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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『同じ人間じゃないからやりやすいのかな?』
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第76話

 たまにものすごく手配書が出される時があります。

 あまり放置したり後回しをしたりはしたくないですし、放っておくとあまり良いこともないのでそういう時はてんてこ舞いです。

 一度、色々な事情が重なって手配書を溜め込んでしまった時は、近い地域のターゲットをキッチリ整理してまで処理をしましたが、もう二度とあんなことはゴメンです。

 なので今では逐一仕事をして手配書を溜めないようにしています。

 それとは逆に、ほとんど手配書が新しく出てこない時もあります。そういう時は休暇と割り切るのが良いです。

 そして最近はそんな感じで暇していて、もっぱら楽器を弾くか釣りをするかの生活でした。

 我ながらビックリですがハマってしまったのか釣りの時間が多く、なにもしない時間にも慣れてきました。

 そんな時です。


「これは……合っているんですかね?」


 久しぶりに手配書が出てきたかと思ったら、これまでにないパターンの手配書でした。

 ポイントは十五ポイント。格別高いわけではありませんが、かと言って低いわけでもありません。

 手配書に書かれていたターゲットとはヒュドラ。

 場所はコートミールでした。


「魔物……ですか」




 懐かしきかなコートミール。かつてワタクシとスリットが死闘を繰り広げたあの武闘大会が開催された町です。

 この体になってから時の流れというものをあまり気にしなくなっています。ワタクシの家は雲の上で、世界中をふよふよ漂っているのもあって季節の移り変わりもなく、余計に時間の流れに無頓着になっていました。

 なのでかつて大会が行われてから一年以上が経っていました。

 今年の大会はどうだったのでしょう。

 去年は連続優勝がかかっていたリーウェンはワタクシが殺してしまい、自慢じゃないですがやはりワタクシとスリットが派手に戦って話題だったでしょう。

 スリットは今年は参加したのでしょうか。そうでなければ、目玉となるような選手がいなくて地味な大会になったかもしれません。

 どうしてそんなことを考えるのかと言うと、


「おい、アレ……」

「確か去年、優勝した子供か?」

「優勝したのは子供じゃないだろ」

「そうだっけか?」


 なんて話がひそひそと耳に届いていたからでした。それも何度も。

 我ながらスリットと派手な戦いをした自覚はあります。そしてこんなに可憐な少女が準優勝するほどの実力を持っているのですから話題性は十分でしょう。

 しかし今年の大会よりも去年のワタクシのことが話題になるとは。

 関係ないですがこんな調子で、武闘大会を観光資源としているコートミールは大丈夫なのでしょうか。心配になります。

 とは言えいつまでも武闘大会の話をできるのは平和な一般市民だけ。

 そんな市井と違って冒険者ギルドは慌ただしかったです。魔物を倒したりと、地域の安全にも寄与している冒険者ギルドが慌ただしいと、不安になります。

 この時ばかりはその原因にも心当たりはありますが。

 依頼の貼り出されているボードに行くとでかでかと、ヒュドラ討伐の依頼がありました。これを目当てに今回はギルドまで足を伸ばしたのです。

 世界の脅威になるくらいのヒュドラであれば、討伐の依頼が出るのは当たり前です。

 なので神様からのポイントと冒険者の報酬。どうせ倒すのなら両方もらいましょう。

 相当急ぎなのか、他の依頼書の数倍の大きさの紙で、ほかの依頼書の上から貼り付けられています。ギルドが慌ただしいのもヒュドラが原因でしょう。

 それにしては町の人達は平和でした。まるでなにも知らないかのように。

 いえ、本当にヒュドラであればパニックになるのを避けるために情報は伏せられるでしょう。

 ヒュドラと言えば九本の首を持つ恐ろしい魔物。それぞれの首が意思を持ち、毒まで吐くその魔物は並の冒険者では歯も立たないことでしょう。町一つ潰すくらいなら簡単なはずです。


「ヒュドラの依頼、受けさせていただきますか?」

「……あなたが、ですか?」


 対応に追われてアタフタしていても依頼の受付を蔑ろにできるわけはなく、カウンターの一人だけが暇そうにボケっとしていました。

 ワタクシの言葉をすぐには理解できなかったようなのでもう一度伝え、そこでようやく頭にまで届いたようです。


「あの……ヒュドラがどんな魔物か知ってますか?」

「当然です。五十万リリンでもちょっと安いかと思うくらいですわね」

「それならなんで……」

「ワタクシなら倒せるから、です。他にやる人もいないんですよね? 他の冒険者は逃げたか食べられたか、そうでしょう?」


 コートミールは武闘大会中に集まる冒険者が一気に依頼を受けるので、普段は依頼はあまり多くないようです。

 それならばここを拠点にしている冒険者が少ないのもうなずけますが、それにしたって少ないです。

 今ギルドにいる冒険者は片手で数える程度。

 それほど小さな町ではありませんので、これでは普段の依頼も回らないでしょう。

 ワタクシの指摘が間違っていないと証明するように、受付の人は言葉を失っていました。


「人手が足りないならワタクシにも受けさせてくれても良いのではないですか?」

「それにしたって……」


 冒険者の依頼は最終的に受付に受理されなければ受けたことになりません。

 なのでこの受付が認めてくれなければヒュドラを倒しても無駄になってしまいます。

 これまでのワタクシはそれほど難しい依頼は受けなかったので、この姿でも依頼は受理されてきました。

 しかしこうなることを考えて適当な大人に変装でもするべきでしたね。

 後悔するワタクシと悩む受付。その均衡を破ったのはたまたま通りがかった別のギルド職員でした。


「あれ、もしかしてアマル・フリステラさん?」

「はい。そうですが……」

「去年の大会の準優勝者! 優勝確実だったのに急に姿を消した謎の幼女アマル・フリステラさん!」

「ええ……そうですが」


 謎の幼女なんて思われていたのですか。

 せめて運営になにか一言でも残して帰るべきだったでしょうか。


「彼女ならヒュドラを倒してくれるかもしれない。お願いします! 町を救ってください!」


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