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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『少し雲行きが怪しくなってきたねぇ……』
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第65話

 部屋に戻り、準備をします。

 準備と言っても大したことはありません。簡単に汗を拭って大剣を背負うくらいです。

 こちらの世界で暮らして長くなり、すっかり湯船に浸からないことにも慣れてきました。町によっては公衆浴場がない所も多いので、二日三日なら濡れタオルで汗を拭うだけで十分です。

 神様製だからか、生地がたっぷり使われたドレスも群れるようなことはなく、良く汗をかくのもガントレットの中くらいです。

 しかしすぐさま部屋を出るようなことはせず、少し待ちます。

 ないとは思いますがおばあさんが部屋に来る可能性もありますし、そうなったら騒ぎになるかもしれません。老人なら少し待てば寝てくれるでしょう。

 その間、雨戸を細く開けて窓から町の様子を眺めます。

 幸いにも、今日は雲が少ないので月明かりに加えて身体強化の魔法があれば十分に見渡せます。

 食事の時間を加味してもまだ遅い時間ではないでしょう。それなのに人っ子一人で歩いておらず、町は眠る、との表現がこれほど似合う光景もありません。

 誰もいない町であれば、出歩いている人は犯人でしょうからわかりやすくて良いです。

 逆に言えばワタクシも見つかりやすいのですが、ワタクシには隠密があります。余程のことがない限りは見つかることはないでしょう。

 目に見える範囲の建物はすべて、キッチリと雨戸まで閉めてあります。雨戸がない窓もカーテンが閉められています。

 殺人犯を警戒しているのは一部の人だけではないのでしょう。

 町並みに変化はなく、あたかも絵画のようです。

 しかしずっと待っているのも飽きたので外に出るとしましょう。きっとおばあさんももう眠っているでしょう。

 静かに窓を開けて外に出ます。外から雨戸を閉めれば、パッと見ただけでは窓が閉まっているように見えるはずです。

 ここから侵入されておばあさんが襲われては寝覚めが悪いですから。

 この町の地形はなんとなく把握しておきました。あまり高い建物はなく、屋根の上に登れば視界に困ることはありません。

 足音を立てないように静かに移動しつつ、町へ視線を向けて行きます。

 それほど大きな町ではないので犯人が動いていれば見つかると思ったのですが、中々その姿は見つかりません。

 おばあさんの話だと毎日一人は犠牲者が出ているはずなので、今日だけなにもしないということはないでしょう。

 どんな理由があって殺人をしているのかはわかりませんが、捜査が行われるからと言って大人しくするような犯人ではないでしょう。

 きっと今日も犯人は動くはずです。

 しかしそれらしい姿は見つけられず、時間だけが過ぎていきました。


「ワタクシの勘違いでしょうか……」


 人相はわかるので探そうと思えば探せるのですが、ただでさえ殺人犯がいるかもしれないと住民が怯えている町。部外者のワタクシがうろついていれば要らぬ不安を与えるでしょう。もしかしたらワタクシが怪しまれるかもしれません。

 と、なると夜の内に見つけたいのですが、こうも窓を閉め切られていると一々家を覗いて確認することもできません。

 結局は犯人が動くのを待つしかないでしょうか。

 犯人がエマールでないならそれで良いのですが、それを期待するだけではいけません。

 それでも今のワタクシにできることは町を見回ることだけです。

 しかし風もなければ人もいない。なんの変化もない町を見て回っていても欠伸が出るだけです。

 不謹慎ですが悲鳴の一つでも上がれば、なんてことも思ってしまいます。

 思い返すとおばあさんの話し方は、朝になったら死体が現れていた、くらいの話し方でした。夜の間に不穏な気配がしただとか、怪しい奴がいただとか、そういうことは言っていませんでした。

 事件が起きてからまだ二、三日。連続で殺人が起きたにしては住民達のこの警戒のしようも過剰に思えます。

 おばあさんがワタクシに情報を伏せていたのでしょうか。

 部外者ですので伏せられたとして気分が悪くなるようなこともないのですが、わざわざ伏せる理由もないと思います。

 話さなかったのか話せなかったのか。

 聞いた以上の情報がないのであれば、犯人の手際の良さが窺えます。

 悲鳴の一つでも上がれば次の日にはあそこの家だ、いやこっちの家だ、なんて井戸端会議で盛り上がるはずです。

 考えすぎの気もしますが、ただの町とも思えない異様な雰囲気は感じていました。


「何事もなければ良いのですが……まっ、考え過ぎでしょう」


 警戒し過ぎも良くはありません。ポイントも大して多くはないターゲットですから。

 しかし考えようによっては、ポイントの多少はターゲット自身によって決められ環境は関係ありません。

 なのでこの町の雰囲気が少し異様なのはポイントに関係のないことです。


「考えても仕方のないことですが」


 切り替えようとはしますが、どこかホラー映画の中に入ってしまったかのような気持ちになります。

 今日はまだ月が出ていますが明日はどうかわかりません。今日の内に見つけたいのが本心です。なによりも、あまり長く今回のターゲットに時間を使いたくありません。

 ちゃっちゃと終わらせ、安心できる家に帰りたいです。

 そんな気持ちが功を奏したのか、そろそろと歩く一つの人影を見つけました。

 ゆっくりと音を立てないように歩いていても、誰も町を歩いていないのがわかっているかのように堂々と道の真ん中を歩いています。

 町の住民も寝静まっている頃なので、大きな音を立てなければ見つかることはないでしょう。この時間になるまで待っていたのでしょうか。

 どちらにせよ、事態は一つ進みました。


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