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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『強さと権力を結びつけると厄介になるよ』
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第58話

 準々決勝。

 残りの八人で改めて対戦表をシャッフルすることになりました。

 その結果、ワタクシの次の相手は剣を持った老人。見るからに強そうで、棄権しようかとも考えてしまいます。


「組み合わせを変える、なんて言われた時はヒヤッとしたが上手く分かれたな」

「ええ……。どんな偶然でしょうね」


 正直な気持ちを言えば、すぐにスリットと戦って大会を終わらせたかったです。

 大会の優勝よりもスリットと戦うことが目的になっている辺り、ワタクシもスリットを笑えません。一緒に過ごした数日で思考が伝染したのでしょか。

 そんなスリットの対戦相手はキャラサ種の男。どうでも良いことですがこの今大会初のキャラサ種対決です。

 しかし同じ獣人種でもスリットと違って細身なその男。どんな戦いをするのでしょうか。

 そしてそのスリット達の勝負が準々決勝の第一試合です。


「頑張ってください」

「おう! やってくるぜ」


 開始地点に着いた時点でスリットはナイフを抜いていました。

 対する対戦相手――クラストは武器を持っていません。

 スリットは最初から本気のようです。そしてクラストが武器を構えていないからと言って、手を抜いていることはないでしょう。ここまで勝ち抜いてきたクラストも相応の実力ですので、素手が本気なのでしょう。

 しかしスリットの実力を知っているので勝者はスリットだとワタクシは予想していました。

 が、


「始め!」


 合図の直後、スリットのナイフがクラストの喉元に迫ります。

 武器使用可と謳っているだけあって、治癒術師が何人も待機しているようです。即死や余程の重傷でない限りは治せるでしょうが、それを考えてもスリットの初撃は容赦のない一撃でした。

 そんなスリットの一撃をクラストは少し後ろに下がるだけで躱しました。

 伸び切ったスリットの腕。それが戻るよりも早くクラストは掴み、折りました。


「ぐぅ……!」


 ボギン、とスリットの腕が折れた音が聞こえたような気がしました。

 思わず顔を顰めたワタクシでしたが、折られた本人スリットは素早く腕を引きました。

 その表情は痛みを堪えているようでしたが驚きの方が強いようです。


「まさか折られるとはな……」

「あんた、自分が一番強いとでも思っていそうだな」


 スリットが手放したナイフを拾い、弄びながらクラストは言いました。

 ここまでの試合で、あまり試合と関係のないことを言う出場者はいなかったのに、その場の誰もがクラストの言葉に耳を傾けているようでした。

 ワタクシも次になにを言うのかと、すっかりクラストの雰囲気に呑まれていました。


「そんなことはない。俺より強い奴を少なくとも一人は知っているぞ」


 もちろんワタクシのことでしょう。

 あっけらかんと言い放ったスリットによって、クラストが支配していたその場の空気も霧散したようでした。


「そんでそれはお前じゃない。勝たせてもらうぜ」


 今度はすっかりスリットの調子でした。

 ワタクシも思わず笑ってしまいます。


「か、勝つのは俺だ!」


 クールなクラストでしたが、実は格好つけていただけなのかもしれません。

 顔を真っ赤にしてナイフを投げつけました。それをスリットは折れていない左腕で簡単に掴み取ります。

 その隙に近づいていたクラスト。折ろうとしたのか左腕に手を伸ばしました。

 しかし片腕を折られたのに大人しくしているスリットではありません。

 器用に片手でナイフを逆手に持ち直すと、その石突でクラストの眉間を突きました。そしてナイフを話した左手でアイアンクローのように顔を掴みます。


「くそ! 離せ!」

「離すわけがないだろ」

「ぐあっ! くぅ……」


 片手で握り締めていっているのでしょうか。どんどんクラストの表情は厳しくなっていきます。その声も苦しそうです。

 実際には食らっていないのに、スリットの握力を想像するとワタクシのこめかみもキリキリと痛むようでした。

 そしていよいよ勝負が決します。

 スリットはクラストの頭を持ったまま振りかぶると、それこそボールを投げるかのようにステージの外へ投げ飛ばしました。

 綺麗な放物線を描いて地面に叩きつけられたクラストは頭を押さえて呻いています。

 落ちた衝撃よりもアイアンクローの痛みの方が強いとは、恐ろしい限りです。


「勝負あり!」


 最初こそヒヤリとした展開でしたが、終わってみればスリットの圧勝でした。

 治癒術師の治療を受けながら、痛みは感じていないかのようなスリットです。


「お疲れ様でした」

「おう。ちゃんと勝ったぜ」


 なんて笑っているくらいです。


「……最初は心配しましたが必要ありませんでしたね」

「カッとしやすい性格みたいだな。あれが直ればもう少し強くなるんじゃないか?」


 最初にスリットの腕を折ったくらいですので実力は十分です。

 しかし勝負を分けたのはスリットの言葉を受けて冷静さを失ってから。あそこでまだ冷静さを保っていたら勝負はわからなかったでしょうか。

 これからに期待といった感じですね。


「俺は勝ったから次はアマルちゃんだな」

「ええ……。簡単に負けないように気を付けますわ」


 なんの運命のイタズラか、ワタクシの試合は最後でした。

 先ほどの試合でも少し苦戦しましたし、スリットも腕を折られました。

 これは神様からもらった身体能力でも調子に乗ってはいけないでしょう。


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