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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『リフレッシュとかも必要なのかな? 私にはわからないけど』
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第38話

 気持ちを新たにしたからといってすぐに動き出せるわけもありません。

 一年のほとんどを吹雪に視界を奪われ、なんの準備もせず闇雲にマジラの暮らす場所を探しても見つかるわけがなく、最悪の事態も起こりかねません。

 お世話になっているカシカのためにも、考え無しに飛び出すことは避けなければなりません。

 人を探しているのは伝えていましたので、しばらく外に出るかもしれない、とカシカに伝えたところ、


「準備をするならもっと大きい町に行ったほうが良いだろうね」

「と、なると……アートゥですか」


 アートゥの町はこの村に一番近い町で、手配書に載っている場所です。この村はそのアートゥから東に三十キロ程度みたいです。


「いつもの行商人もそこから来てくれているからね。頼めば乗せてってくれるだろう」

「そうですね。その方が迷わないでしょうし安心ですか」


 冒険者として護衛の依頼を受けたこともあります。

 今回はワタクシが頼んで連れて行ってもらうので、道中の護衛くらいならやるつもりです。

 そもそも魔物に襲われて困るのはワタクシも同じですし、お世話になっているカシカがお世話になっている行商人ですからそれくらいは当然です。

 そんなこんなでワタクシのマジラ探しも、次に行商人が来るまでの間止まっていましたが、だからといってなにもしていなかったわけではありません。

 一軒一軒、顔馴染みになった人達の家を訪ねてはマジラを知らないか尋ねました。

 しかしやはり誰もマジラのことは知らないみたいです。

 誰もが、ワタクシが村を離れることを惜しんでくれ、それを知れただけでも家々を訪ねたことは無駄ではありませんでした。

 滅多に人が訪れない村ですから、人とのコミュニケーションに飢えているのでしょうか。たった一ヵ月でもそれほどまでに仲良しになれました。

 そしていよいよ村を出る日。

 この日のためにいつもより狩りを頑張りました。

 カシカに卸した分以外はワタクシを乗せてもらうための駄賃のようなものです。それのお陰で、快く荷台に乗せてくれることになりました。


「あんたがいなくなると寂しくなるね……」

「また少ししたら戻って来ますから、そう悲しまないでください」

「それもそうだね。気を付けるんだよ」

「はい。もちろんです」


 なんて挨拶を交わして、ワタクシは荷台に乗り込みました。荷台にはゴチャゴチャと商品も並んで手狭でしたが、ワタクシの獲った魔物の毛皮があったので意外と快適です。

 当然ですが護衛の冒険者はいます。しかしもしもの時はワタクシも戦うつもりです。その冒険者も荷台の後ろに腰掛けました。

 ワタクシが護衛依頼をした時は隣を歩いていましたが、雪が深いので荷台に乗るのでしょうか。

 その疑問の答えはすぐに出ました。

 荷台を引くのは毛の長い牛みたいな動物と二匹の犬。

 御者台に座った行商人が合図をするとその牛の鳴き声がして、直後にグンと荷台が動きだしました。

 足が車輪ではなくスキーになっているのか、滑るように走ります。


「嬢ちゃん、あんま顔出すと寒くないか?」

「ええ。それよりも新鮮で……」


 行商人の言う通り、幌から顔を出すとこれまでに味わったことのない吹雪が顔を襲います。向かい風なのでいつもの数倍の勢いです。

 これは確かに、横に並んで護衛することはできないでしょう。

 普段あまり馬車に乗ることもないのでこの風も新鮮です。オープンカーとかはこんな気持ちになるのでしょうか。それにしては寒いですが。

 御者台を空けてくれたので隣に座り直します。

 この一ヵ月である程度は寒さになれたつもりでしたが、やはり吹雪の中に身を晒せば相応の寒さは感じます。これを長年続けているのかと思うと、行商人にも尊敬の念が生まれます。


「護衛の冒険者も雇っているんだがな、こんくらいの勢いで走っていると魔物も寄り付かないんだわ。護衛代もケチって良いんじゃないかと最近は思うな」

「あら。でもイエティが本気を出せばこれくらいなら追いつけますわよ」


 この牛の走るスピードが速いと言っても、重たい荷を引いているのですからそれなりの速さにはなってしまいます。

 イエティよりも大きな牛ですから、そういう意味でも安心なのでしょうが、もしも大きな個体に出会ったら、なんて思うとやはり護衛なしはオススメできません。

 それだけ大きなイエティが、ただの冒険者の手に負えるとも思えませんが。

 今回に限ってはワタクシがいますので、そこら辺の魔物には負けることはないでしょう。

 吹雪に視界が遮られていても、迷う気配もなく一直線に進んで行きます。時折、手綱を引いて指示を出しているようですが、その時も行商人は地図やコンパスを確認していません。

 長年の経験によるものでしょうか。ワタクシには吹雪の壁しか見えません。

 これも経験、とどうにかしてワタクシも道がわからないかと目を凝らしていましたが、一向に情報らしい情報は入りません。自分がどこを走っているかもわからない始末です。


「――あ」

「どうかしたか?」


 吹雪と吹雪の間になにかが横切ったような気がしました。


「いえ……見間違いだと思いますがなにか大きな影が……」

「怖いこと言うなよ」


 きっと見間違いでしょう。

 チラリと見えた光は横並びで二つ。まるでこちらを見ている瞳のようでした。その周りの影は、荷台を引いている牛なんか目じゃないほどの巨大でした。

 そうワタクシ自身、言い聞かせていましたが次の瞬間、再びその巨大な影が進行方向に立ちはだかりました。


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