第44話
神様を呼び出せるのは魔力濃度が高い場所です。
その影響で、そういった場所は魔力の属性によって周囲の環境が大きく偏っている場合もあります。
先日、神様とお話した場所もそういう所で、氷属性の魔力が高まっていたせいで大きな氷山のようになっていました。氷山と言うよりは逆さになったつららでしょうか。細長い三角錐のようです。
元々、氷属性に偏っている大陸で更に氷属性に偏っている場所。気温すらもグンと下がっている気がします。
それを考えるとやはりここにマジラはいないのでしょうか。しかし、吹雪から逃れるためには洞窟なりを見つける方が早いはずなので、可能性は残っています。
つららに似た山が二つ三つ固まっていて、その麓辺りが少し標高が高くなっています。
まずは山の一つずつを見て回るとしましょうか。
正面がつるつるになっているわけでなくゴツゴツしているので、そこに雪が積もり、それが凍ってまた雪が積もる。こうしてワタクシが乗る程度の足場ができています。
そしてワタクシの身体能力を使えばヒョイヒョイと飛び移るように山を登って行けます。
登って行くに従って酸素も薄まっているように感じ、気温も下がっているのでしょう。酸素に関しては休憩を挟んで体を少しずつ慣らし、気温はカイロを持って対策しています。
カイロと言っても、火属性の魔石を袋に入れただけの簡易的な物です。魔力を流すだけで熱を発して、小さい魔石なので熱くなり過ぎることもありません。
「ここにはいませんわね……」
足場にはマジラのいた形跡は残されていません。表面の雪を払って見ても、巨大な氷にヒビが入っているだけでなにもありませんでした。
流石に、ちょっとしたヒビから中に入れたり、なんてことはないでしょう。それができるのはタコかヒトデか、軟体動物くらいです。
そもそも洞窟とはどうやってできるのでしょうか。
仕組みはわかりませんが、軽く叩くとコンコンと小気味良く鳴るほどに硬いこの氷の山に穴が開くとも思えませんが。
そんな調子で二つ目の山も調べた辺りで、ワタクシの体力も限界に近づいていました。
今日は空も厚い雲に覆われていて、時間の経過もわからなくなっています。
そういう時は自分の体に正直になった方が良いでしょう。
少しでも風の弱まっている場所を探し、大きな氷塊が支え合っているような場所を見つけました。大きな氷の塊が風で倒れ、あたかも人の字になっているようです。
心配ですが、この気温でカチカチに凍り付いていますから、今日明日崩れるということは起こらないでしょう。
そこにテントを建てて今日は休むとしましょうか。
コンロを用意し、四次元ポケットから食材を取り出します。この場で簡単に作れるのはスープくらいですが、わざわざ凝った料理を作る必要もないでしょう。
そして一夜明けました。
時計は持っていないので正確な時間はわかりませんが、朝日で周囲が明るくなって自然と目が覚めてしまいました。
相変わらず吹雪は酷いですが、空は快晴です。昨日よりかはマジラを探しやすいでしょうか。
後片付けをして出発します。
残っている山はあと一つだけで、それもあまり大きくはないのですぐに調べられるでしょう。ワタクシが泊まったあの場所のように、風を凌げるだけの場所にいる可能性もあります。
まずは山頂まで登り、その過程で調べていきます。
「ほぅ……良い景色ですわね」
日光が差しているので山頂から見える景色は随分明るいです。この前は見られなかった景色が広がっていました。
どこまでも広がる雪原。所々に生えている木の黒が寂しいながらも景色に変化を与えています。吹雪に多少は阻まれていますが、それでもそこに広がっている景色には息を呑みます。
しかしいつまでも景色を眺めているわけにはいきません。
反対側から調査をしつつ地上に降ります。ここまででマジラが潜んでいそうな場所は見つかりませんでした。
後はこの広い雪原を途方もなく探していくしかないのでしょうか。
「いえいえ! まだ諦めるのは早いです」
麓の辺りはまだワタクシが探していない所ばかりです。
昨日泊まった場所のように崩れた氷塊で風を凌げる場所。地形によって窪んだりしていても拠点にはできそうです。
人を探す能力をポイントで交換すれば良かったのですが、あまり神様に頼るのも少し癪です。
ワタクシが今持っているそれ似た能力は、魔力濃度の高い場所を見つけるレーダーだけで、それで直接的にマジラを探すことはできません。
ちなみに、ここ以外には二つほど、徒歩圏内に魔力濃度の高い場所があります。
他にはもっと離れれば山もありますが、あまりに村から離れ過ぎると神様の手配書も信用できなくなります。
別の町の方が近いのにわざわざあの村まで行くということはないでしょう。それならば村の周囲には確実にマジラの生活している場所があるはずです。
しかしそれはこの近くではないようでした。
麓にもマジラが潜めそうな場所は見つからず、最初の調査は失敗に終わったのです。




