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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『リフレッシュとかも必要なのかな? 私にはわからないけど』
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第36話

 一見するとただの雪原のように見えます。山からも離れ、傾斜もない場所。

 しかしよくよく目を凝らすと足元には人が行き交ったような足跡がいくつも残っていて、色の塗られた木の杭がいくつも立てられていて、その近くには二つ三つ穴が開いています。

 その中に一際大きな穴があって、出入り口です。

 最初にこの村を訪れた時はなにもないので驚きました。たまたま外に出ている人を見なければそのまま素通りしていたでしょう。

 イエティを傍に置き、その中の一つを降りて行きます。

 入口だけでなく中の通路も広く、階段まで備え付けてあります。ほとんどの出入り口がはしごで出入りしているのと比べると、随分と手の込んだ場所です。

 その答えはこの住居の目的にあります。


「おや? 今日は早かったね」


 カウンターの向こうから声をかけて来たのはカシカという名の女性。

 ファルグ種という犬のような獣人で、こちらの世界でヒト種と呼ばれる種属のワタクシと違って毛皮が暖かそうで羨ましいです。

 ここは商店と酒場を兼ねている建物です。

 このカシカとお手伝いの人が一人で切り盛りしている場所で、ワタクシが滞在している場所でもあります。

 五人くらいが腰掛けられるカウンター席と、二人用の小さなテーブル席だけ。

 カウンターの後ろには様々なお酒の瓶が並べられ、脇の方に野菜や干し肉が吊るされています。


「イエティを獲りました。大きいので手伝っていただけます?」

「そりゃまた大物を捕まえたねぇ……」


 吹かしていたタバコを消してカウンターから出ました。

 カシカは日中、ほとんどあの場所から動きません。お気に入りの場所で、タバコの煙を逃がすためにわざわざあそこへ空気穴を通したくらいです。

 外に出たカシカはいくつもの庖丁を手にしていました。

 商店も経営していますので、猟師の獲った獲物を買い取ったり、解体の手伝いもしているカシカは、自分で狩りはしなくとも専用の道具を持っています。

 滞在している間の代金として、ワタクシはカシカ専属の猟師みたいになっていました。


「ふむ……。毛皮にほとんど傷もないし……相変わらず、見た目に似合わぬ良い腕をしているじゃないか」

「ちゃんと血も採っておきましたよ」


 なにかの魔物の皮を使って作った水筒パンパンにイエティの血が詰まっています。

 死んでからでは血も採りにくいので、これだけは先にいただいておきました。

 ワタクシが両手で抱えるくらい大きなその血入り水筒を見て、カシカはわかりやすく笑いました。


「流石、抜け目ないよアンタは」

「ありがとうございます」




 カシカの腕を持ってすればイエティの解体にそれほど時間はかかりません。

 全身の毛皮を剥がし、穴に持ち込める程度に肉や骨を切り分ければ、外での作業はもう終わりです。

 わざわざ吹雪いている中で作業をする必要はないでしょう。

 店の床が全部イエティの素材で埋め尽くされます。ようやく移動できる程度の隙間しかないですが、ほとんど客は来ないので大丈夫でしょう。

 外は猛烈な吹雪ですので、この村の住民はそう簡単には外に出ません。たまに外へ出て、その時に大量に買い込んで巣ごもりする。それがここの住民達の日常です。


「アマル、探している人は見つかったのかい?」


 ワタクシがここに滞在しているのも、ターゲットが同じようにここに滞在しているらしいからです。

 しかしほとんどの人が滅多に外に出ないせいで、ターゲットが何者なのか。どこに暮らしているのか。なにを生業にしているのかもまったくわかりません。手配書に書かれている名前と人相以外には何一つとして情報がないのです。


「まったくですわ。まだまだここに置いていただくようになりそうですわ」

「私としてはそれでも構わないんだけどね」


 ワタクシは小さなナイフを使って、毛皮に残っている細かい脂や肉をこそぎ落としていきます。流石に自分のナイフも手に入れ、こういう作業に魔剣ムスニアを使うことはなくなりました。

 カシカは庖丁で肉を切っていき、壺にボトボトと落としています。それがいっぱいになると調味料で味をつけ、蓋をして完成です。

 また別の肉は塩と香辛料を良く揉み込んで、入口近くに吊るしておきます。外に置いておくと魔物に盗られかねません。まぁ、魔物もここがどういう場所かは知っていますので滅多に近づかないようですが。

 骨は毛皮と同じように残っている肉片やらをこそいで綺麗にします。

 すべての作業が終わる頃にはすっかり夜になっていました。


「さて、今日もありがとうね。もう休んでいて良いよ」

「お店の手伝いは大丈夫ですか?」

「あー……大物を獲ってきてくれたからね。手が回らなくなったら呼ぶけど大丈夫だろう」


 今日はお手伝いさんが来る日ではありませんが、普段の客入りではカシカ一人でも十分店を回すことができます。

 この店が人でいっぱいになるのなんて、記念日とかそれくらいでしょう。

 お言葉に甘えて、カウンター裏にある扉を通って居住区へ行きます。

 店のエリアに比べれば半分ほどの広さですが、人が二人で暮らす分には十分過ぎる広さです。

 昔はカシカと旦那さんが共に暮らし、今はカシカとワタクシが。狭く感じることなんてありません。

 湯を沸かして体を拭き、ベッドに横になるとすぐに睡魔がやって来ました。


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