第37話
今回のターゲットはマジラ・ウリというファルグ種の男です。ポイントは七ポイント。人相書きを見る限りそれなりに歳を取っているようです。
カシカにそれとなく聞いてみてもそういう人は見たことないらしいです。
あまり大きくない村。レイナード共和国の首都からも外れていて、特に名前もついていない村です。見知らぬ人間がいるならすぐに噂になりそうで、実際、ワタクシのこともすぐに村中に知れ渡っていました。
マジラがこの村に滞在しているとすれば、すぐにわかるはずです。
ターゲットが見つからないせいで、ワタクシの滞在期間は延びる一方です。
「私は助かってるから、ずっといてくれても良いんだけどねぇ……」
なんてカシカは言っていますが、ワタクシの目的はあくまでターゲットを殺すこと。
ここでの生活も悪くありませんが、早くマジラを見つけてやることをやってしまいたいです。
一ヵ月滞在して、夜の酒場の仕事を手伝ってもマジラの姿は見られません。昼間でもワタクシが手伝っている時は現れません。
いくら吹雪がひどくてあまり外に出ないと言っても、一ヵ月も籠りっきりで生活できるはずがありません。
そもそも本当にこの村に滞在しているのでしょうか。
と、言うわけで神様を呼び出してみました。
「もうちょっと呼び出す場所とかあるんじゃない? テレポート使えるんだし」
「どうせ寒さとかは感じないのでしょう?」
「そうだとしても気持ちの問題が、ね?」
薄布を体に巻き付けただけの神様に気持ちの問題と言われても。
そう言うのであればまずは暖かい服装を自分ですべきでしょう。どうせ見た目は好きなように弄れるのですから。
しかしそんなことを言ったところで話が逸れるだけです。
神様と違ってワタクシはちゃんと寒さを感じているので、神様の軽口に付き合っている暇はありません。
「一つ聞きたいのですが、ここに書いてある拠点にしている町は合っているんですか?」
手配書を見せて示します。
今回の村は名前がついていなかったので、近くの町からどの方角にどれくらいの距離、といった感じで示されています。
何度か勘違いかと確認し直しましたが、今お世話になっている村で間違いはありません。
「あぁ……今回は手こずっているみたいだね」
「まったくです。どうしたって見つかりませんからこの手配書の方が間違っているのでは?」
「努力が足りないんじゃない? 本当に手を尽くしたの?」
「うぐっ……」
どうしたって、と言うほど手を尽くしたわけではありませんが、人の集まる場所で張っていても見つからないのです。
これでダメならそれこそ、一つ一つの家を訪ねて回らなければなりません。
流石にそれをするのは気が引けます。
まずは手配書が間違っていないのかを確認し、間違っていなくてマジラが本当にこの村に滞在しているのであれば、すべての家を巡るのもやぶさかではありません。
「私も常に完全に居場所を把握しているわけじゃないからねぇ……」
「そうなんですの?」
「できなくはないけど面倒だからね。そのためにアマルちゃんを転生させたわけだし」
世界の危機みたいなことを言っていた気もしますが、今となっては楽をするためだけに転生させられたように感じ、神様自身もそのことを隠そうともせず、こうして正直に言ってくる始末です。
ため息を吐きますが、これが仕事ですので仕方ありません。
これでもいざとなれば動くのでしょう。この前の赤ちゃんの時の様子を見ればそれはわかります。それこそ神様が手を下す時は、最後の審判とでも言えるでしょう。
「一つ言うなら、拠点はあくまで拠点ってことかな……」
「なるほど」
そこに暮らしているとは限らない、そういうことですか。
確かに、スリットのように人里離れて一人で暮らしている人もいました。
これは完全に、手配書に書かれている町にいると、ワタクシの頭が凝り固まっていたようです。
しかしそれはそれで、探すのが大変なことに変わりはありません。
「本当にどうしようもなくなったら代わるからさ。頑張ってね」
そう言い残して神様は姿を消しました。
少なくとも今回は手を貸す気はない、ということでしょう。
それなりに長い時間、神様の手先として活動してきましたが、ワタクシはほとんど自由にやらせてもらっています。放任主義と言えば聞こえが良いですが無責任とも言えます。
しかし仕事をしたポイントで土地やら家まで交換できたのですからあまり贅沢を言うのもやめましょう。なんなら最初に、こうしてかわいらしい幼女に転生させてくれたのですから。
振り返ると、そこに広がる光景に眩暈がしそうです。
今回、神様を呼び出せる魔力濃度の高い場所は山の山頂近くにありました。
酸素が薄くともそれほど苦しくないと、つくづくワタクシはまともな人間ではないのだと実感させられます。
閑話休題。
激しく吹きすさぶ猛吹雪。その向こうに広がる雪原も真っ白なので目がチカチカしてしまいそうです。
この中からマジラの潜む場所を探し出すのですから、想像しただけで倒れてしまいそうです。
しかしワタクシがやらなければ誰がやる仕事でもありません。
気合を入れるために頬を叩こうとして、寸前で止めました。
毛糸の手袋をして、その上に革の手袋。そしてその上にガントレットをしているので手は冷たくありません。なので忘れていました。
キンキンに冷えた金属で頬なんて叩いたら、凍り付いて肌が剥がれてしまうかもしれません。




