第45話
一回目の探索でマジラを見つけることはできませんでした。
これまでも何度か、ターゲットが中々見つからずに時間がかかったこともあるのでそれほど焦ってはいません。
しかしあまり時間がかかるとターゲットが溜まり、家が手配書だらけになりそうです。
神様は一つの仕事が終わってなくてもお構いなしに手配書を出します。
それだけこの世界に倒すべき人間が多いのでしょう。考えると少々、恐ろしいことではありますが。
まだまだ探し始めたばかりではありしたが、なんの手がかりもないと気分も滅入ってしまいます。
なんでも良いのでカシカに手がかりになりそうな情報はなにかないかと聞いてみると、
「他と違うような場所ねぇ……。そうだ! 理由はわからないけどお湯が沸いている場所があるんだ。そこなんかどうだい?」
「お湯が沸いてる? 温泉とかですか?」
「温泉じゃないみたいだよ。そこだけなぜだか雪が解けてるんだ。少しは暖かいしね」
「どうしてそれを最初に……」
「悪いね。わざわざ雪の中行くような場所でもないから忘れてたよ」
と、マジラが潜んでいそうな場所の情報が得られました。
詳しい場所を聞くと、魔力濃度が高い場所の内の片方でした。きっと火属性の魔力が高く、雪が解かされてお湯になっているのでしょう。
そうであれば特に効能もないただのお湯なので、吹雪の中浸かりに行くほどの魅力はありません。それに帰り道で凍えてしまいそうです。わざわざ行くような場所でもないでしょう。
レーダーですとそこがなんの属性に偏っているかまではわかりません。
しかし火属性の魔力によってカシカの言う通り気温が少しでも高いのであれば、そこは拠点に適しているでしょう。
元々魔力の高い場所は行ってみるつもりでしたし、俄然、やる気が出てきました。
可能性が高いともなれば吹雪の中もそれほど苦ではありません。
無事に辿り着くと、そこにあったのはお風呂でした。
今は誰も使わないとカシカは言っていましたが、昔はちゃんと使われていたのか、雪が解けている場所は木材で囲ってあり、それこそ湯船のようでした。頑張れば二人は浸かれそうな浴槽です。湯気が立ち、触ってみると丁度良い湯加減です。
お風呂の周りは震えるほどの寒さではなく、多少は不便でも吹雪の中に比べれば快適です。
この程度の気温であれば、村のように地下に穴を掘るのもできるでしょう。一人の作業で時間がかかったとしても、凍える心配がないのですから。
「さて……」
アジトを探そうと思いますが、目印になるような物がなければ少し大変です。とりあえずは螺旋を描くように歩いて探しますが、出入り口となる穴はありません。
力を込めて高くジャンプし、高い所から見渡してもそれらしき物はないです。
しかしマジラの視点に立って考えてみると、自分が帰って来る時になにか目印がないと不便でしょう。その度に迷っていたら目も当てられないので、目印がないわけないです。
その間、ふとした瞬間に魔物の気配を感じていました。やはり暖かい場所に集まるのでしょうか。猿やカピバラのようにお風呂に浸かりに来たのか、それとも飲み水として使いに来ているのか。
揃ってワタクシの姿を窺って、それから離れて行きます。
そろそろお風呂からも離れ、寒さも他の場所と同じように下がり始めました。暖かいのを知ってしまった分、余計に寒く感じます。
「そろそろ見つけないといけませんわね」
焦る気持ちとは裏腹に時間だけが過ぎていきます。そしてマジラの潜んでいる場所は見つかりません。
全然見つかりませんし、寒いので最初にあったやる気もどんどん削がれていきます。
これ以上マジラにこだわり続けるよりも、大人しく神様に任せて他のターゲットを狙いに行った方が良いのではないかとすら思えます。
丁度良く、ここは神様を呼び出せる魔力濃度の高い場所ですから。
「えぶっ!」
半ば集中を欠いた状態で歩き回っていると、なにかに躓いてそのまま雪の中に頭から倒れてしまいました。
ぼーっとしていて躓いた恥ずかしさと、躓かせたなにかに対する怒り。そしてこれまでとは違った変化に僅かな期待を滲ませつつ立ち上がります。
躓いた辺りを手で探ってみると、そこだけ雪がカチカチに固まっていました。自然に凍ったのではなく、後から人工的に凍らせたような感じです。
力を入れても持ち上がりませんが、試しに色々な方向から押してみるとズルっと動きました。
そこに現れたのは大きな穴。ワタクシであれば三人が横に並んでも降りられそうな階段がそこにありました。
「見つけましたわ……!」
思わずにやけてしまいます。
見た目ではなく感触で目印としていたのであれば、見つからなかったのも当然です。
もしも湯に浸かりに来た人がいても見つかりにくいように、と警戒していたのでしょうが、そんな来るか来ないかわからない村人を警戒するよりは入口をわかりやすくして欲しかったです。
とにかく、ここにマジラがいないはずないでしょう。もしいなければ、神様に任せることにします。




