの首が伸びるとわかっていたので想定内です。

 抱えている首も抵抗していますが大したことはできません。

 その他の首が解放させようとワタクシを襲って来ますが、その度に蹴ったり殴ったりで弾き飛ばします。水流を放たれた時は覚悟を決めて受け止めるだけです。

 八本の水流はキツイ攻撃ですが、腹を括れば耐えられないことはありません。

 そしていよいよ、ガクンとなにかが引っかかるような感覚があり、これ以上引っ張ることはできなくなりました。ここまでがヒュドラの首の限界でしょう。

 ここからが本番です。

 身体強化の魔法を発動して一息にヒュドラの首を引っ張ります。

 すぐ傍のヒュドラの口からくぐもったような苦しい声が聞こえてきて、こちらの気持ちが滅入っていましそうです。せめて苦しませるのは一瞬で。

 そう思って再び腕に力を込めると、さっきまでワタクシを狙っていた八本の首が今度は、ワタクシが引っ張っているその首の根元に噛みつき始めました。

 八つの口で噛み千切れば一瞬で首は胴体から引き剥がされます。


「トカゲの尻尾切りですか……本当に面倒です」


 見る見るうちに新たな首が生えてきました。

 どうしたって湖からは出たくないようです。ここまでくると俄然、その理由が知りたくなってきました。


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